変わらず大切なもの。。。 | 町亞聖オフィシャルブログ「As I am」Powered by Ameba

変わらず大切なもの。。。

大好きな俳優さんのひとり北村一輝さんが初のミュージカルに挑戦するということで、これは見逃せないと日生劇場にて「The King and I 〜王様と私」を観てきました音譜



ブロードウェイでの初演は1951年、日本では松本白鸚さんにより1965年に初演され、渡辺謙さんの来日公演も大きな話題になりました。



北村さんもスキンヘッド!?になるのかと思っていたら、サイドを刈り上げてはいますが長髪というのも新たなチャレンジのひとつだそう。



まさか自分がミュージカルをやるとは思ってなかったという北村さんですが「観た人の人生を変え、自分の人生も変えるくらいの作品にしようと本気で挑む」と語っていました。



野生的でエネルギッシュ、意思の強そうなエキゾチックな顔立ち、生命力溢れるカリスマ性を持つ北村さんに王様が似合わないわけがありませんおーっ!



仏陀が鎮座する黄金の大階段の上段に据えられた高御座の玉座に、煌びやかなタイ伝統の衣装を身に付けて座っている姿はまさに王様王冠1



上から目線で(王様なので仕方がないあせる) 少し高めの声音で話すのも良い。歌は少しドキドキしましたが、喋り声より低音で安定していて、初ミュージカルでは充分健闘したと思います。



英国人将校の夫を亡くし息子ルイスと遠く離れた異国の地シャムにやってきたアンナを演じるのは、元宝塚トップスターの明日海りおさん。



仕事は王室の子供達の家庭教師で、王宮の隣に家を建ててくれると約束したのに、そんな約束は知らぬから王宮に住めばいいと聴く耳を持たない王様。



一夫多妻制や全ての人が王に平伏すタイ式の挨拶などの慣習に違和感を持つアンナは、おかしいことはおかしいと臆せず王にも物申します。



自己主張はするけれどおおらかで柔軟性を兼ね備えたアンナは、宝塚退団後に観た明日海さんの役柄の中で1番のはまり役だと思いました。



息子を励ます母親の顔、子供達に向ける笑顔、頑固者同士の王様とのやりとりも微笑ましく、「自分より頭を低く」と言われた時もただ従うのではなく楽しげなのもとてもキュートラブラブ



そして多くの側室や子供達をまとめ、国の舵取りという重責を担う国王を信頼し心から尽くす気品あるチャン王妃を木村花代さん。



国王の命令が絶対である国に生きるチャン王妃ですが、隣国から献上された踊り子タプティムの哀しい恋やお互いに理解し合う王とアンナを見守る懐の深い女性を。



タプティムを演じる朝月希和さんと恋人ルンタの切なくも美しいデュエット、次期国王となる凛々しいチュラロンコン王子と息子ルイスもとても歌が上手。



タイ式にアレンジされた劇中劇「アンクル・トムの小屋」の演出と語り部を務めるタプティム。奴隷制度への批判の物語を自分自身に重ねた語りは胸を打ちました。



そして再び北村さんですが「地球は丸いのか」という息子からの質問にはっきり答えられず「王なのに分からないのですか」と言われてしまいます。



全てを知ってるわけではないと苦悩する王様は「世界は広く人間は小さい」という真理をきちんと理解しています。この世界には確かなものがないということも…。



周辺国が西洋列強の植民地になっていく中で、国を守るためには近代化を進めなければならないことは分かっているけれど急激に改革することは難しく



外圧に悩まされている時代だからこそ、国民にとって国王は強くて絶対的な存在でなければならず、古いしきたりを止めることも出来ないでいます。



ですがアンナを家庭教師に迎えていること自体が未来を見据えている証。子供達に新しい世界を見せてくれているアンナ先生に王様も信頼を寄せるようになっていきます。



アンナの意見にも耳を傾けますが、先に言わせて「俺もそう思っていた」方式も許せてしまう、どこか憎めないチャーミングさも。



「Shall We Dance?」に乗せて軽やかに踊る場面。ほんのひとときですが幸福に満ちた時間を分かち合う王様とアンナ。もっと触れたいけれど一線は超えない…。そんな2人の姿にグッときました。



文化や価値観、身分の違いを超えて認め合う2人に共通していたのは、国と息子という違いはありますが、愛する者を守るために強くあらねばならなかったこと。



そのために自らも学び変わろうという努力が出来た王様と性急に相手を変えようとせずに相手を知ろうという努力が出来たアンナ。



「不安で怖い時は口笛を吹こう。見せかけの強さでも言じればきっと勇気になる」息子と共に異国に足を踏み入れる時にアンナが歌った曲のフレーズです。



大人でさえ迷い不安になることもあり、完全ではなくただの弱い人間…。王様が理解していた確かなことはない世界の中で生きていくためにはどうしたら良いのか。



まだ若き王が示した未来の国の姿から私達大人が学ぶことがあると感じさせるラストシーンでしたが、今もタイでは映画も舞台も禁止されているそうです。



演出の小林香さんは舞台美術の参考にするために実際にタイに行き、現代まで王室が続くタイの人達の国王への敬意の大きさに触れてきたとのこと。



丁寧に再現されたアンサンブルや子供達のお辞儀や合掌などにリスペクトが現れていましたし、目に見えるものだけでなく時代に合わせた解釈も加えた今作には



変わらなければならないものや、人が人に向き合う時に変わらず大切なものは何かというメッセージが込められていると感じましたクローバー



ミュージカル「The King and I 〜王様と私」は日生劇場にて今月30日まで上演していますキラキラ音譜