たしかに金メダルは嬉しいです。やはり日本人を応援してしまいます。ただだからと言って、元首相のあの発言はいかがなものでしょうか。ショートプログラム最高が鈴木明子選手の8位というのはたしかに衝撃でしたが、それぞれ精一杯の演技だったと思うのです。結果として世界屈指のトップスケーターであるキム・ヨナやコストナーがより素晴らしい演技を見せてくれたわけです。
オリンピックを国威発揚の場と考えるとあのような発言も理解できなくもないのですが、そんな理解はしたくありません。すごく危険な香りすらします。
純粋にヨナのリンクを支配せんばかりの舞いやコストナーの美、そしてジャンプで失敗こそすれどもユリア・リプニツカヤの驚異的なスピンは、異国の民である私も「すごい!」「何度でも見たい!!」と思うものでした。トップスケーターの氷上の戦いは、政治的な力学と何ら関係ないのです。
真央が失敗してもいいじゃないか。それでも精一杯の真央の舞いを我々は見たいのです。
◇◆◇
日が開けてフリー。早朝のホテルで見ました。
浅田真央、圧巻のフリーでした。6種類の3回転ジャンプをしっかり決め、メダルこそはなりませんでしたがフリー自己ベストを叩き出しての6位入賞は果たしました。ファイナル滑走での涙…本当によく滑り切りました。それを見られた事が、幸せでした。メダルの色や国威に関係のない浅田真央の世界を、目に焼きつける事ができました。胸を張って戻ってきてほしいと思います。
そして鈴木明子選手、こちらも最後のオリンピックで8位入賞。団体戦が初めて組まれた今オリンピックではチームの主将を務めた鈴木、「とにかく人のために」という姿勢が窺えました。そしてシングルでもショートの「愛の讃歌」は世話になったコーチが好きな曲、フリーの「オペラ座の怪人」は…「最後はみんなの知っている曲で臨む」と。そして28歳まで続けた競技生活を振り返り「フィギュア界では遅咲きでもできるという事を伝えられてよかった」…
一時代を築いた主将鈴木のソチでの集大成。まだまだフィギュア界は彼女を必要とする事でしょう。
もの凄く濃密な大会でした。初出場ながら頑張った村上佳菜子選手やイタリアのコストナー選手、惜しくも及ばなかったキム・ヨナ選手、地元ロシアの新星で17歳にして金メダル獲得となったソトニコワ選手…多くのインパクトを与えてくれました。
ただ衝撃的だったのは、リプニツカヤ選手。ショート、フリーでの失敗が響いてメダル獲得とはなりませんでしたがあの精密なジャンプとキャンドルスピンはもう言葉がありません。まだまだ彼女の滑りはたくさん見る事ができそうです。
競技人生におけるドラマもさることながら、やはり同じ人類が見せる驚異的なパフォーマンスを目にした時、それは国も関係なく心のどこかに強烈な印象を残してくれます。
それがスポーツの素晴らしさであると、私は思います。

にほんブログ村
お気に召されましたらクリックお願いします(執筆の励みになります♪)