個別化医療の時代に。。。 | 町亞聖オフィシャルブログ「As I am」Powered by Ameba

個別化医療の時代に。。。


2019年の患者数は97000人を超え日本人女性の9人に1人が罹患すると言われている乳がん。伯母や友人など私の周りでも幅広い世代が乳がんと診断されています。



長年がん医療の取材や啓発活動をしていますが乳がんの治療の選択肢も増えましたし、がんの遺伝子を調べる検査も本当に多様化しています。



そんな中でアメリカでは2004年から始まり世界でも標準的に行われている、乳がんの再発リスクや化学療法の有効性を予測する検査が日本でもようやく保険適用されましたひらめき電球



先日、開催されたこの多遺伝子検査〈オンコタイプDX乳がん再発スコアプログラム〉のプレスセミナーで、専門医と患者さんとのパネルディスカッションをお手伝いしてきました。



日本でも国立がんセンターなどで2009年から導入されてはいましたが、これまではこの多遺伝子検査は自己負担でしたので、40万から50万と費用が高額なために受ける人は限られていました。



また遺伝子検査というと女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが受けた、遺伝性の乳がんと卵巣がんを調べる検査を思い浮かべる方が多いと思いますが



この検査は一定の条件を満たしている患者さんを対象に、乳がん組織に含まれる21個の遺伝子を調べ、0から100までの数字で表される再発スコアを算出するというものです。



数値によってがんの切除手術の後に、どの程度がんが再発しやすいかの予測と、術後の化学療法の効果が期待されるかどうかを見極めることができます。



術後にホルモン療法だけ受けた人とホルモン療法と化学療法をした人を比較する臨床試験により、再発スコアが低い人は化学療法のベネフィットがないことが判明。



一方で再発スコアが高い人は化学療法の効果が期待されるという結果が出ています。必要な患者に必要な治療を、不必要な患者には化学治療を選択しないという意思決定の助けになる検査です。



ただしこの検査は再発するかしないかを断定するものではなく、また年齢や閉経なども治療に影響しますので、検査による数値をもとに医師とよく話し合う必要があります。



これまで術後の化学療法は医師の経験に基づいて実施されており、再発予防のためにと言われたら患者さんは化学療法を受けない選択はなかったと思います。



実際にこの検査を受けて化学療法を選択しなかった患者さんは、漠然とした再発の不安が〈数値〉という見える形で示めされたので、納得して治療を選択することが出来たと話してくれました。



また受験を控えていたお子さんともきちんと病気について話しが出来たそうです。主治医の先生とコミュニケーションもしっかり取れ信頼関係も築けていたとのこと。



再発に対する不安や治療への迷いだけでなくお子さんのことも先生には伝えていて、カルテに「子供が受験」と書いてくれたそう。



30代から増えてくる乳がん。ライフステージの変化と重なる人は少なくありません。これまで沢山の患者さんと向き合ってきた乳がん専門医の坂東裕子先生は



「将来、子供が欲しい」「仕事を続けたい」などひとりひとりの希望や人生に寄り添いながら、科学的根拠に基づき最善の治療を選び意思決定をサポートしています。



このように医師と患者が病気のことだけではなく、暮らしや人生において優先させたいことや価値観などの情報も共有した上で治療方針を話し合い



最終決定を患者と医師が共に行うプロセスのことを〈シェアード・デシジョン・メイキング〉と呼びます。日本語では共同意思決定と表現しますが



命がかかっているがん治療の選択は本当に悩みます。だからこそ正しい知識を見極めて、とことん考える〈患者力〉を身に付ける必要があると患者さんは指摘していました。



私がドラッグラグや未婚のがん患者さんの卵子凍結の技術に関する取材をしたのはもう20年ほど前のこと。その時からがん医療は「個別化治療」「オーダーメイド医療」の時代が来ると信じていました。



病気を治療したら終わりではありません。がんの診断から治療、そしてがんその後を生きる全てのプロセス〈サバイバーシップ〉を



より良く生きるために出来ることがまだまだあります。誰もががんになる可能性がありますので、ぜひ患者力を身に付けて欲しいと思いますクローバー