未来へ希望を託す。。。 | 町亞聖オフィシャルブログ「As I am」Powered by Ameba

未来へ希望を託す。。。

【芸術の秋〜忙しい時ほど心にゆとりと栄養を音譜



先月、日生劇場にて日本初演のミュージカル「ラグタイム」を観劇してきました。タイトルの〈ラグタイム〉は意図的にリズムを変えるラグや



リズムを強調するシンコペーションが特徴の19世紀末から20世紀初めに流行した音楽で、黒人が演奏したピアノ音楽が源流だそう。



音楽を手掛けるのは「アナスタシア」の作曲でも知られているスティーヴン・フラハティ氏で、日本ミュージカル界を牽引する歌上手のミュージカルスターが勢揃いラブラブ



舞台は人種差別や偏見に満ちていた20世紀初頭のアメリカ・ニューヨーク。〈次の世代が幸せで自由に生きられる世界〉を願って



行動を起こしたユダヤ人、黒人、白人と異なるルーツを持つ3つの家族が、過去から未来へ希望を託す物語です。


この作品に出るのが夢だったと語る石丸幹二さんはアメリカドリームを掴むためにラトビアからアメリカにやってきたユダヤ人のターテ役を。



希望の船に乗り夢を実現するためにアメリカを選んだはずなのに、立ちはだかる人種の壁と過酷な現実。地に這いつくばりながらも娘のために命をかける父親を熱演。



最先端の音楽ラグタイムを奏で新時代の到来を願う才能溢れる黒人ピアニスト、コールハウス・ウォーカー・Jr.を井上芳雄さん。



成功者の証であるフォードの車を手にするも、人種差別により車もプライドも愛する人までも奪われてしまい、ピアノを捨て正義のために銃を手に立ち上がります。



裕福な白人家庭の母親マザー役を安蘭けいさん。夫に従い家庭を守ることが当たり前の時代で彼女もそのひとり。ですが名前を持たない〈母親〉という役名は



人種への偏見を持つことなく、困った人がいたら迷わずに手を差し伸べる慈愛に満ち、さらにしなやかな強さも兼ね備えた女性を象徴しています。マザーのラストの選択に喝采クローバー



コールハウスの恋人サラを演じるのは「RENT」のミミ役でも素晴らしい歌声で観客を魅了した遥海さん。彼との間に生まれた我が子をマザーの家の庭に。。。



ですが彼女のこの過ちがマザーやコールハウス、そしてターテの運命をも大きく変えていくきっかけに。井上さんと歌う「Wheels Of a Dream」は全く違う声質にも関わらず素晴らしいハーモニーで



この子の時代は幸せで自由〜誇り高く生きる怯むことなく〜♪という歌詞にグッときましたが、21世紀になっても差別の無い世界を築くことが出来ていない私達は何をやっているのかと思わされます。



「人種の違いをどう表現するか」メイクアップで表現するという手法が通じなくなっている日本の演劇界。黒人はカラフル、白人は純白、移民はダークカラーグレーと衣装で違いを際立たせ



暮らし、文化、振り付け、所作などを駆使して〈人間〉を描いた演出は見事でした。井上さんも「このやり方が成立すれば『誰もが、どんな作品のどんな役でも演じられる』と勇気が湧くトライアルだ」と話していました。



物語には自身がアメリカと日本にルーツを持つEXILENESMITHさん演じる教育者や作家として活動したブッカー・T・ワシントンや



ユダヤ人アナーキストのエマ・ゴールドマン、女優のイヴリン・ネズビットやユダヤ人奇術師など実在の人物が登場しますが、物語と少しラグがあることで



固有名詞を持たない「母親」や「父親」の生きる姿がよりリアルに浮かび上がり、物語や歴史の主人公は名も無き人達であったと感じさせる効果がありました。



差別は人権を踏み躙るだけでなく心を殺す行為。そんな差別の無い社会を作るため、そして夢や希望を実現するために人生や命をかけた無名の人達のおかげで〈今〉があり



その今を生きる私達は〈未来〉のために何が出来るかを問いかけるミュージカル「ラグタイム」素晴らしい作品でしたクローバー