持てる者と持たざる者 | 町亞聖オフィシャルブログ「As I am」Powered by Ameba

持てる者と持たざる者

1983年にロンドンで初演されてから世界中で愛されているミュージカル「ブラッド・ブラザーズ」を東京国際フォーラムにて観劇ひらめき電球



日本で1991年に上演された時から出演していた吉田鋼太郎さんが俳優を封印し今作でミュージカル初演出に臨みました。



二卵性双生児として生まれたエディとミッキー。ひとりは裕福な家庭に引き取られもうひとりは実の母親と貧しい暮らしという



全く正反対の環境で育った2人は運命のいたずらで双子であることを知らないまま出会いお互いに惹かれ合い固い友情を結び親友に。



2009年に劇団四季時代の「春のめざめ」を観てから注目している柿澤勇人くんがミッキーをそしてエディを演じるのはウエンツ瑛士くん。

   


柿澤くんとウエンツくんは全然似てないにも関わらず演技を超えたところでも強い信頼関係で結ばれているからかいつのまにか血を分けた双子なんだと納得して観ている私。



ミッキーとエディそして幼馴染リンダ役の木南晴夏さん含めて7歳から大人になるまでを違和感なく自然に演じている3人に脱帽でした。



ストーリーテラーを務める伊礼彼方さんは「北斗の拳」でも好演。この舞台でもロックで悪魔的な歌声を聴かせながら牛乳配達や医師など何役もこなして大活躍。



舞台はいきなり悲劇が起きるところから始まりますが柿澤くんとウエンツくんが出てくるまでに30分以上ありなかなか出てこないなと正直思っていたらあせる



双子の運命を大きく変えることになる2人の母親がやりとりする場面などが丁寧に描かれているのには実は理由がありました。



1幕では先ほども書いたように大人が子供時代を演じるシーンが多いので観客を惹きつけるためには本気で演じる必要があり



さらにそこに持っていくためにはその前の母親達の切実な思いをリアルに表現しないといけないという吉田さんの想いがあったからだそうクローバー



そんな2人の母親は亭主に逃げられ女手ひとつで必死に子供達を育てているミセス・ジョンストンと子供が切実に欲しいと望んでいながら叶わないミセス・ライオンズ。



堀内敬子さん演じる双子の母親ジョンストンはダンスが大好きで若い頃はマリリンモンローに憧れていましたが今は子沢山の肝っ玉母さんに。



家政婦を務めているミセス・ジョンストンが双子を授かっていると知り1人を引き取りたいと懇願するミセス・ライオンズを演じるのは一路真輝さん。



始めはそんなことは出来ないと断るも次第に心が揺れていくミセス・ジョンストン。それぞれ追い詰められている2人が下した決断が"我が子"の運命を狂わせていくことに。。。



自分が産んでいないという事実が付き纏い自ら疑心暗鬼になっていくミセス・ライオンズはミセス・ジョンストンにお金を渡し"我が子"エディから遠ざけます。



母親の葛藤や不安をよそに出逢ってしまうミッキーとエディ。吉田さんの演出がやはり効いていて"僕達は義兄弟だビックリマーク"と仲良くなっていく2人の無邪気さに胸が苦しくなります。



その後、ライオンズ一家が引っ越しをしてもう2度と会うことはないと思っていたら悪魔のいたずらにより15歳の時に驚きの嬉しい再会をする2人。



貧しい公営住宅に住むミッキーと裕福な家庭で育ち豪邸で暮らすエディですが若い彼らには経済的な格差など関係なくリンダを交えた3人は恋と希望に溢れた青春時代を過ごします。



ミッキーとエディの幼少期から青年期のやりとりはとても微笑ましく誰もが経験する"あるある"がたくさん散りばめられていてその姿は美しく甘く切ない。



ですが当たり前のことではありますが子供は子供のままではいられず。大学に進学したエディと工場勤めのミッキーの人生は大きく分かれていきます。



エディに背中を押されたミッキーはリンダに愛の告白をし結婚。子供を授かりますが不景気により失業してしまい苦境に立つミッキー。



兄に唆され犯罪に手を染め薬が手放せなくなります。精神的にボロボロになり救いようのないほど落ちぶれていく様子を繊細に演じた柿澤くんのミッキーも素晴らしかったですし


上流階級で育った余裕と清潔感ある佇まいはウエンツくんに元々備わっている素養そのもののようでこちらも適役でした。



「引き離された双子が真実を知った時に双子は死ぬ」という嘘の迷信に絡め取られてしまった人間達。2人の運命を変えることは本当に出来なかったのか。。。



日本での初演から30年。貧困や格差は無くなることはなく現代社会では「持てる者と持たざる者」の差がますます広がっています。



持てる者を羨ましいと思わないと言い切れる人はどれだけいるでしょうか。ミッキーが母親へ投げかけた最期のひとことが重く響きます。



格差社会が生み出す理不尽さによる悲劇を描いたミュージカル「ブラッド・ブラザーズ」は東京国際フォーラムにて44日までクローバー




アフタートークがついていた回で柿澤くんがこの舞台が好きすぎて6回も観た話やミッキーが子供時代に着ていた



ボロボロのベストはなんと初演でミッキーを演じた柴田恭平さんの時から使用しているという裏話も聴けました音譜