芸術の神が宿る
![音譜](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/038.gif)
アニメーションだからこそ表現できるあの世界観をどうやって舞台化するのかという期待と不安が入り混じる中で観劇。演出を担当したジョン・ケアード氏があえて選んだのはアナログな手法でした。
最近はプロジェクションマッピングなどで簡単に壮大な風景や場面転換などを表現することが出来ますがケアード氏は映像をほとんど使うことなく
神々が訪れる「油屋」のセットをダイナミックに動かしたり千尋が空を飛ぶシーンでもワイヤーを使わず全て人の手を使って再現していました。
例えば6本の長い手を持つ釜爺の手を操るのはアンサンブルキャスト達で黒子の表情や姿が見えることも計算に入れた演出。
釜爺は橋本さとしさんでダンディさは封印ですが職人気質で千尋に厳しく接するも人間を差別する気持ちはなく千尋の味方になってくれる優しいキャラクターを。
そんな摩訶不思議なキャラクターひとつひとつを黒子がパペットで表現するなどセット、役者、アンサンブル、パペット、小道具、照明、振付と
本当に複雑な要素全てが見事に融合できているのは素晴らしいチームワークと全員の作品への愛情とリスペクトがあってこそ
そんな唯一無二の舞台で千尋を演じるのは私が観た回は上白石萌音さんで映画から飛び出てきたかのような再現度でした。
Tシャツと短パン姿でランドセルを背負った姿は全く違和感なし。Wキャストのもう1人は橋本環奈さんでこちらの千尋も観てみたい。
湯婆婆は映画で声優も務めた夏木マリさん。どうやって顔を巨大化させるのかと思ったらこの場面でもそれぞれ顔のパーツを黒子が持ちより怒りの表情を表現。
ミュージカル「ライオンキング」の動物達を思い出していたらライオンキングは日本の文楽から影響を受けていたそうで「千と千尋」との親和性に納得
そして注目していたのはハクを演じている三浦宏規くん。実は三浦くんがまだ16歳の時の舞台を2015年に観ていた私。美しいのは顔立ちだけでなくバレエで培った所作も素晴らしく期待の俳優さん。
(こちらはその時の三浦宏規くんの写真)
ハク自身も千尋と同じように自分の名前を奪われているのに千尋を助けようとする頼もしい守り神のような存在。千尋を元気づけようとおまじないをかけたおにぎりを差し出し慰めるシーンにキュンでした
ハクの正体は千尋の家の近くを流れる川の神様ですが人ではない空気感を纏った三浦くんが白竜に姿を変えた時"ハクが竜になった"と感動
そしてダンサーの菅原小春さんが演じる「カオナシ」はどうやったらそんな動きが出来るのと目が釘付けになる人間離れした身体能力で宮崎駿ワールドをより深いものにしていました。
映画でも印象的な戻ってくる電車がないと釜爺が注意する電車に千尋が乗り込むシーン。今度は自分がハクを助ける番だと自ら行くと決めた千尋。
心の中には様々な不安が錯綜しているはずですが気丈に振る舞う千尋とカオナシが並んで座る姿は映画の世界観がそのまま舞台上に。
コロナ禍のため海外スタッフは来日できずにリモートで作業をせざるを得なかったそうですが
そんな状況の中であえて人の力で表現することを選んだ「千と千尋の神隠し」にはまさに芸術の神が宿っているようでした
チケットは入手が難しいようですが東京は帝国劇場にて3月29日まで。次回は少しだけでも良いので千尋が歌うのも聴いてみたい