自分の人生が愛おしく… | 町亞聖オフィシャルブログ「As I am」Powered by Ameba

自分の人生が愛おしく…

登場するのはたった2人。現代アメリカ社会を舞台に姉と弟、母と息子が織りなす家族の物語、ミュージカル「ジョン&ジェン」を観劇してきました音譜



日本初演となる今作を手掛けるのは「アダムス・ファミリー」などでお馴染みのアンドリュー・リッパ氏で、演出と翻訳など担当するのは市川洋二郎さん。



ジョン役にはNHK大河ドラマでも大活躍していた森崎ウィンさんと田代万里生さん、ジェン役は新妻聖子さんと濱田めぐみさんのダブルキャスト。私が観たのは森崎&新妻コンビ。



ジェンとジョンは6歳違いの姉弟。小さな命の誕生を心から祝福するジェンは、暴力を振るう父親から弟を守り抜くと誓い、支え合いながら成長していきます。



思春期を迎えたジェンは次々とボーイフレンドを変えたり、まだ幼いジョンにも色々注文をつけたりと2人の関係は少しだけギクシャクします。



そして元々父親から離れたいと思っていたジェンは大学進学のために家を出ることに。「2人で生きていくと言ったのに…」と姉を引き留めようとするジョン。



ニューヨークで自由を謳歌するジェン。そんな中で起きた同時多発テロ。姉とは違って父親を嫌ってはいなかったジョンは、父親から影響を受け家族を守るために戦地に。



幼少期から大人になるまでを演じた森崎さんと新妻さん。戯れ合う2人の姿は微笑ましく、また成長していくにつれてすれ違う様子も私にも弟がいるので"あるある"と自分達と重ねて観ていました。



そして我が家の父親が全く同じでお酒を飲むと暴れることがあり、父から逃げるために弟と2人で家を飛び出したことを思い出し、まるで自分達を見ているようでした。



ですので家を出る選択をしたジェンの気持ちが痛いほど分かりました。私の場合は母が倒れてしまったために結局実家を離れることは出来ませんでしたが…。



仲違いをしたままで戦争で引き裂かれてしまった姉と弟。時は流れ第2幕ではジェンは母親になり授かった我が子にジョンと名付けます。



同じ名前ジョンですが全く違う人間を演じる森崎くん。母親のジェンの過保護ぶりは弟に対する後悔の念を持っているからだと知っているだけに観ていると胸が痛い。



この子にも似合うはずと弟が着ていたセーターを取り出したり、貴方もきっと好きなはずとクタクタになった野球のグローブをクリスマスプレゼントで渡したり。



会ったことのない叔父に重ねられる息子のジョン。そんな母親を疎ましく思いながらも優しい彼は母親を傷つけないように自分の心を押し殺します。



そして再び成長し自分の道を歩みだそうとするジョンへの束縛をやめられないジェン。息子を想うがゆえと言いながらも、本当に断ち切れないのは〈ジョン〉への執着。



国は違っても家族とは厄介なものなのは変わらないですね。親と子供の人生は別のものですが、1番身近な大人から影響を受けないわけはなく、時に人生の選択を左右することも。



「メロディがセリフに近いように作られていて難しい作品」とインタビューで森崎さんも話していましたが、普通のミュージカルのように歌で場面を盛り上げるという感じではなく



複雑な心情も全て歌うように喋っていて、途切れない曲を歌い続けている新妻さんと森崎さんの演技と歌唱力が素晴らしかったですキラキラ



2人とも出ずっぱりで客席から見える場所に衣装や小道具が置かれていて、自分で着替えたり髪型を変えていく演出で、第1幕では森崎さんが大量の汗をかいていて熱量が伝わってきました



私の人生は決して順風満帆ではなく本当に色々なことがありました。父との確執、母の介護、幼い弟妹と助け合って生きたヤングケアラーの経験。喜び、怒り、悲しみ、葛藤…



人生が走馬灯のように蘇りましたが、今の私が在るのはその全ての出来事があったからこそ。自分の人生が愛おしく思えるミュージカル「ジョン&ジェン」はよみうり大手町ホールにて今月24日までクローバー