女の闘いは続く。。。 | 町亞聖オフィシャルブログ「As I am」Powered by Ameba

女の闘いは続く。。。

渋谷Bunkamuraシアターコクーンにて舞台「血の婚礼」を観てきました。スペインの劇作家フェデリコ・ガルシーア・ロルカの名作戯曲で実際に起きた事件が元になっているそう。



結婚式の日に花嫁が元恋人と駆け落ちし凄惨な殺人にいたるという救いのないストーリー。「女が生きてる限り闘いは続く。。。」



物語の核心をつく言葉を呟くのはかつて夫と息子を殺された母親。喪服のような衣装を身に纏った母親を演じるのは安蘭けいさん。



皮肉なことに残されたもう1人の息子は家族を殺した一族のレオナルドとかつて付き合っていた娘と結婚することに。



葡萄畑に行くからナイフをと言う息子になかなかナイフを渡そうとしない母親。ナイフは男性による暴力の象徴でありもうこれ以上家族を失いたくないと訴えます。



それなのに結婚する息子には花嫁を従わせる方法やあちこちに子供を作った祖父のような男らしい男が良いと息子に語りかける母親。



過去に囚われながら伝統的な男らしさを息子に押し付けようとする矛盾。そんな男性像とは全くかけ離れた親孝行で人の良さそうな息子役を須賀健太さん。



結婚したら花嫁との間にたくさん子供を作りなさいと言う母親に素直に頷く息子。母親と一緒に花嫁の父親に挨拶に行った時にも手にいっぱいプレゼントを抱え控え目な様子。



ただ1人名前を持つ木村達成さん演じる花嫁の元恋人のレオナルド。少し影があり気性の激しい馬も乗りこなす花婿とは対象的な男らしい男。



恋人だった花嫁の従姉妹と結婚しすでに父親になっているにも関わらず実はずっと花嫁のことを想い続けていて妻とは上手くいっていないことは一目瞭然。



そして花嫁を演じるのは早見あかりさん。花婿の母親の前では従順な様子でしたが婚礼の日の朝にレオナルドが現れて激しく心を掻き乱されます。



私は結婚するのと拒絶すればするほど心が強く惹き合っていくのが伝わる2人のヒリヒリしたやりとり。そんな2人をよそに結婚式は粛々と進んで行きます。



黒いラインが数本入った窓も扉もない白い壁で囲われた舞台。閉塞感に満ちていますが足元を見るとスペインを想起させる赤土が敷き詰められ天井には剥き出しの照明が。



役者は衣装の上からそれぞれデザインの違う黒い革のハーネスのようなベルトを重ねて着ていてまるで人生を拘束する鎖のように見えました。



婚礼の日の悲劇はこの土地に生きる者の避けられない宿命なのか。手に手を取って呪縛から逃れるように森の中を彷徨うレオナルドと花嫁。



2人を追いかけようとする息子を母親は一瞬引き止めようとしますが思い直して行きなさいと背中を押す。これから起きるであろう悲劇を予想できたはずなのに。。。



2幕は壁は取り払われて舞台上には赤土の山と木々。どちらが先に逃げようと言ったのかは分かりませんが結婚して子供を産むことを周囲から期待されていた花嫁が



レオナルドに対して「貴方とはベッドも共にしたくない、でも愛している」と言っている場面が印象的で心が求めて止まない情愛に突き動かされた逃避行だったことが伝わってきました。



前半とは全く別人のような形相で2人を追いかける花婿。花嫁を巡って赤土にまみれながらレオナルドと揉み合う花婿もまた血を流さざるをえない暴力の連鎖に巻き込まれていく。



〈男らしさ〉や〈女らしさ〉というジェンダーに囚われ男は大地に血を流して命を落とし女は哀しみを抱き生きる。愛する者を全て失う運命を受け止めなお強く生きる母親に縋る残された花嫁。。。



〈こうあるべき〉という自分で自分を縛る固定観念はなかなか捨てられないもの。現代に生きる私達も果たして本当の自由を手に出来ているでしょうか。



宿命から逃れられない人々を描いた舞台「血の婚礼」はBunkamuraシアターコクーンにて来月2日まで上演していますクローバー