まずは緩やかな共存から… | 町亞聖オフィシャルブログ「As I am」Powered by Ameba

まずは緩やかな共存から…

人権教育啓発推進センターが発行する月刊誌「アイユ」3月号でインタビューしたのは、私の地元でもある埼玉県蕨駅から数分の場所にある芝園団地の自治会の事務局長を務めた岡崎広樹さんです。



岡崎さんが芝園団地の自治会の活動に関わるきっかけは入塾していた松下政経塾で実施されていた、自分でテーマを決めて自主的に現場で研修するプログラムでした。



「日本人と外国人の共生」をテーマにしたいと調べていた岡崎さん。芝園団地では中国人の住人が増えていて生活トラブルが起きているという週刊誌の記事を見つけ自治会の方に話を聴きに行きました。



トラブルが起きていたのは2000年代半ばから2012年にかけてで、団地を管理するURが中国語の通訳を配置し、入居手続きの際に生活習慣などを説明するようにしたことで改善されていったそう。



では岡崎さんが団地に住もうと決断したのは何故か。自治会の人は「これからは外国の人と交流したい」と言うものの、実際には交流も共生も出来てない状況で、本当に何が起きているのかを知りたいと思ったから。

 


岡崎さんが住み始めた2014年当時で住民の半数が中国人だった芝園団地。「日本語はどうせ話せないから」という日本人の思い込みが壁になっていて、交流のきっかけが作れていないだけでした。



団地で暮らす日本人は高齢者で逆に中国人は働き盛りや子育て世代が中心。国籍も世代も違う住民同士が関係を深めるのは難しい状況が最初は続いていたそうです。



岡崎さんは防災の勉強会などを開催、さらに大学生のボランティア団体〈芝園かけはしプロジェクト〉が2016年に多文化交流クラブという取り組みをスタート。



とにかく一緒に作業したり、話したり、考えたりする中で顔見知りになろうという、小さくても良いから場作りをするというシンプルな活動だったそうです。



「顔の見える関係を作る」これは医療と介護の多職種連携でも大切な最初の1歩。芝園団地では若い人たちが日本人と外国人の架け橋になりました。



団地を変えてやろうという熱い思いがあったわけではないと語る岡崎さんですが、やはり簡単に自治会の人などに受け入れてもらえたわけではありませんでした。



地域の一員になるには4~5年はかかったそう。活動を続けてきた中で、昔から活動をしている方々が外国人や新しい学生が関わることを否定せず受け入れてくれたことはとても大事だと岡崎さん。



芝園団地で起きていたのは多文化の問題というよりも、隣近所と付き合いたいのか、またどういう関係を築きたいのかという人間として根本的な問題だったのです。



同じ団地や地域に住んでいるだけで人間関係が築けるわけではないのは日本人同士でも同じ。共生するためには<緩やかな共生>が必要だと岡崎さんは指摘。


昔のように人が移動せずに長く同じ場所に住んでいて知り合いが多い地域社会というのは〈地縁〉によりコミュニティーが成立していましたが



多様化が進む日本社会では全ての人が〈見知らぬ隣人〉になる可能性があり、まずお互いに静かに普通に暮らせる〈共存〉の状況を作る必要があると岡崎さん。


「共生したいと思う人もいれば、共存の状態で十分だという人もいる」芝園団地だけでなく高齢者と若者など住民の属性が多様になると、お互いが自然に出逢うことは出来ません。



いきなり共生を目指すのではなく、共生したい人達が出逢って緩やかな関係を築けるような仕組みが必要だという話はまさにその通りだと思いました。



共生のテーマの根底にあるのは<違い>の問題であり、大事なのはお互いの違いに直面した時にその違いを受け止めて理解しようとすることや上手くやっていくための日々の積み重ね。



相手を一人の個人として尊重するということであり、自分自身が尊重されていると感じなければ相手を尊重する意識は生まれないと思います。外国人と地域社会で共に暮らしてく時にも大切なことです。

 


現在、芝園団地の住民の6割が外国人で、2023年度は自治会8人の役員のうち5人が外国籍の人が務めているそうです。完全なる共生や共存は無理でも何とか暮らせているのです。



国籍に関係なく多様な人材で構成される芝園団地の自治会や学生ボランティアの活動は、これからの日本社会のロールモデルになる可能性があると感じました。



芝園団地のような外国人集住地域というのは日本社会の鏡だと岡崎さん。誰かに強制されて<共生>や<共存>を選ぶのではなく、1人1人がどちらかを選びやすい社会を創っていければと話していましたクローバー



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