光と影はひとつ。。。
ファウストのモデルは実在した錬金術師ドクトル・ファウストゥスで、錬金術や黒魔術に長けていて悪魔と契約し、最後は魂を取られて実験中の爆発で亡くなったという人物。
「DEVIL」の舞台は20世紀のアメリカ・ニューヨークの証券街。前途有望だった株式ブローカーの男ジョン・ファウストの人生はブラックマンデーにより一変。
窮地に立たされているジョンに悪魔の囁きをするX-Blackと性善説をゴスペルのように語りかける天使的な存在のX-White。果たして彼はどちらを選択するのか。
X-Blackはトリプルキャストで私が観た回は韓国を代表するミュージカル俳優のハン・ジサンさん。韓国のオリジナルにも出演していて今回は全編日本語で
まるで遊びのように楽し気にジョンを弄ぶ、ハンさんの高音と低音を織り交ぜた魅惑的な歌声に、身も心も持っていかれそうでした。
そしてX-Whiteはダブルキャスト。私が観たのは中川晃教さんで、その美しい歌声は天使のイメージよりも、天から降り注ぐ神からの啓示のようでした。
愚かな人間には悪魔の囁きの方がどうしても甘美に聴こえてしまうもの。X-Blackの方が出番が多くもう少し中川さんの歌を聴きたいなと思いましたが
ハン・ジサンさんのインタビューを読むと韓国の初演ではX-WhiteとX-Black を1人2役で演じていたとのこと。悪と善を演じ分ける役は遣り甲斐がありそうです。
2人のXだけでなく苦悩するジョンを演じる東山光明さん、アンサンブルのシンガーも迫力の歌声で、畳みかけるような熱量の高いロックなサウンドが心を揺さぶります。
そんな中で、時折り舞い降りる中川X-Whiteの魂を浄化してくれるクラシック的な美しい旋律は「悪魔に魂を売り渡してはダメ」という祈りであり人間の心の叫び。
彼を支えてきた恋人役をAKANE LIVさん。変わっていくジョンに元に戻ってと懇願しますが2人の溝は埋まらず。さらに願いを叶えるという悪魔を受け入れることには大きな代償が。。。
舞台セットはゴシック調の重厚な感じで、中央には斜めに傾いた大きな十字架が設置され、その十字架や上部のスクリーンには宗教画や字幕が流れる仕掛けに。
ジョンの内心の葛藤や欲望を表現する白と黒の衣装を身にまとう〈ジョンの影〉は日本版オリジナルの役。正直この役は無くとも成立するかなと思いました
光と暗闇は本来はひとつ。光だけでも影だけでも存在することは出来ません。X−WhiteとX-Blackが試しているのは人間の心の弱さ。
極限の状況に置かれた人間は自分の人生を自らの意思で選び取ることは出来るのか。ミュージカル「DEVIL」は有楽町にあるヒューリックホール東京にてあしたまで上演しています