蔓延する偽りの希望 | 趣味の部屋

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気ままに気楽に。

 村上龍さんの、「すべての男は消耗品である」シリーズは、昔からよく読んでいるエッセイ本です本

 その時々の社会状況を鋭くつかんで、率直に読者へ示してくるので、どうしても読んで明るい気分にはなりにくい内容です。

 

 今回の、このVol.6などは、平成10年~13年頃の世相を表していて、タイトルからもうかがえる通り、「もはや、普通に国や会社や共同体が個人を庇護してくれていた高度経済成長の時代とは違う」という命題が示され、やはり明るい内容ではありません。

 例えば、「フリーターには未来がない」という、身も蓋もないように見える一章があります。

 著者は、別にフリーターを軽蔑したり、見下したりしたくてそう述べているわけではなく、「安易にフリーターを選んでしまわず、あらかじめよく考えて、人生を生き延びていくための仕事を選んでおいた方がいい」ということを言いたいのだと思います。

 私も、恥ずかしながら、今の職業に就くために、新卒なのに就職をせず、フリーターを選んでしまい、その当時は、そのような自分の選択や将来に不安を抱いたことも当然あるので、この章の内容は、実に共感できました。

 もちろん、選択は当人の自由ではあるものの、我々は次世代に対し、よほど夢や才能のある人間以外、安易にフリーターへと進まず、きちんとその先がどうなるかも考えた上で選ぶよう、伝える必要もあるのかも知れません。

 

 この本には、「ここには一つの真実がある」と思えるほど、著者の洞察の鋭さを感じます。

 「小説家は変化を記録する」という一章もありますが、本書はまさにその作業を行っているように思います。

 一緒にしては恐れ多いのですが、私も仕事上、事実関係を把握し、分析し、取捨選択をして主張に用いていく作業を必要とするので、すごく刺激を受けます。

 「どうにかこの世をサバイバルしていかねばならない」という危機感も煽られ、自分を磨いて前進せねばと駆り立てられます。

 

 このシリーズは、今後も継続的に最新刊が出るのかは分かりませんが、個人的には注目している本ですキョロキョロ