後輩にバトンを。。。 | 町亞聖オフィシャルブログ「As I am」Powered by Ameba

後輩にバトンを。。。

再開されることを信じて待ちに待っていた若手歌舞伎役者の登竜門である「新春浅草歌舞伎」が3年ぶりに浅草に帰ってきましたクラッカークラッカー



江戸三座が並び立った猿楽町があった浅草の地に1980年に復活したのが「新春花形歌舞伎」。その舞台に立っていたのはまだ当時2030代だった吉右衛門さんや勘三郎さん達。



「そんな先輩達が繋いできた浅草歌舞伎を自分達の代で無くしてしまうわけにはいかない。後輩にバトンを渡さなければ」と若手リーダーの尾上松也さん。



テレビドラマで観ない日がないぐらい大活躍の松也さん。梅丸から名前が変わって初出演となる中村莟玉さんと第2部の「連獅子」で共演。血縁ではない連獅子が観られるのは浅草ならでは。



歌舞伎の世界に入る前から連獅子に憧れていたという莟玉さんは「自分にはチャレンジする機会はないと思っていたのでとても嬉しい」と話していました。



これまで公演を引っ張ってきた責任感が松也さんを大きく見せていましたし、親が子を想う情感もしっかり伝わってきました。莟玉さんとの実際の体格差もぴったり



2人とも初役とは思えない出来栄えで、気迫溢れる毛振りはこれでもかというぐらい頭を振っていて、客席からは割れんばかりの拍手が送られていました。



吉右衛門さんが亡くなってから初めての浅草歌舞伎。第2部「傾城反魂香」の浮世又平役を演じる中村歌昇さんは、吉右衛門さんに教わったものを残った播磨屋のメンバーで引き継いでいくことが使命だと語っています。



吉右衛門さんの「傾城反魂香」を観たことがありますが、上手く言葉が話せずに出世が叶わない悲哀の中に、絶妙な塩梅で剽軽さを滲ませる必要がある又平は難役。



また弟の種之助くんがこちらも演じるのが難しい三女房と言われる又平の女房おとくを。拙い言葉に身振り手振りを交え必死に師匠に哀願する又平とおとく



おとくが亭主に代わりしゃべり倒すのは全ては亭主を盛り立てるため。ですが簡単に苗字を名乗るのを許されるわけもなく。切腹を覚悟する又平の「もし上手くしゃべれたら。。。」という悲痛な叫び。



まだ台詞をこなすのに精一杯な感じではありましたが、「今の歳でできる勉強してきた確かなものを形にできたらと」と種之助さんが言っていたように



その懸命さが夫婦の真っ直ぐさに繋がっていて、また成長した歌昇さん種之助さん兄弟の「傾城反魂香」を観たいと思いました。



坂東流の家元としての責任を背負い第1部「男女道成寺」の白拍子桜子実は狂言師を演じるのは巳之助さん。面立ちはお父さんにはあまり似ていないのに3枚目の役柄を演じるとやっぱり亡き三津五郎さんを彷彿とさせます。



一緒に白拍子花子を演じたのは坂東新悟さんで、客席からは「ほら鎌倉殿の彌十郎さんの息子さん」という囁きが聞こえてきましたが、新悟さんは期待の若手女方の1人。



色香があり迫力のある役も出来る尾上右近さん、可愛らしいお姫様からはすっぱな役まで演じる中村米吉さん、普段は体育会系なのに見事な女方に化ける児太郎さんなど。



そんな中で女方としては背が高い新悟さん。少し控え目な感じの健気で直向きな役柄からスーパー歌舞伎などでは振り切った役もこなせる魅力ある役者さんです。



席が前の方だったので後見さんと息を合わせて衣裳を舞台上で一瞬で替えるハラハラドキドキの「引き抜き」の様子が良く見えました目



そして第1部「引窓」では濡髪長五郎を演じた中村橋之助さんが良かった。お手本はもちろんお父さんの芝翫さん。三津五郎さんの与兵衛(南方十次兵衛)と芝翫さんの「引窓」を子供の頃に観ていたそう。



力士という見た目だけではない大きさを父から感じたという橋之助さん。「まとう空気が変わったな」と思ってもらいたいと語っていましたが、ハッとするほど凛々しく骨太な佇まいの濡髪に惚れ惚れしました。



母親の愛情や十次兵衛夫婦の恩情に胸を熱くしながらも義理が大事と人の道を説き自ら捕まろとする複雑な心情も丁寧に演じていました。もう少しセリフに緩急があればと感じましたが口跡は明確で聞きやすかった。



南方十次兵衛を演じるのは中村隼人さんで片岡仁左衛門さんに教えてもらったそう。亡き父と同じ代官の任に就くことになり立派な侍姿で登場するも嬉しさを隠しきれずウキウキした様子は微笑ましく



一方で濡髪を捕まえなくてはならない使命と濡髪を逃がしたい義母との狭間に置かれた心境もしっかりと演じていました。欲を言えば様式を大切にしながらも、演技を感じさせないさり気なさを身に付ければもっと良くなるはず。



3年ぶりの新春浅草歌舞伎で感想が熱くなってしまいましたおーっ!あせるあせる(いつもか!?)舞台に立てる喜びが伝わる若手の躍動をぜひ劇場で体感して欲しい。浅草公会堂にて今月24日まで上演していますクローバー