今いる場所で最善を。。。
〈思い立ったら旅に出よう〜滋賀吟行②神の山 比叡山延暦寺を巡る〉
「一隅を照らす」とはひとりひとりが今いる場所で最善を尽くすことで周囲を照らせば、誰もが幸せに過ごせる世に繋がるという教え
伝教大師最澄が創建した比叡山延暦寺の西塔エリアは美しい老杉に囲まれている場所で、修行堂が集まっています。
西塔の本堂にあたるのが最澄の自作と言われる本尊釈迦如来を安置している〈釈迦堂(転法輪堂)〉です。
豊臣秀吉が1595年に移築した延暦寺最古の鎌倉時代の建物で国重要文化財にも指定されています。
根本中堂と同じように本尊が祀ってある内陣が低く作られた独特の構造になっていますが、これは参拝する人の目の高さと同じにすることで「全ての者が仏になれる」という教えを示しています。
同じ形をした2つの常行堂と法華堂が廊下によって繋がっている特徴的な造りのこちらは、弁慶が両堂をつなぐ廊下に肩を入れて担ったとの言い伝えから〈にない堂〉と呼ばれています。
そして静寂に包まれた美しい庭園の中に建てられたこちら〈浄土院〉は最澄の遺骸が眠る御廟で比叡山内で最も清浄な聖域です。
比叡山に伝わる厳しい修行のひとつ、12年間浄土院に籠り人に会わず最澄の側でお世話をする「十二年籠山行」を、戦後7人目渡部光臣住職が満行したのは2021年のこと。
この役目を果たす侍真職は肉体が滅んでも魂は生きていると考え、毎朝師のために食事を作り清々しく過ごしてもらうために日々掃除をします。この掃除も厳しい修行で落ち葉1枚も許されないそう。
2日目の朝は深い霧に包まれていた比叡山延暦寺。姿は見えませんでしたが、人影のない静寂の中に響く鳥の囀りを聴きながら一句。
〈瑠璃が鳴く 比叡の杜に 霧が立つ〉