狂気と滑稽は紙一重。。。 | 町亞聖オフィシャルブログ「As I am」Powered by Ameba

狂気と滑稽は紙一重。。。

池袋の東京芸術劇場にて佐々木蔵之介さん主演の舞台「守銭奴 ザ・マネー・クレイジー」を観てきましたキラキラ



今年はフランスを代表する劇作家モリエールの生誕400年にあたりこの「守銭奴」はフランスではシェイクスピアより有名と言われる作品。



"ルーマニアの蜷川"とも称される演出家シルヴィウ・プルカレーテ氏と佐々木さんがタッグを組むのは2度目




2017年に上演された前作「リチャード三世」も観ましたがグロテスクでありながら魅惑的なリチャードを演じていた佐々木さん。リチャード世は異形の悪人でしたが今回は〈狂気〉を孕んだ金の亡者アルパゴン。



天井を高く使った白を基調にしたシンプルな舞台セットはゆらゆら揺れる布の壁を動かすことで場面展開。幕開けはアルパゴンの娘エリーズが不協和音のように調子が外れた小さな笛を吹き続けるシーンから。



アルパゴン家の執事を務めるヴァレールとのやりとりから激しく愛し合っていることが分かりますが絶対に2人の仲を父が認めるはずがないと嘆くエリーズ。



そして竹内將人さん演じる兄クレアントも恋をしていてその人と結婚したいと思っているがお金が必要でこれまで自分の人生を縛ってきたドケチな父親が許すはずないとこちらも悲壮な様子。。。



子供達に極度の倹約を課している父アルパゴンは腰は曲がりお金持ちとは思えない色褪せた服装にさらになんとハゲヅラ姿!?思わず佐々木さんはてなマークと目を疑う容姿で唸らされる見事な登場でした。



使用人にも自分の子供にさえお金をかけず信じられるのは「金、金、金」というアルパゴン。娘には持参金が付いてくる老人を結婚相手に選び自分はよりによって息子が惹かれているうら若き女性と再婚すると真顔で告げるアルパゴン。



何とかして父と愛するマリアーヌの結婚を阻止したい兄と身分の差という壁を超え恋を成就させたい妹はモンスターと言っても言い過ぎではないクレイジーな父親を説得できるのか。



常に自分のお金は狙われていると猜疑心の塊のアルパゴンとそんなアルパゴンからお金を引き出そうとするそれぞれの登場人物とのやりとりはヒリヒリしながらも何処かユーモアが。



コック兼御者役の長谷川晴朝さんは勝手にフィアンセと決めつけているマリアーヌを招く食事会の料理をとことんケチるように命じられさらに馬車をひく馬にも餌を与えるなと言われたり。



マリアーヌとの結婚を成立させおこぼれに預かろうとあの手この手の嘘をつく壤晴彦さん演じる老婆フロジーヌやまともに話しが通じない



アルパゴンの言うことに"ごもっとも"を繰り返して機嫌を取り娘との結婚を認めてもらおうと必死になる執事ヴァレール。



1周回って笑えるぐらいチャーミングに見えればいい。けったいなじいさんに巻き込まれてみんな大変だと笑ったてもらえたら」と話す佐々木さん。



ですが〈狂気〉と〈滑稽〉は紙一重。常軌を逸した倹約に振り回され呆れ果てる家族を含めた周囲の人々。けれどもアルパゴンだけは大真面目でおかしみも感じさせながらやっぱり切ない。



1人の女性を父親と奪い合う形になった息子役を演じる竹内くんも「蔵之介さんの目に本当にアルパゴンの狂気が宿っていて何かよくわからない父親の狂気に対峙して実際に恐怖を感じながら演じている」と語っています。



そんな恐怖を克服しながら父親に真っ直ぐ向き合い次第に自分の意思をはっきり口にするようになるクレアントの姿は微かな希望に。



また妹のエリーズも手にする楽器が徐々に大きくなり奏でる音色がしっかりし言葉の代わりに自己主張しているようでした。



2部の舞台は屋敷の外へ。アルパゴンが大事な大事なお金を埋めてある場所のあまりにも殺伐とした様子はまるでアルパゴンの心象風景のよう。



「俺の大事なものを盗んだ」という濡れ衣を着せられた執事のヴァレールは〈大事なもの〉を勘違いしながら噛み合わない会話をアルパゴンと繰り広げます。



アルパゴンが娘と結婚させようと企んでいたお金持ちのアンセルム(壤さんが二役)が現れてヴァレールの生い立ちやマリアーヌとの意外な関係が明かされますが奇抜な演出で



蜷川さんの「お気に召すまま」に登場した巨大福助を思わず思い出した私。2組のカップルが結ばれるように仕組んだお芝居かと思いきや原作を調べると作り話ではなく事実。



小さな宝箱を慈しむように胸に抱き子供や使用人に見守られながら舞台奥に1人消えていくアルパゴン。信頼できるのはお金だけの哀しき老人の姿は憐れで最後まで滑稽でした。



佐々木蔵之介さん主演の舞台「守銭奴 ザ・マネー・クレイジー」は今月11日まで池袋の東京芸術劇場で上演していますクローバー