人生を生き直す。。。 | 町亞聖オフィシャルブログ「As I am」Powered by Ameba

人生を生き直す。。。

大学生の時にバイク事故に遭い記憶喪失になった草木染作家坪倉優介さんのノンフィクション「記憶喪失になった僕が見た世界」を原作にしたミュージカル「COLOR」を新国立劇場で観劇音譜



記憶喪失により自分の過去、母親のこと、好きだったこと、物に名前があることさえ忘れてしまった〈ぼく〉こと草太。



ご飯を食べること、食べればお腹がいっぱいになること、夜寝ることなど人間として生きていく上で当たり前のことを再び学び直していく〈ぼく〉と



〈大切な人たち〉をWキャストで演じるのは浦井健治さんと成河さんで私が観た回は成河さんバージョンです。草太を1番近くで辛抱強く見守り続ける母親を演じるのは濱田めぐみさんと柚希礼音さん。


『メリーポピンズ』『オリバー』とは全く違う顔を魅せてくれた濱田さん。王女からエプロン姿の母親までその演技力の幅の広さに感服キラキラ


生まれたての赤ん坊のように目に映るもの全てが新しく不思議でたまらない草太は「どうしてどうして」と母親を質問攻めに。



1番辛くてもどかしいのは全ての記憶を失ってしまい思うようにいかないことばかりの草太がですが忘れられてしまった家族もまた切なくて哀しいです。



〈人生を生き直す〉を家族として経験した私にはお母さんの気持ちがよく分かります。くも膜下出血で倒れた母は重い後遺症のため言葉を失いました。



草太のようにひとつひとつの言葉を覚え直していく作業を積み重ねていった母。実は意識を取り戻した直後に一瞬私の名前を言えなくなってしまったことがありました。



その時の衝撃は言葉では言い表わせませんが〈出来ないことではなく出来ることを数える〉という発想の転換をしてゼロからのスタートと覚悟を決めました。



退院したばかりの頃は周りから取り残されたみたいに不安そうな表情をしていた母も出来ることが増えていくにつれ覚醒していきましたが成河さんが繊細に演じる草太にそんな母が重なりました。



大きく枝を広げる大木をイメージさせる白い石膏のような素材で作られたセットに映し出される意味をなさない文字は草太の頭の中に散らばる言葉。。。



日常生活でさえままならない日々の中で事故に遭ったからを言い訳にしてしまう草太でしたが全身全霊で息子と向き合う母の涙に触れ「とりあえずやってみる」と自らを奮い立たせます。



「自分だけが違う」と悲しそうに呟く記憶を取り戻せない草太に紅葉した葉っぱも11枚色が違っていて人も同じで貴方は貴方で良いのよと語りかける母親。



草木染に落ち葉や枯れ木など伐採されたものや廃材を使って色を生み出す草太。生命を吹き込む作業は自分が新たに生まれ変わっていく道のりと一緒。



一粒一粒が白く輝くご飯を口にして〈嬉しい〉と表現できる草太。大学にいる楽しそうな学生を見て〈嬉しい〉と感じる草太。人間は感情の生き物と言われますが心が動くことが大切だとハッとさせられました。



人はどうしても過去に囚われてしまいますが記憶喪失を乗り越えて自分のCOLORを見つけていく草太の姿に〈今〉を丁寧に生きることが大事だと教えてもらいましたクローバー



楽曲を手がけたのは植村花菜さんでピアノの旋律も美しくて切なくて優しい曲ばかり。さらにセリフから歌へ、歌からセリフへの流れがとても自然で音楽の力を感じる作品です。



歌唱力抜群のキャストが語りかけるように言葉を紡ぎ音楽を奏でる新作ミュージカル「COLOR」は新国立劇場にて今月25日まで上演しています音譜