支配していたのは。。。 | 町亞聖オフィシャルブログ「As I am」Powered by Ameba

支配していたのは。。。


【芸術の秋〜忙しい時ほど心にゆとりと栄養を音譜


1920年代に実際にアメリカで起きた凶悪事件をベースにしたミュージカル「スリル・ミー」を東京芸術劇場シアターウエストで観劇。



今回が8度目の上演で2014年の出演から9年ぶりに尾上松也さんが登場。ペアを組むのは「東京ラブストーリー」で三上役を務めていた廣瀬友祐さん。他に木村達成さんと前田公輝さん、松岡広大さんと山崎大輝さんの3組。



「スリルを味わいたかった」という理由で少年を誘拐し殺害するという罪を犯した、2人の男〈私〉と〈彼〉の緊迫したやりとりをピアノの旋律のみで描き出していく休憩なしノンストップの100分間。



私が観たのはもちろん大好きな松也さんバージョン。松也さんが演じるのは前回と同じく〈私〉。インタビューで自分には〈私〉の要素が全くないからこそ演じ甲斐があると話していた松也さん。



監獄の仮釈放審議委員会にて34年前に何故事件を起こしたのかという問いかけに〈私〉が静かに語り始めるところから物語はスタートします。



そして場面は〈私〉と〈彼〉が19歳の頃に。2人の会話から明らかに対等な関係ではなく〈私〉が〈彼〉を絶対的な存在として崇拝していること、言われるがままに従っていく様子が手に取るように伝わります。



自らを超人だと思っている〈彼〉。彫刻のような怜悧な表情で時に冷たく罵倒し、時に耳元で優しく囁き、〈私〉を支配していく廣瀬さんに鳥肌が立ちました。



〈彼〉に逆らうことは出来ない〈私〉ですが、〈彼〉に支配されることは屈辱ではなく〈私〉にとっては快感であり、後ろから〈彼〉に抱きしめられている時の松也さんの恍惚の表情がたまりません。



焦らされるほど高まるエクスタシー。こんなに一生懸命に求め尽くしているのに〈私〉の欲求に応えてくれない〈彼〉。



荒れ狂う炎が自分を落ち着かせると〈私〉を共犯者にして放火を繰り返す〈彼〉。心の中で激しさを増していく犯罪欲求、その実行のために〈私〉は絶対に欠かせない存在。



犯罪欲求と性的欲求というお互いの欲望を満たすために犯罪に手を染めていく歪な関係の2人。最終的に〈彼〉は超人であることを証明するために完全犯罪を計画します。



少年を誘拐し殺害した〈彼〉と〈私〉。絶対にバレないと〈彼〉は自信たっぷりですが、なんと現場近くから〈私〉の眼鏡が発見され。。。




「彼にただ従っていただけ」絶対的な存在であり対等でなかった2人のスリリングな関係。果たして本当に支配していたのは〈彼〉か〈私〉か。驚きの結末はぜひ劇場でクローバー