永遠の愛に生きる。。。 | 町亞聖オフィシャルブログ「As I am」Powered by Ameba

永遠の愛に生きる。。。

19世紀のオーストリアで実際に起こった皇太子ルドルフと男爵令嬢マリーの悲恋の物語をミュージカル化した宝塚花組の「うたかたの恋」を姪っ子と観劇してきました音譜



「うたかたの恋」は宝塚歌劇を代表する名作のひとつで全国ツアーでは何度も再演されていて、1983年の初演から40周年となる今年30年ぶりに大劇場の舞台に蘇りました。



「太陽の沈まない国」とまで言われるほど繁栄したヨーロッパ最大の王朝ハプスブルク家。ですがマリー・アントワネット、エリザベート、ルドルフ



そして後を引き継いだフェルディナント夫妻と死神にいざなわれるように一族は悲劇の運命に飲み込まれていきます。



皇太子ルドルフといえば「エリザベート」ですが、2014年に「エリザベート」でルドルフを演じた花組男役トップスターの柚香光さんが9年ぶりに演じます。



憂いをおびた美貌で哀しみの影がある柚香さんはルドルフははまり役。今作では単なる王子様ではなく国を背負う皇太子として生きる孤独、葛藤、渇望を繊細に表現し、人間ルドルフが浮かび上がるようでした。



幕が開くと目に飛び込んでくるのは真っ赤な赤絨毯で覆われた大階段。そこには白軍服の柚香さんと純白のドレスの星風まどかさんの姿が。華麗なダンスを繰り広げる2人に襲いかかる2発の銃声。



悲劇の予感しかないプロローグから豪華絢爛な舞踏会のシーンへ。父オーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世と母エリザベート妃、そして皇太子妃が揃う中で、マリーにダンスを踊って下さいと申し入れるルドルフ。



まるで周りには誰も存在しないかのように見つめ合い愛を確かめる2人。まさに幸せの頂点と思いきや。。。この場面が全く違う意味を持つことが後に分かります。



ハプスブルク家を背負う重責を表しているのがプロローグの大階段に敷かれた赤絨毯にも描かれていた〈大きな双頭の鷲〉ハプスブルク家から羽ばたくはひとつのキーワードに。



母エリーザベトの影響を受け自由主義的な考えを持っていたルドルフは、父の保守的で時代遅れな思想とは相容れず激しくぶつかり合っていました。



似た者同士でありながら家族を顧みずに逃避の旅を続けていた母もルドルフの拠り所にはならず。また妻とは政略結婚で2人の間にも情が通うことはありませんでした。



「ハプスブルクを出るには羽ばたく力をくれるかわいい恋人が必要だ。」というルドルフの台詞がありますが、常に自分に足りないものを求め続けていたルドルフが若く可憐な男爵令嬢のマリーに惹かれるのは必然。



今作で花組を離れ前科に移る水美舞斗さんが演じるのはルドルフの親友で従兄弟のジャン。彼には身分の違いを超えて睦み合う恋人のミリーがいます。



そんな2人が新しい世界に羽ばたく夢をルドルフが見る場面があり、次期後継者として自由に生きることができないルドルフがジャンの生き方に憧れているのが伝わってきて切ない。



水美さんが素晴らしい演技を見せたのは夫と若き恋人への嫉妬に駆られるルドルフの妻からマリーを守るダンスシーン。台詞はないもののジャンの心の声が痛いほど伝わる名場面でした。



〈青春の輝き〉エリザベートがルドルフと密会しているマリーと偶然対面した時の呟きです。殿下のそばにいられるだけで幸せと星風さんが10代の汚れなき初々しさを全身で演じていました。



ルドルフが探し求めていた〈小さな青い花〉マリー。家族から外出を止められたマリーと会えない日々をお酒で紛らわせ、乱れた軍服姿でやさぐれるルドルフも素敵でした。



自暴自棄になりそうになるルドルフの元に駆けつけ一生そばにいると告げるマリー。母に縋るよう膝に顔を埋めるルドルフを包み込むマリーは慈愛に満ちた母のよう。



また永久輝せあさん演じる同じく従兄弟のフェルディナンド太公も身分に縛られない結婚を選択しています。フェルディナンド夫妻の悲劇はこの舞台の中では描かれていませんが



恋人と一緒になるためには貴方が皇帝にならない限り未来はないと迫られ、ルドルフを追い落とさなければならない苦渋を丁寧に表現していました。



悲劇の舞台となった雪が降るルドルフの山荘マイヤーリンク。無邪気にかくれんぼをする2人に悲壮感は微塵もなく。純白のベッドで眠りにつこうとするマリーが呟く思い出の数々。



「私たちのあのワルツ」「サファイアの指輪」「三日月の髪飾り」。。。短いワードですが束の間を充分に生き切った2人の姿が鮮やかに蘇ります。



〈死ののちまで 愛によりて 結ばれん〉と刻まれた指輪をマリーに贈った時に、すでに今生では決して結ばれることはないと覚悟していたルドルフ。



そして「将来という言葉を口にしてくれただけで幸せ」とルドルフに語りかけたマリーにも2人の行く末が悲劇であることが分かっていたはず。



そしてマイヤーリンクの場面の前に幕開けの舞踏会のシーンが繰り返されますが、2人のダンスの意味合いが深く突き刺さり、全く同じなのに激しく心が揺さぶられる見事な構成。



マイヤーリンクの白雪の中で白軍服と純白のウェディングドレスの2人が登場する本当に美しいラスト。愛し合う2人が最高の瞬間で時を止め〈永遠の愛〉を選んで旅立つのは宝塚ならでは。



実はコロナの影響で花組の舞台は2作品も見逃していたので今回は観劇できて良かったです。宝塚花組ミュージカルロマン「うたかたの恋」堪能させていただきましたラブラブ