温かくて柔らかい。。。 | 町亞聖オフィシャルブログ「As I am」Powered by Ameba

温かくて柔らかい。。。

人権教育啓発推進センターが発行する月刊誌「アイユ」の取材で俳優の宇梶剛士さんにインタビューさせていただきました。


ドラマ「ナンバMG5」では元ヤンキーの父親役で堂にいった演技を魅せてくれましたが、悪役は沢山演じてきたけれど実はヤンキー役は初めて!?だったとのこと。



アイヌにルーツを持つ宇梶さんは現在はアイヌ文化の復興や発展の拠点となる北海道白老町の国立施設「民族共生象徴空間(ウポポイ)」のPRアンバサダーを務めています。



アイヌ出身であることで差別を受けたのはご自身は1度くらいと話されていましたが、宇梶さんの母親で詩人の宇梶静江さんは生まれ育った北海道で言われなき様々な差別を受けた経験を持っています。



人生を活動に捧げていた静江さんはアイヌの解放運動の先駆者的存在。宇梶さんが幼少期の頃はほとんど家におらず、小さな頃はお姉さんと2人完全に放置されていたそうです。



また父親は差別がない人で妻の活動にも理解がありましたが、建築士の仕事が忙しく年単位で帰ってこないことも。両親が不在の中で宇梶さんの家には、困窮したアイヌの〈ウタリ(同胞)〉が身を寄せていたそう。



他人と暮らす日々の中で「愛されていない」と親に対して不安、疑問、怒りなど複雑な思いを抱えていた少年時代を送った宇梶さん。



荒れていた高校生の時に叔父に北海道へ連れて行かれ「アイヌは人に迷惑をかけない。ここで撃たれるか、北海道で働くか、選ばせてやる」と迫られます。



この叔父さんは浦川治造さんという方で東京アイヌ協会名誉会長を務めていて、アイヌの長老として知られる著名な存在です。



宇梶さんの家にはアイヌの着物など身近にアイヌ文化があったそうですが、この叔父さんが狩猟で仕留めた大きな鹿の角も。1日に2頭仕留めたのは俺だけだと自慢していたそう。



宇梶さんは2007年に立ち上げた主宰劇団「PATHOS PACK(パトスパック)」で従軍慰安婦、原爆、自殺、ホームレスなど様々な社会問題をテーマにした舞台を創ってきましたが



2019年にルーツであるアイヌ文化を取り上げた舞台「永遠ノ矢=トワノアイ」を上演。コロナの影響で公演数が制限されましたが、舞台を映画にした劇場版も公開され私も拝見しました。



実は1度アイヌを取り上げた時があったそうですが、アイヌの文様の扱いがぞんざいで悲しかったとウタリに泣かれてしまったという苦い経験が。



当事者でありながら同胞を傷つけてしまった宇梶さん。他者を理解するということはずっと終わらない作業であり自分の頭で考え続けることの大切さを忘れない原点に。



時を経て「今書かないと2度と書けない」と現代の場面を増やした形でアイヌをテーマにした舞台「永遠の矢」を再び東京や北海道などで上演することに。



言葉や文化を奪われアイヌとして生きることを禁じられた「過去」と都会で生まれ育ったアイヌの若者の葛藤を描いた「現代」が交錯しながら物語は紡がれていきます。



アイヌは文字を持たないのではなく大切なことを大切な人に伝えるために〈言葉〉があり、〈カムイ〉が宿る言葉は何より重たいものなのです。



例えば挨拶で使われる「イランカラプテ」は"貴方の魂にそっと触れさせて下さい"という挨拶を超えた深い意味を持ちます。



「アイヌは人に迷惑をかけない」と言った叔父をモデルにした"トワ爺"役を宇梶さん。トワジイとは「○○とは?」と常に問い続けることから。



アイヌ語さえ知らない若い世代に「暗闇は始めから存在する。見ようとしなければ見えない」そして「自分で考えろ。決めるのは自分だ」と語りかけるトワ爺。この言葉は宇梶さんは自分に言い聴かせているのかもしれません。



「人間が人間にああいうことをした」アイヌへの過酷な差別の歴史を無かったことにしてはいけないと語る宇梶さん。アイヌとは〈人間〉を意味する言葉。



人間は本来〈温かくて柔らかい〉ものだということを忘れずに、今を生きる人間として次の世代に何を残し伝えていくのか考え続けていきたいと優しい笑顔で話してくれました。



また詳しいインタビューの内容は冊子が出来たお知らせします。人権教育啓発推進センターが発行する月刊誌「アイユ」はこちらから☞


http://www.jinken.or.jp/information/jigyou/allyu