「なかなか見ないであろう国の映画を観たいなぁ」と棚の前で悩んでいたら我が子が「これおもしろいんじゃない?」と選んだのが本作でした。
おお、ノルウェーか。
もちろん行ったことがありませんし、本当にほぼ知らない国です。1994年にリレハンメル冬季五輪が開催されたこと、首都がオスロであること…くらいしか知りません。
最初の10分間くらいは全くセリフがなかったので不安でした。ようやく、主人公のおじさんがあまりしゃべらない人であることを知ります。あまり人付き合いが得意ではなさそうな実直なる鉄道の運転士で、定年退職をするところから物語は始まります。
ひょんなことから、運転士は最後の乗務に…こともあろうに遅刻してしまいます。そこから、いろいろな「はじめて」をし始めるのです。いろいろな経験をし…
最後は、さすがノルウェーです。スキーのジャンプ台に臨みます。ノルウェーはウィンタースポーツの強豪国であり、子どもは皆ジャンパーを目指すかもしれません。しかし主人公はジャンプの才についてはいまいちで、かつて女子ジャンパーだった母を悲しませまていました。定年退職後彼はスキー板を手にして、そこでかつての母そっくりの少女に出会います。
本作、はっきり言って「筋」は不明瞭です。ただ、「筋」とか「ストーリー」だけが映画ではないことを教えてもらえました。そこには、人生におけるいくつかの「金言」がちりばめられていました。
「死も人生の一部」
未亡人となったタバコ屋のおかみはそう言いました。
「気づくのは遅すぎたかもしれないが、逆に言えばいつ始めても間に合う」
ちょっと論理が破綻しているような気もしますが、年老いてもいろんなことにチャレンジすればいいんだということだと思います。
この映画も、やはり「画」が美しかったです。雪原を走る特急列車。夜中に明るい窓3つ、そこでケーキを作る女性。
ラストシーンの駅、手前で車両が近づき、連結。その部分が画面を黒く覆い、その黒で流れるクレジット。
実に、よかったです。