どんな役でも演じてみせる
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「トッツィー」と言えば名優ダスティン・ホフマンが地味な中年のおじさんと真っ赤なスパンコールのドレスを身にまとう女性の2役を演じた傑作コメディ。
ミュージカル版で主演を務めるのは山崎育三郎さん。「早替えが本番中に30回」。マイケルからドロシーへ、ドロシーからマイケルへ、舞台裏はF1のピットみたいと語る山崎さん。
ストイックで演技へのこだわりが強すぎて、納得がいかないとプロデューサーにも言うべきことを言ってしまう売れない俳優マイケル・ドーシー。
芝居に対して真っ直ぐである意味正しいけれど、扱いづらくて周りとは上手く行かずオーディションは落ちまくりで、ついにはエージェントにも見放されてしまいます。
そこで起死回生とマイケルが思い付いたのは女優ドロシー・マイケルズとしてオーディションに挑戦すること。物腰も柔らかく中年の魅力で一躍大人気スター女優になってしまいます。
映画版ではドロシーが役を掴んだのはテレビの昼ドラマでしたが、舞台版では「ロミオとジュリエット」を基にしたミュージカルでジュリエットの乳母役。
マイケルの時は物言いがストレート過ぎて受け入れられませんでしたが、人格が全く正反対でおおらかで人の話もちゃんと聴きながらアイディアを次々に出していくドロシー。
女性プロデューサーに気に入られタイトルが「ジュリエットの乳母」に劇中で歌うナンバー「裏切らない」の「裏切らない、信頼に応えるわ、どんな役でも演じてみせる」という歌詞が俳優としての山崎さんの心情を表しているよう。
「これまでに出演した中で最も音域が広い作品」と言っていた通り、マイケルの時の低音からドロシーの高音まで歌い分け、演じ分けた山崎さんにスタンディングオベーション
映画公開時よりもジェンダーを巡る問題がタブーではなくなり、当事者がようやく声を上げられる時代になりました。一部の化石のように凝り固まった人を除いて、社会の意識も変わってきました。
ただしこのミュージカルがこだわったのは社会的なメッセージを表現することではなく「みんながハッピーで笑って楽しめる」とあくまでも〈笑い〉を大切にすること
大活躍だったのは筋肉バカなロミオ役者を演じたおばたのお兄さん。(岡田亮介さんとWキャスト)。ドロシーの包容力にメロメロになり、突飛な行動で彼女への愛を表明。その振り切った演技に大爆笑でした。
またジュリエット役を務める女優ジュリーを演じる愛希れいかさんは、ちょっと中性的な魅力を醸し出していて、悩みを聴いてくれるドロシーに全幅の信頼を寄せるように。
人と人が惹かれ合うのに性別は関係ないということを体現するジュリーは、まさに今の時代を写す鏡のよう。観ている側はドロシーが実はマイケルだと分かっているのでハラハラさせられます
マイケルに想いを寄せる女友達のサンディ役は昆夏美さん。昆さんの舞台も沢山観ていますが彼女の引き出しの多様さに脱帽です。かなりハイテンションの体当たり演技で笑いをもたらしてくれました。
元々優しい眼差しを持ち話し方も物腰も柔らかい山崎さん。みんなが女性だと信じてしまうのが納得の神経の行き届いた立ち振る舞いと圧倒的なビジュアル。
ドロシーに扮している時のドレス姿のデコルテが本当に綺麗で、スラリと伸びた脚線美にも釘付けになりましたが、何よりとてもチャーミングな女性でした
一方でマイケルに戻った時はもちろん声も低めで男らしさを出していますが、女装していることを唯一知っている親友ジェフの前では、オーラが全くなくイケてないただの中年男性というギャップが良かった。
ちなみに親友役でこちらも泣かず飛ばすの劇作家のジェフを演じるのは金井勇太さんでなんとミュージカル初出演。マイケルとの間合いが絶妙で力の抜けた演技が逆にスパイスに。
ドロシーを演じることで「全てを許すこと」という寛容さを学んだマイケル。そして自分を開放することや、いくつになっても人は変われるし成長できることも…。
山崎育三郎さん主演のミュージカルコメディ「Tootsie」は日生劇場にて今月30日まで上演しています