理想を叶えるために。。。 | 町亞聖オフィシャルブログ「As I am」Powered by Ameba

理想を叶えるために。。。

芸術の秋〜忙しい時ほど心にゆとりと栄養を音譜



ドストエフスキーの小説「罪と罰」をもとに野田秀樹さんが舞台を幕末の日本に置き換えて描いた「贋作・罪と罰」を、さらに宝塚でもお馴染み謝珠栄さんが大胆にミュージカル化した「天翔ける風に」を観劇。



10年ぶりの再演となる今作で主演を務めるのは元宝塚月組トップスターの珠城りょうさん。退団後、初めてのミュージカル出演でした。



珠城さん演じる三条英は男尊女卑の時代に生まれながらも、人の役に立ちたい、世界を変えたいという理想を胸に江戸開成所に通う塾生。もちろん女の塾生は彼女ひとり。



英は貧困に喘ぐ人々から法外な利息を貪り苦しめている金貸しの老婆を正義の名の下に殺害。そして偶然居合わせてしまった老婆の妹までも手にかけてしまいます。



「理想を叶えるためならば殺人も許される」そして「自分は選ばれた人間だから」と老婆殺しを正当化する英。ですが善き人と言われていた妹まで殺してしまったことは想定外であり、精神的に追い詰められていきます。



塾生仲間で英と同じ理想を持つ才谷梅太郎を演じるのは屋良朝幸さん。罪の意識に苛まれ苦悩する英の異変に気づき心配しますが、才谷もまた時代を変える宿命を背負い大きな歴史的うねりの渦中に。



宝塚時代から真っ直ぐさが魅力だった珠城さん。謝さんは三条英を演じられる役者の登場を待っていたそうで、清貧に生きる英の姿は珠城さんに重なります。



欲を言えば人を殺めた瞬間から拭っても決して消えない血の匂いみたいな殺気や狂気、そして自分は非凡だと言い切る人間の傲慢さが



もう少し滲み出ていたらと感じました。珠城さん好きなだけに厳し目ですみませんあせる元々、太陽みたいな存在なので影の演技に磨きをかけて欲しい。



才谷をこれまで演じてきたのは古田新太さんや石井一孝さんなど一癖ある役者ばかり。珠城さんと同じように真っ直ぐで爽やかな屋良さんは全く違うイメージの才谷を。



血を流さないために金の力を使おうとする才谷は古田さんなら拝金主義にしか見えませんが、屋良さんだと人道主義により時代の扉を開けようとしているように感じました。



実は得意のダンスシーンが少なかったそうですが、2幕開幕前に溜水石右衛門役の東山義久さんと和太鼓と三味線に合わせてキレキレのサービスダンスを披露してくれました。



そして見るからに腹黒で一癖も二癖もある東山義久さんの溜水石右衛門役が最高でした。「世界がひっくり返れば何でもアリ」と金に物を言わせて人を裏で操ろうとする溜水。



「ええじゃないか」の踊りに不満をぶつけて江戸の町を練り歩く民衆。その混乱に乗じて反乱を起こそおうとする若き志士達や失踪していた英の父親を唆し



困窮している英の妹の智を妻にし我が物にしようとしますが、智に激しく拒絶されながらも愛してくれないのかと迫る姿に、屈折した表現の仕方しか出来ない人間の悲哀を感じ苦しくなりました。



そして今回注目していたのは若き志士ヤマガタ役の原嘉孝くん。声も良く通り舞台向きで、群舞でも中心となりキレのあるダンスを魅せてくれました。一緒に観劇した中尾ミエさんもなかなかねと褒めてましたキラキララブラブ

 


老婆殺しの捜査を担当する都司之助を今拓哉さん。単なる金取りの犯行ではなく、思想に基づく確信犯であることを見抜き、はじめかは英を疑い執拗に心理戦をしかけていきます。



志を失い酒浸りとなり江戸で落ちぶれた暮らしを送る英の父親の甘井聞太左衛門を駒田一さん。家族のためにというある意味で理想的や思想に囚われずに1番人間らしく生きたいと願っているひとり。



英の母親の清を演じるのは元宝塚の剣幸さん。英には父の志を継げと説き、妹の智を溜水に嫁がせようとするのも家を守るためであり、選択は違っても父親と想いは同じ。



「非凡人は既成の道徳法律を踏み越える権利がある」という理由から殺人を犯した英を「死んでもいい人間などと出会ったことがない」と説得する才谷。



「俺が牢の外でお前を待ち続ける。女が男を待つのではなく、男が女を待ち続けるんだ」罪を告白し自首した英はこの才谷の言葉を胸に再会を願うも、その才谷が理想でも思想でもない理由から命を奪われるという皮肉。



「彼の方角と書いて彼方と呼ぶのよ。だからお前のいる所は、これからはいつも私の彼方」彼方には〈遠く離れた未来〉という意味もあります。




理想を掲げて闘った人達がいた過去から〈彼方〉に生きる私達はどう見えているのか。理想を叶えるために私達は今どんな行動を起こせば良いのかを問いかけるミュージカル「天翔ける風に」見応えがありましたクローバー