無意識の加害者ではなく。。。 | 町亞聖オフィシャルブログ「As I am」Powered by Ameba

無意識の加害者ではなく。。。

先日、都内で開催されたオンラインイベント『ハンセン病問題を次世代に伝える〜「親と子のシンポジウム」』のお手伝いをしてきました。こちらからアーカイブが観られます☞


https://www.youtube.com/live/mLmeWrt6CEc?feature=shared


ハンセン病は感染力が非常に弱く1948年には治療薬も使えるようになっていたにも関わらず、1996年にらい予防法が廃止されるまでの約90年にわたって国による強制隔離政策が続けられました。



そのためにハンセン病は「恐ろしい病気だ」という誤った認識が社会に広まり、国が主導し市民に患者を見つけて通報させる無らい県運動などにより元患者や家族が激しい差別を受けることになりました。



ハンセン病に対する差別や偏見はいまだに根強く残っていて、元患者であることや家族でさえ周囲に打ち明けられずにいます。また社会に居場所がなく、体調を崩して療養所に再園する人も少なくないそうです。



小学6年の時に療養所に入園させられた国立療養所多磨全生園入所者自治会会長を務める山岡𠮷男さんは講演で、家族に迷惑をかけるからと苗字を変えさせられたことや



病気が原因で親との関係が上手くいかずに絆を結ぶことが出来なかったこと、就職をしたけれども病気を隠すために嘘をつき続けなければならなかったなどの体験を話してくれました。



そして広島にある盈進高等学校1年生の松葉悠乃さんは所属するヒューマンライツ部が、26年も続けているハンセン病元患者さんとの交流から学んだことを発表してくれました。



自分の病気のために中学校の卒業証書をもらえないなど、謂れのない差別を受けた妹さんのことが、自分のことよりも許せないと語った元患者さんや



仲の良い2人兄弟だったのに、結婚が決まり差別が及ぶのを恐れた兄から、故郷には帰ってきてくれるなと告げられた男性のエピソードを紹介。



松葉さん達が交流している岡山にある長島愛生園で暮らす人の平均年齢は87.6歳。生の声を聴いている自分達は、後世に伝えていく責任があると力強く話してくれました。



差別や偏見により人生そのものに重大な被害を受け人格と尊厳が冒されてきたハンセン病元患者や家族への深刻な人権侵害は「人生被害」と表現されます。



間違った情報により政治家、役人、医療界、法曹界、学校、地域と全ての人が加害者となったハンセン病問題。同じ誤ちを繰り返さないためにはどうしたら良いのか。



松葉さんがその答えを教えてくれました。それは高校生の彼女達の行動の原点となっている「正しく知り正しく行動する」ということ。



そして「別の〈悲しき病〉に人間は見舞われるかもしれない。だが 〈悲しき政策〉は無くすことは出来る。それは人間自身の手になるものだから」といういずれも元患者さんの言葉を紹介してくれました。



次に東京藝術大学大学生で写真家の木村直さんは「生活の場としてのハンセン病療養所」をテーマに、沖縄の療養所の写真におばあのインタビューを重ねた作品などを紹介してくれました。



子供の頃から医療ソーシャルワーカーをしている母親と一緒に療養所に通っていた木村さん。療養所には自分を温かく迎えてくれる大好きなおばあとおじいに会いに行くという感覚とのこと。



ハンセン病を知るために大事なのは歴史だけでなく暮らしに触れること。沖縄の海、風になびく洗濯物など何気ない風景を写真に収めている木村さんは、ぜひ想像をしながら写真を観て欲しいと話していました。



木村さんに初めて療養所を訪れる人は何を心掛けたら良いか聴いたところ、まず話を聴きくことで、その際はメモなんて取らないで全身で聴いて下さいとのことでした。



世の中には分からないことが沢山あるけれど、だからこそ分からないことを考え続けることが大事だと木村さん。子供達には「出会いを自分の力で引き寄せて欲しい」とメッセージ。



2019年に設立されたハンセン病問題を共に学び共に闘う全国市民の会会長の太田明夫さんは、始めは人権問題のひとつとして学んでみよう、家族の訴訟を応援しようという気持ちでいたそう。



それはあまりにも他人事だったと太田さん。ハンセン病問題を昔のことだと感じている加害側こそ、自分のこととして考えなければならない当事者だと指摘していました。



また優しさや思いやりだけでは差別は無くならず、ひとりひとりが当事者なんだという意識を持つ必要があり、いつでも逃げだせる立場にいる人間が逃げないことが大事だとも話していました。



また後半のトークショーにはNHK「スカーレット」やドラマ「義母と娘のブルース」など数多くの作品に出演している俳優の横溝奈帆さんが登壇。



横溝さんは松葉さんと同じ15歳。20代の木村さんも交えて、ハンセン病への偏見や差別を無くすために出来ることや、次世代に継承していくためにはどうしたら良いかを考えました。



国立ハンセン病資料館館長の内田博文さんによるとハンセン病の問題について関心があるかと聴いたところ、60%の人が「他人事で興味がない」と回答しているとのこと。



残念ながら長く続いたコロナ禍でも感染者や最前線で治療やケアにあたる医療介護関係者などが誹謗中傷を受ける事例が相次ぎました。



ハンセン病問題に限らず誰もが差別する加害者側になる可能性があります。「無意識の加害者ではなく差別を除去する協力者や実行者になって欲しい」と内田館長。



今回、若い世代が受け継いだ〈語り〉を聴けて本当に貴重な機会になりました。私もバトンを受け取ったひとりとして、見て見ぬふりをせずに必ず伝えていきたいと思いますクローバー