今しかできない。。。 | 町亞聖オフィシャルブログ「As I am」Powered by Ameba

今しかできない。。。

市川染五郎くんが歌舞伎座初主演ということで六月大歌舞伎第二部の「信康」を観てきましたキラキラ「信康」が上演されるのは96年に新之助時代の市川海老蔵さんが演じて以来26年ぶりひらめき電球



天下を手にするためには政略結婚も当たり前であり身内さえ人質に差し出し脅威になる存在は我が子であっても消し去る無情な時代。



織田信長から謀反を疑われる信康と信長に抗えず葛藤する父家康。自分のためだけには生きられない戦国の世に翻弄され悲しい結末を迎える親子の物語。



「歌舞伎俳優にとって10代のこの時期というのは、大人の役も子供の役もできない微妙な年齢なんです。でもこうして今しかできない役柄がめぐってくることはとてもありがたい」と話す染五郎くん。



現在17歳。10代の今だからこその瑞々しい美しさに釘付けでした。鮮やかな水色の衣装で颯爽と花道から登場し切長の目元に青年の香りが匂い立つ姿からはオーラと気品が。



若殿に仕える家臣を演じるのは鴈治郎さんと錦之介さん。2人も良かった。行動しない父よりも信長の激しさや強さに惹かれる想いを隠さずに口にする若き信康を諌めるシーンは微笑ましく。



織田信長の長女徳姫と結婚したのはわずか9歳。そして初陣を果たしたのは14歳で父家康と共にさまざまな戦に出陣し活躍したと言われる信康。



その勇姿は「信康ほどの立派な若殿はまたと出てこないだろう」と記されたり長篠の戦いで敗れた武田勝頼は信康の指揮の巧みさに「成長した後が思いやられる」と語ったと伝えられるほど。



いつか自分の脅威になると思った信長は娘徳姫が綴った姑の築山との確執など日々のことをありのまま書いた手紙を元に信康に謀反の疑いをかける。



夫が謀反を起こそうとしていると密告したわけではないと必死に弁解する莟玉さん演じる徳姫に対して声を荒げるのではなく



"大事なことなのだ。話してくれ"と諭すように声を掛ける信康。気性が激しく乱暴者だったという説もありますがとても理性的で優しさが滲みます。



直ちに信康を始末せよと命令を受けた家康。謀反は言いがかりなことは分かっていますが信長に逆らうことは出来ず息子を城から追放し謹慎させます。



苦渋の決断を迫られる家康を演じるのは祖父の白鸚さん。"魂を削るような表現をしている"と孫の染五郎さんも言っているように見事な燻銀の名演。



信康を慕い必死に逃げて生き延びて欲しいと訴える家臣達。忠実な家臣が自分の身替わりになろうとしていることや



築山御前の首を差し出してまで息子を助けようとしている父の想いを知りながら信康が出した結論は武士としての"正しい生き方"をすること。



家のために命を差し出すことを自ら選択した信康は決して哀れでも惨めでもないと染五郎さん。悲運であっても最後まで自分の強さを貫いた人だから。。。



切腹の仕度を整えた息子の元に駆けつけた家康。その瞬間に短刀を腹に突き立てた信康。塁が及ばないように親子の縁を切る決意をし謀反という汚名を着せられながら逃げなかった信康に



「情けを知り情けを越えた」と声を掛けた家康。介錯のために刀を振り上げる家康からは父親の慟哭が伝わってきました。



持てる力の全てを注ぎ込んだ染五郎くんのまさに今しか観られない「信康」。祖父白鸚さんの大きさにも負けない気迫で魂が震える演技でしたクローバー



六月大歌舞伎は今月27日まで上演中です音譜