誰のものにもならない。。。 | 町亞聖オフィシャルブログ「As I am」Powered by Ameba

誰のものにもならない。。。

まだまだ暑い日が続きますが一足早く気分は〈芸術の秋〉で心の栄養を補給する観劇が目白押し音譜



先日は2019年にブロードウェイでミュージカル化された「ムーラン・ルージュ」日本初演を帝国劇場で観劇してきました。



劇中では20世紀を代表するポップナンバーがふんだんに使用されていて、ジュークボックス・ミュージカルとも呼ばれています。



日本版は松任谷由美さんはじめ総勢17名のアーティストが日本語の訳詞を担当。ちなみにユーミンが手掛けたのはエルトン・ジョンさんの「Your Song」です。



舞台となる19世紀末の夜のパリを象徴する「ムーラン・ルージュ」は今もモンマルトルで営業している実在の老舗ナイトクラブ。



劇場の中はまるでムーランルージュ。豪華絢爛でありながら猥雑さも感じさせる眩い赤を基調に、舞台の下手にはナイトクラブのシンボル巨大な赤い風車、上手側には青い象のオブジェが。



開演前から魅惑的でムーディーな音楽が途切れなることなく流れ、ハート型の枠が何連にも重なったステージ上に、スローモーションのような動きでパフォーマーたちが登場します。



ムーランルージュの客の1人になったような気分に浸っている私達を、そのまま一気に舞台の世界に惹きつけるのは、橋本さとしさん演じる支配人のハロルド・ジドラー。



夜の世界を生き抜いてきたしぶとさや胡散臭さたっぷりで、ダンディなのにコミカルなジドラーははまり役。舞台と客席を一体にするショーマスターぶりもさすがでしたラブラブ



〈ダイヤモンドの輝き〉と称されるムーランルージュの花形スターのサティーンを演じるのは元宝塚の望海風斗さん。天井からブランコで艶やかに登場。



宝塚時代から歌は抜群の上手さだった望風さんが演じるサティーンは、妖艶ではありますがどこか硬質な美しさと気高さがあり、孤独も滲む女性。



経営難の劇場を救うために裕福な貴族デューク侯爵の愛人になれというジドラーの願いを聞き入れたサティーン。ショーの後に手違いで楽屋に現れたのは



甲斐翔真さん演じる若きアメリカの作曲家クリスチャン。サティーンの魅力の虜になったクリスチャンが真っ直ぐにその想いをぶつけていく姿は危うくも眩しかった。



デューク侯爵を演じるのは伊礼彼方さん。サティーンだけでなく、ムーランルージュの全てを支配しようとし、劇場立て直しのための新作にも細かく口を出す始末。



そんな2人の板挟みになりながらも、臆さずに愛を口にし自分のために詩を書くクリスチャンにサティーンは次第に惹かれていきます。



侯爵には隠れて密かに愛し合うも、若さ故に気持ちをコントロールできず本能で行動していくクリスチャン。一方で理性的にならざるを得ないサティーン。



そんな中でサティーンの余命がわずかであることが分かりますが、愛するクリスチャンの歌を世に出したいという強い想いと



路上で身体を売って生き抜いてきた彼女にとって唯一の家族である仲間や劇場を守るために、ジドラー達に止められても自分の意思で舞台に立つことを選択。



全てを与えてくれようとして実はサティーンの自由を奪っていたデューク侯爵に「私は誰のものにもならない」ときっぱり宣言する望風さんが格好良かった。



楽屋でのジドラーとサティーンの大人の掛け合いも胸に響きました。「私のお葬式の時はうんと下品な歌うたってね」と笑顔で言うサティーンに「ああ歌ってやる」と返すジドラー。



そして「サティーン、口紅もう少し」という橋本さんの台詞も良かった。ショービジネスの世界で共に生きてきた2人の間の深い絆にも心が震えました。



切ないラストではありますが愛と夢と自由を求めて最期までステージに立ち、生き切ったサティーンは幸せだったと思います。



サティーンとクリスチャンは井上芳雄さんと平原綾香さんのWキャスト。こちらは観られませんでしたが再演があればまたぜひ足を運びたいと思いますクローバー