「ふんけいのまじわり」と読む。「伯牙絶弦」(はくがぜつげん)とともに私が好きな四字熟語である。
「刎頸之交」・・・首を切られても恨みに思わないほどのごく親しい交わり(三省堂『新明解漢和辞典』による)
・・・それはちょっと、と思う。ただこれは中国・前漢時代の『史記』の話である。それほど篤い友情ということである。己がどうなってもいいほど思える友を持てる幸せな人間が、今はどれほどいることだろうか。『走れメロス』におけるメロスとセリヌンティウスの交わりも「自己犠牲」の精神では似通う。
『永遠の0』の百田尚樹が描いた『影法師』は、そんな篤い友情の世界である。江戸時代の藩の侍の世界における「刎頸之交」は、なんとも激しい。掟の厳しい世界において、友は出世を助ける。そして艱難も退ける。己の名声を毀してまで、友を立てる。なぜそこまでするか。そう問い続けて読んだ。やがてその友のお蔭で筆頭国老中とまでなって国へ戻った主人公は、友の不遇の死を知る。主人公のために脱藩浪人となった真相を知ったとき、泣かずにはおれない。作中にはないが、それが「伯牙絶弦」の様である。
いずれにしても「人のために生きる」精神は、学びたい。首は・・・守りたいが。