人間の尊厳を取り戻す | 町亞聖オフィシャルブログ「As I am」Powered by Ameba

人間の尊厳を取り戻す

介護付きホームが日々取り組んでいるケアを向上させるための事例を発表する〈介護付きホーム研究サミット2022〉今年は記念すべき10回目でしたひらめき電球



コロナ禍のため2020年はオンライン配信に挑戦し、今年は去年と同様にハイブリッド開催でしたが今回は発表者以外の参加も可能になりましたキラキラ



デジタル化が遅れている介護業界ですがコロナ禍でリアルに集えないというピンチが逆にデジタル技術の活用を進めるチャンスに。



全国から応募のあった事例から10ホームが優秀賞に選ばれさらにその中からグランプリと準グランプリが決まりましたが



グランプリに選ばれたのは「介護付きホームだからこそできる寄り添うケア〜経鼻栄養から経口摂取へ、QOLが向上した事例」です。




「もう何も出来ない」脳出血の後遺症でリハビリ病院に入院していた92歳の女性と家族に対して医師がかけた言葉です。


認知症の診断も受けていたこの女性はリハビリ病院では寝たきりに。経鼻栄養のチューブを抜いてしまったり1日中苦しそうに「カーカー」と叫んでいたそう。



このままでは母が忍びないというご家族の想いを受け病院から介護付きホームへ。スタッフの呼びかけに反応があることからコミュニケーションが取れると判断。



経鼻栄養を止めて医師の指示の下で胃ろうを補助的に活用し同時に経口摂取の訓練を始めました。尿意もあり自分でトイレに行きたいと意思表示も出来た女性。



嚥下機能ももちろん大丈夫でプリンを食べられた時は美味しいと言葉を発しコミュニケーションも可能になりました。



「カーカー」という言葉にならない女性の叫びをしっかりとキャッチし適切なケアにより〈生きる力〉と〈人間の尊厳〉を取り戻すことが出来ました。



もしこの女性が病院に入院したままだったとしたら。しかも拘束により身体の自由を奪われ人間としての尊厳をも蔑ろにされた状態で。。。



病院での不適切な安静や禁食、また適切なリハビリや栄養管理が行われないために起きる〈医原性サルコペニア〉は本当に無くしていかなければなりません。



「もう何も出来ない」は患者さん本人ではありません。そのことはこの事例からも明らかです。医療の限界を自覚し病気を治しても寝たきりにする医療を見直す時が来ています。



もっと早い段階で意思疎通できることを確認するべきであり口から食べられる人に経鼻栄養をするのは明らかに医療の判断ミスです。



ケアの現場だから可能になった人間の尊厳を回復した事例はもっと医療サイドにフィードバックするべきだと今回も強く感じました。



他にも高齢者が寝たきりなってしまう原因のひとつ〈転倒〉。ゼロを目指すのではなく本人の想いを第一に考えて自立した暮らしを維持するために環境を改善することでリスクを限りなく軽減した事例や



ペットに会いたい、故郷のお茶を飲みたい、自分で植えて収穫した焼き芋を食べたりと悔いのない終末期を過ごしてもらうために本人のささやかな願いを丁寧に聴き取り家族と協力しながら看取りに取り組んだ事例も。



最期まで自分の口から食べられることは笑顔と健康に繋がると歯科衛生士と連携し介護職が日々の口腔ケアに力を入れたホームではスタッフに自信と自負が芽生えたそう。



また今回はデータに基づいて仮説を立て課題を解決しようという事例がいくつかありましたがこれは科学的根拠に基づいたケアが求められている流れを受けたもの。



2021年に利用者の基本情報やケア内容などのデータを登録し集められたデータを分析しケア改善に関するフィードバックを行うという〈LIFE〉という新しい情報システムが厚生労働省により導入されました。



このLIFEを活用することで経験の浅い介護スタッフでもしっかりと科学的根拠に基づいた介護ができるようになりケアの質の向上に繋がるとされていますが重要なのはデータを読み解く力です。



医療の世界でも1990年代にEBM〈科学的根拠に基づく医療〉が提唱されましたが今は患者1人ひとりに合わせた個別化医療の実現を目指しています。



介護現場ではすでに個別ケアが実践されていますのでデータは大切ですが数字に翻弄される必要はありません。データを上手に活用しながら数字の先にある人間の可能性を引き出すケアをして欲しい。



事例発表は単に素晴らしいことをしたと自画自賛するのではなく目の前の1人の人間に真摯に向き合いどうしたら課題を改善できるかを全員で考え実行した結果です。



そのプロセスを共有することに大きな意味があります。私がよく使う言葉ですが。。。今を変えなければ未来は絶対に変わりません。



より良いケアを目指し未来のために努力し続ける〈介護付きホーム研究サミット2022〉で優秀賞を受賞した事例はこちらから見られます☞


https://www.kaigotsuki-home.or.jp/schedule/2022/335