身を滅ぼすほどの… | 町亞聖オフィシャルブログ「As I am」Powered by Ameba

身を滅ぼすほどの…

2023年も沢山の舞台から大袈裟ではなく生きる力をもらいました。一期一会の舞台にかける俳優さん達の情熱にはただただリスペクトしかありませんクローバー



年内の観劇納めはフランス文学の代表作でスタンダールの小説を原作とする、三浦宏規さん主演のフレンチロックミュージカル「赤と黒」でした。



舞台は貴族階級が支配する19世紀のフランス。三浦さんが演じるのは貧しい材木屋の息子ジュリアン・ソレル。皇帝ナポレオンに憧れ社会に変革を起こそうと熱い情熱を抱く青年。



明晰な頭脳と美貌を兼ね備えたジュリアンは町長を務めるレナール家の子供達の家庭教師を引き受けます。聖職者を意味する〈黒〉の衣装に身を包んだ三浦さん。



眼差しには強い力がありますが常に寡黙で、存在を誇示するような素振りや貴族へ抱く嫌悪を剥き出しにすることはありません。



そんなジュリアンの運命を左右するレナール夫人を演じるのは夢咲ねねさん。地位も財産もありますが着飾ることもなく、信心深くて貞淑な女性を。



身を滅ぼすほどの禁断の恋に堕ちるわけですが、身分や年齢の差を超えて愛の炎が着火するまでの、もどかしさや葛藤の場面があまり無いまま唐突に結ばれたのは少し残念あせるあせる



小さな町での情事がばれないわけはなく、しかもジュリアンに恋焦がれていた使用人の密告により、夫から不倫について追及されたレナール夫人は態度を一変。



私の名誉を傷つける侮辱と憤りジュリアンを直ちに追い出すようにと命令します。哀れなジュリアンは説明も無しに切り捨てられてしまいます。



野心や階級社会への怒りで成り上ろうとしたジュリアンですが、ルイーズ夫人に対する想いの純粋さが切ない。静かな佇まいでミステリアスな演技とは打って変わって



真実の愛を踏み躙られた絶望により闇に落ち、憎悪を爆発させたジュリアンの、赤を基調にした衣装のアンサンブルを従えて激しく歌い踊る渾身のフレンチロックのナンバーは最高でしたラブラブ



そして第2幕。町を追われたジュリアンはパリでラ・モール侯爵の秘書として働き始めますが、ここでもまた人生を大きく変える出逢いが。



上っ面の会話しか出来ない貴族の世界に飽き飽きしている侯爵令嬢のマチルドを演じるのは田村芽実さん。キレキレのダンスと挑戦的な表情で歌い上げる生意気さ全開のナンバーが良かった音譜



周りの貴族の男性とは明らかに異質なジュリアンに興味を持つマチルド。ジュリアンを見下す態度を取りながらも、次第に心が揺れ動いていくのが分かるのが可愛い。



気があるのかないのか分からないマチルドに翻弄されるジュリアン。恋愛に免疫が無さすぎおーっ!第1幕からストーリテラーを務める東山義久さん演じるジェロニモが恋の指南を。



お互いに無いものを手にしたいという捻れた感情が愛に変わるのは必然。2人の関係を知った侯爵は烈火のごとく怒りますが、一途な娘の気持ちに根負けして結婚を認めます。



再び登場するのがレナール夫人。ジュリアンの身元照会のための書状で、彼の信用を台無しにする行状を告発。全てを失ったジュリアンの運命はいかに…。



レナール夫人の夫役は東山光明さん、町長に対抗心を燃やしていて、レナール夫人に悪魔の囁きをし告発文を書かせた貴族ヴァルノを駒田一さん。



ラ・モール侯爵の川口竜也さんにジェロニモ役の東山義久さんと、いずれも一癖も二癖もある俳優が勢揃いで、それぞれの見せ場も聴き応えあり
ビックリマーク



野心とは裏腹に高潔で純粋な魂を持つ美しい青年が、最後に得たものは〈赤〉か〈黒〉か、それとも…。フレンチロックミュージカル「赤と黒」は東京芸術劇場にて今月27日まで上演しています音譜