悲劇の土地にしないために… | 町亞聖オフィシャルブログ「As I am」Powered by Ameba

悲劇の土地にしないために…

人権教育啓発推進センターが発行する月刊誌「アイユ」2月号でインタビューしたのは、福島県いわき市で地域の食や福祉など様々な企画や運営、情報発信を続ける地域活動家の小松理虔さんです。



大学卒業後は地元のテレビ局に勤めていた小松さん。地元に根差した情報発信をしていましたが、報道記者になったからには全国に向けて伝えたいのに、なんでこんな田舎の暇ネタを取材しているんだろうと正直思っていたそう。



その後、福島を離れ上海で日本語の先生や現地の日本語情報誌のライターと編集の仕事を始めます。ブログで上海の街角の普通の小汚い食堂や外に干された洗濯物などの写真を投稿したところ世界中からアクセスが。



地元の人が見過ごしてしまう日常を、外国人の目線で伝えると多くの人達の心に深く刺さるということを経験し、ある種のよそ者目線で地元を見たら面白いのではと考えて2009年に福島に戻ります。



サラリーマンをしながら小名浜の情報を発信するサイトを立ち上げます。そして地元の仲間と何かやろうとオルタナティブスペース「UDOK.」をスタートさせようとした矢先に東日本大震災が発生。



地域活動をしていると「復興のため」や「被災された方が集まるコミュニティースペースですよね」と言われてしまうそうですが、自分達は震災があったからではなく、やりたいことや楽しいことをやっているだけと小松さん。



もちろん被災者支援のボランティアに関わっている仲間もしましたが、大切なのは当たり前にあった楽しい日常を、まず自分たちが再獲得することであり、可哀想な人達が頑張っていると見られるのは抵抗があったと話してくれました。



原発事故が起きてみんなが不安になる中で、親世代とも避難するかしないかで意見が割れ、今生の別れみたいな感じになったりと、それぞれの生き様や人生の価値観を露わにした震災。



「この場所があったことで本当に救われた」と話す小松さん。ここに集ってくる仲間達と色々なことを語り合い、混乱したりする自分を奮い立たせたり支え合うことが出来たそう。



震災から13年。子供が生まれた友人達は子育てのことなど、それぞれ新しい心配事や立ち向かうべきものがあり、今の暮らしが大事になってきたという意味では時間の経過と共に穏やかな日常が戻り、復興に繋がってきていると感じるそう。



ただ車で1時間ぐらい行くと福島第一原発があり、故郷に戻ることができない人達がいます。原発の処理水問題では厳しい現実と向き合わざるを得ない、水産業者のみなさんとのギャップは生まれています。



福島を「悲劇の土地」にしないためにも「忘れてはいけないこともあるし教訓もある。だけど穏やかな日常もある」というように、両方を忘れないようなチャンネルが必要だと小松さんは指摘します。



国が強引に進めてしまった処理水の海洋放出。処理水を流すか流さないかは福島の漁業関係者だけで決める問題ではないと小松さん。何故なら日本の食卓や水産業の持続可能性の問題であり自分事ではない人達はいないから。



本来は国民全員が考え、政治が決める問題なのに、漁業者がOKと言っているのでOKです、漁業者が反対だと言っているので反対ですという構図自体がおかしいという話は、まさにその通りだと思いました。



水揚げ量は震災前の2割ぐらいしか回復しておらず、賠償が続いていますが、賠償は復興や自立の妨げになると小松さん。かつて生き生きと漁をしていた漁師としての尊厳も傷つけられていて、支援がないと操業できないのは自立した状態ではないから。



30年から40年と言われている廃炉作業ですがそれでは終わらないのは明らかです。廃炉が終わらなければ処理水の海洋放出も、賠償もずっと続くことになります…。



「とりあえず海に行って自分達の目で見てみよう」という想いで小松さんが2013年にスタートしたのが「いわき海洋調べ隊うみラボ」。海底土と魚を採取して放射性物質を測定して、魚をその場で食べるというプロジェクトです。



最初は寸胴鍋1つ!?しか持っていかなかったそうですが、アクアマリンふくしまの獣医や大学教授など専門の人も協力してくれて信頼できるデータが蓄積できていると小松さん。



国の基準値を超える検体は2015年以降はひとつも見つかっていないそうで、福島の海が回復していることが分かります。自分達の手で一つ一つ実践的に積み上げて行き、一緒に学びながら情報を手に入れていくプロセスが大切だったそう。



また測定するためには魚を釣らなければなりませんので魚を釣るのが上手になり、魚がさばけるようになったと小松さん。どんな魚がいるのか、どういう風に食べると美味しいのかなど、結果的に福島の海を知ることに繋がったそうですクローバー



復興のためという大義だけでは活動は長続きしないことを痛感している小松さん。楽しくなければ誰も関わってくれませんし、面白くなければ興味すら持ってもらえない。小松さん達が楽しむのは、風化や風評に抗い原発事故への怒りを忘れないためでもあるのです。



今年初めにも能登半島地震がありました。いつ何処で地震や津波が起きてもおかしくありません。「復興」だけでなく「地方再生」のヒントが沢山詰まっている小松さんのインタビュー後半に続きますメモ




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