人間の可能性に気づく
このデイサービスで取り入れているのは〈エクササイズで人生を変える〉を理念に掲げ精神疾患など障害と向き合う人にエビデンスに基づいたエクササイズ。
考案したのはケアスマイル青森の大里洋志くん。大里くんのただ単に身体を鍛えるだけではなく身体を変えるために脳を変えるという発想は実は理に叶っています。
長年、研究発表のお手伝いをしてきたサイバーダインの山海喜之先生が開発した歩行が困難と思われている難病や脳卒中の患者さんなどを対象とした治療機器として使われているロボットスーツ〈HAL〉の原理は
人間が体を動かそうとする時に脳から筋肉に対して出される微弱な電気信号を活用するというもの。例えば私の母のように右半身が麻痺していても
頭でその動かない右足を上げるとイメージするとHALが脳から出た電気をキャッチして足を上げる動作をサポートします。
またニッポン放送「ひだまりハウス」でも紹介した本山輝幸さんが考案した「本山式筋力トレーニング」は認知症や軽度認知障害の人が筋トレをしても辛さや痛みを感じにくくなっていることに着目したトレーニング。
強めの筋トレを繰り返すことで生き残っている脳細胞を活性化し脳と感覚神経を繋げることで再び痛みを感じるようにするもので軽度認知障害(MCI)の人の多くで認知機能が大幅に改善したという結果も。
格闘家でもあり柔道整復師の資格を持つ大里くんの障害など様々な条件下に適応できる身体的精神的な能力を向上させるエクササイズの可能性の話はもっと聴きたいと思いました。
私の介護の出発点は重度障害を負い車椅子の生活になった母と住み慣れた地域や我が家で当たり前の暮らしをどうやったら送れるかでした。
障害者や家族にとって〈当たり前〉が当たり前でなかった今から30年前は街中はバリアだらけでしたし私達が母と一緒に外出をしていると知らない人から「偉いわね」と声をかけられました。。。
1990年代はまだ車椅子用トイレは普及してませんでしたので何処かに母を連れて行く時には目的地に電話をして洋式のトイレがあるかを確認をする必要がありました。
また車椅子用トイレがあっても障害のない人が大行列を作っているような状況で車椅子の母を見て「あらそうよね。。。」と呟いた女性が言おうとしたのは「車椅子の人も来るのね」という言葉。
家族が介護をすることが当たり前の時代でしたので第三者の手を借りることも出来ず心のバリアフリーにはほど遠い社会環境の中で私達家族は必死に生きていました。
本当に小さな小さな働きかけではありましたが車椅子の母と私達家族がバリアを気にせずに何処にでも足を運んだことが気づきのきっかけになっていたらと思います。
デンマークのバンク・ミケルセン氏が〈ノーマライゼイション〉の概念を提唱したのは1959年のこと。今から60年以上も前に障害のあるなしに関係なく共生する社会の実現を目指そうと動き出していたのです。
去年、日本で東京パラリピックが開催されたにも関わらず未だに「共生社会を目指す」という言葉を耳にすることに私は違和感をずっと持っています。
「失われたものを数えるな。残されたものを最大限に生かせ」というパラリピックの精神は私が母と共に生きている時に心掛けていた「出来ないことではなく出来ることを」とまさに同じでした。
すでに共生しているこの社会で障害のあるなしに関係なく人間の可能性に気づき伸ばして行くことが出来る居場所がもっと増えますように。。。