キャッチする力 | 町亞聖オフィシャルブログ「As I am」Powered by Ameba

キャッチする力


きのうは東京都教育庁が2016年から独自にスタートさせた〈ユースソーシャルワーカー〉のみなさんと東京都の学校で働くスクールソーシャルワーカーさんの合同研修でお話をさせていただきました。



〈ユースソーシャルワーカー〉は若者の主体的な自立を支援する「ユースワーカー」と生活や家庭などの諸問題の解決と軽減を図る「ソーシャルワーカー」の機能の両方を担う専門職で



始めは高校生の不登校や中退を未然に防ぎ、中退後も学びや仕事などに繋げることを目的にしていたそうですが、2021年からはヤングケアラー支援も加わることになりました。



「見つけて支援に繋ぐ」ためには重要となるのはやはり学校との連携で、教職員の相談に乗る「ヤングケアラー専用相談ダイヤル」も去年開設しています。



ユースソーシャルワーカーのみなさんは〈ヤングケアラー〉という言葉が認識される前から、様々な悩みを抱えた若者の支援に取り組んできました。



事例を見ると親が精神的な不調を抱えていたり、アルコール依存、虐待、ひとり親家庭、複雑な家族関係、外国にルーツがあるなど本当に様々な事情を抱えていることが分かります。



そのほとんどの家庭に共通しているのは貧困にも直面しているということ。学校の先生だけではこれらの問題に対応したり解決することは難しいことは明らかです。



そもそも何を持ってヤングケアラーとするのかという質問をいただきましたが、大事なのはヤングケアラーはこうだと定義することではありません。



障害を負った母の代わりに家のことをやるのは長女としては当たり前のことで、私にやらないという選択肢はなく、嫌だと拒否することも出来ませんでした。



ですのでもし当時「貴方はヤングケアラーなのよ」といきなり言われても「だから何?」と思ったと思います。重要なのは大人の代わりをしなければならない状況の中で



「困っていること」「制限されていること」「諦めてしまっていること」などがあるかをきちんと本人の言葉で語ってもらうことだと思います。



そしてその〈困り事〉に対してどんなサポートがあるのか選択肢を示すことが必要です。さいたま市のヤングケアラーの調査では家族の誰かをケアしている生徒約1300人のうち



「立場を変わって欲しい」と答えた生徒は少なく、「学習支援」や「進学」について相談に乗って欲しいと具体的に回答した生徒や「話しを聴いて欲しい」と思っている子が多数を占めていました。

 


研修では母親の介護で色々な制度が適用され数多くの支援が入っていたのにも関わらず、子供への学習や進学に関する支援が抜け落ちていたというケースが共有されました。



この子供が不登校だったことからユースソーシャルワーカーが介入して支援に繋がったそうです。もし不登校でなければそのまま放置されてしまった可能性のある事例です。



ケアマネジャーは介護の専門家ですが気づくことは出来るはずで、気づいた時には自分の専門外だからと線を引くことをせずに教育関係者に繋いで欲しい。



逆に学校に来られているならばヤングケアラーではないと判断する先生がいたとのことですが、これはヤングケアラーをカテゴライズすることの危険性を表していると感じます。



不登校や非行の原因がヤングケアラーだったからと後から気づくこともあり、周りにいる大人がアンテナを張り生徒達の困り事をキャッチする力をつける必要があるという意見はまさにその通り。



親が支援や介入を拒否するケースもあるとのことですが、家事や弟妹の世話など全てを私に押し付けた父は、当時何らかの支援が受けられたとしても



プライドが高い人だったので第三者の支援はいらないと言ったのではないかと思います。親の困り事を解決しなければヤングケアラーはそのまま大人のケアラーになっていく可能性があります。



またどんな親であっても親が好きだから見捨てられないと話す生徒もいます。18歳の私は父のことは心の底から大嫌いでしたが、母や弟妹をやっぱり放っておくことは出来ませんでした。。。



ヤングケアラー支援で重要なのは子供だけでなく親や家庭への支援を同時にすることだといつもお話していますが、ユースソーシャルワーカーはそんな親とヤングケアラーとの架け橋にもなってくれる存在です。



そんなユースソーシャルワーカーさんが重ねてきた実例は、ヤングケアラーをどうやって支援したら良いのか悩んでいる全国の学校、福祉、介護、医療現場の参考になるはず。



ヤングケアラーに関する講演や都立高校での授業もまだまだ続きますので私も今回の気づきを活かしていきたいと思いますクローバー