未来を照らすロールモデル | 町亞聖オフィシャルブログ「As I am」Powered by Ameba

未来を照らすロールモデル

人権教育啓発推進センターが発行する月刊誌「アイユ」5月号では、福岡県にある産前・産後母子支援センター〈こももティエ〉センター長の



瀬里徳子さんと助産師で〈こももティエ〉でコーディネーターを務めている菊本絵万里さんにインタビューしましたメモ


福岡にありながら北海道から沖縄まで全国から相談が来る〈ここもティエ〉が映し出すのは日本の性教育の遅れでした。内容を抜粋してご紹介します。



〈こももティエ〉では予期せぬ妊娠など様々な事情を抱えた妊婦さんに対して、"出産前の妊娠期"から産後まで切れ目のない支援を行っているのが特徴です。



NPOなど限られた団体による妊娠相談は実施されていましたが、虐待死亡事例は0歳児が多いという現状があり、支援に入るのが出産後では遅いという声を受けてセンターが作られました。



電話相談や24時間のメール相談、経済的に困窮している人や住まいもなく友人の家やネットカフェで寝泊まりしている妊婦さんに対して居住支援もしています。



市内在住ならば産後も生活の状況を把握したり、必要な場合には家庭訪問をするなどのケアも。また行政が関わりにくい妊婦さんを対象に訪問支援や通院の同行支援もスタートしたそう。



コーディネーターの菊本さんによると相談の7割が10代20代の若年層で、妊娠したかもという相談、親に相談したいけれどどうやって伝えたらいいのか困っている、お金が無いという相談だそう。



また30代40代からの相談もあり年齢に関係なく相手が不特定多数だったり、妊娠を伝えたら相手の男性が逃げてしまったという相談も。



電話相談だけでは妊娠が本当か分からない場合でも、取り返しのつかない事態にならないように、心配なケースはできるだけ相手の主張を重視しながら対応していると菊本さん。



頼る人もなく他県から来る人は住民票もありません。〈こももティエ〉のスタッフが一緒に窓口に行っても当然ですが取り合ってもらえません。



そんなケースは母子手帳の交付のために住民票のある役所の担当の人に問い合わせをして、行政同士でやりとりをしてもらえるようにコーディネーターが調整します。



〈こももティエ〉は令和2年後半から相談事業をスタートさせていますが、相談は全国からあり令和4年は新規相談が544件、去年は428件でした。



センターに相談する段階で誰も頼れていない証拠です。菊本さんは辛抱強く話を聴き相談者が抱えている問題や言いたいことを引き出すようにして、相手との糸が切れないようにしています。



若い人達の性知識の乏しさは深刻で「抱き合っただけ」「性器が触れた手で触っただけ」で性行為がないのに妊娠しているかもという相談が結構あるとのこと。



10代だけでなく20代前半でも同じで、排卵や受精、妊娠や避妊の知識が欠如しているのに、インターネットからの情報で着床出血は知っているというお粗末な状況だと瀬里さん。



最近では精神的な疾患や知的障害がある人からの相談も増えているそう。自立は難しく地域で生活できるように色々な支援に繋ぎ調整するアフターケアも〈こももティエ〉の役割。



障害を持っている女性が母親になることを想定していないからだと菊本さんは指摘。もしかしたらいつか妊娠出産して、自立して子どもを育てることがあると考えて支援をしていたら状況は違っていたとも。



様々な事情を抱えているため普通の仕事を続けていくこと自体のハードルが非常に高く、さらに1人1人の状況や適性に合わせて働ける仕事の受け皿が少ないために



収入も良くて働きやすいという理由から風俗など夜の仕事を選択している女性も少なくないそうです。予期せぬ妊娠で身体も心も傷つくのは女性であり、男性は痛みを負うことは残念ながらありません。



自分を大切にすることや予期せぬ妊娠を防ぐためにはどうしたら良いのか。「生きる」ことと「性」との両方の教育を低年齢からしていく必要があると瀬里さん。



〈ここもティエ〉の夜間対応を支えてくれている事業者を立ち上げた女性は実は予期せぬ妊娠の経験者。同じ社会福祉法人が運営する母子生活支援施設「百道寮」の利用者で退寮後に



自分の力で自立し人材派遣などの事業を立ち上げ、ここもティエを出る母親に仕事の紹介もしているそう。この女性のように未来を照らすロールモデルが増えてくれたらと瀬里さんは話していました。


 

「予期せぬ妊娠」はジェンダーの格差が大きい途上国などで多いことが国際的にも指摘されていますが、今回お2人にインタビューして



「自分の身体を大切にすることは権利であること」を学ぶ性教育が遅れている日本は先進国ではないと痛切に感じました。必要なのは「教育」という瀬里さんの言葉を重く受け止めなければなりません。

 


これまで月刊誌「アイユ」のバックナンバーが以下のURLから見られましたが、残念ながらこのサービスは中止されてしまうとのこと。今は今年1月分まで読めますのでご利用下さい☞


http://www.jinken.or.jp/archives/26418