たかがあだ名されど。。。 | 町亞聖オフィシャルブログ「As I am」Powered by Ameba

たかがあだ名されど。。。


文化放送「ゴールデンラジオ」でご一緒していたいとうあさこさんと原嘉孝くんが出演している、山田ジャパン公演「愛称⇆蔑称」を観てきましたキラキラ音譜



タイトルからも想像できるようにいじめに繋がるという理由からあだ名を禁止したり、名前に「さん」を付けて呼ぶことを推奨する学校が増えているという現実の問題に真正面から向き合った作品。



舞台は長野県佐久市にある田舎の中学校。あさこさんはベテランの教頭先生で原くんは初めて学年主任を任された若手教師畑中忠平役。生徒からは"はたちゅう"と親しみを込めて呼ばれていて、先輩先生との会話からこの中学の卒業生であることが分かります。



生徒達はみんな素直でどちらかというと幼すぎるぐらい。問題を抱えた生徒もおらず、子供らしく〈あだ名〉で呼び合っています。何でもないことで邪気に笑い合う子供達と何にもないけれどのんびりした故郷を心から愛している忠平先生。



ある日、東京から1人の転校生がやってきて穏やかだった中学校が一変。この生徒の親が乗り込んできて声を荒らげてクレームをつけます。その内容は「あだ名を禁止にしてください」というもの。



主な場面が中学生の職員室での会議シーンでありながら、最後まで飽きさせない見事な会話劇でした。最初から戦闘体制の母親が矢継ぎ早に繰り出す言葉についていけない、良い意味でのんびりしている先生達。



「トーンポリシング(主張内容ではなく話し方や感情を批判することで論点をずらすこと)」「ルッキズム」などなど。「この学校のリテラシーは途上国並みに絶望的に遅れています!」と一方的に学校側を糾弾する母親。



このクレームをきっかけに教員と親達による職員室での話し合いが始まるわけですが、主張自体をそもそも理解できない先生達と時代の先を行く母親との平行線の議論に、客席にいる私達も参加している気持ちにさせられました。



あさこさんと黒田アーサーさん演じる校長は同級生。「ぶーちゃん」「サミー」とお互いに呼び合う仲で、当然ですが忠平先生はじめ先生達は全員あだ名禁止には反対の立場。



理由はコミュニケーションの中で自然に生まれるものであり、人間関係を円滑にする役割もあるから。私もあだ名の全面禁止は行き過ぎに感じましたし、そこまで言わなくてもとはじめは思っていました。



ちなみに名前で呼ばれることが多い私ですが、小学生の頃は男子よりも身長が高く強かったので、なぜか〈ゴリさん〉と呼ばれていました。これも見た目を揶揄されたあだ名のひとつだったか…。



あだ名がきっかけでいじめに発展したりあだ名自体がいじめの可能性もある。だからそんな危険なあだ名ははじめから禁止にすべきだという母親の主張の裏には実は事情と後悔がありました。



この問題にきちんと向き合おうとする忠平先生を原くんが好演。あだ名を禁止して「さん」付けにしたらいじめは無くなるのか。そんな単純なものではなく、恐らく数式のような明確な答えは出ないと思います。



ただ時代が変化しているのは間違いなく、ひとりひとり〈正義〉も違っていてまず大事なのは考えること、そして想像力を持つこと。〈たかがあだ名、されどあだ名〉果たして忠平先生の学校であだ名は禁止されてしまうのか…。



あさこさんと原嘉孝くんが出演している、山田ジャパン公演「愛称⇆蔑称」は東京・六行会ホールにて今月15日まで上演していますので、忠平先生が導き出した答えはぜひ劇場で確認して下さいクローバー