ポケットにエコー
医療の患者家族の当事者として30年
伝え手として取材して25年が経ちますが
患者の負担が少ない腹腔鏡手術の普及や
抗がん剤治療が外来で可能になったり
リハビリがベッドサイドから始まるように
なるなど医療は確実に進歩してきました。
そして医療機器も更なる進化を遂げていて
"聴診器のように持ち運ぶ"ことを可能にする
まさにポケットに入る超音波診断装置
ポケットエコーVscan Airが誕生しました
GEヘルスケアジャパンがポケットエコーの
初代の製品を発売したのは2010年でしたが
それから10年をかけて現場の医師の意見を
取り入れながら軽量化と画像の精度などを
さらに高めて完成させたのが今回の新製品。
GEヘルスケアジャパンの多田荘一郎社長とは
ロボットスーツHALを開発した山海先生が
開催した社会の役に立つ事業に取り組む
スタートアップ企業を支援するイベントで
実はご一緒したことがあり嬉しい再会です
テクノロジーは社会の中で人の暮らしを
豊かにするために実用化できてはじめて
生命が吹き込まれますが多田社長は長年
"医療が患者さんに近づく"をコンセプトに
ポケットエコー開発に携わってきました。
自宅で高度な超音波検査を可能にした
「Vscan Air」は在宅の現場ではもちろん
災害、救急、遠隔医療など様々な場面で
的確な診断ができ素早い判断から治療に
繋げることが期待される画期的なものです。
現在このポケットエコーは国内で8000台
全世界で30000万台が使われているそう。
そして在宅医療のトップランナーとして
発信を続ける在宅医療カレッジでも共に
学んでいる悠翔会の佐々木淳先生が講演。
日本が長寿社会になったのは間違いなく
医療の進歩のおかげですがその代わりに
死に場所が暮らしの場ではない病院に。。。
高齢化が進み治らない病気と共に生きる
人が増える中で求められる医療は変化し
支え見守る在宅医療や訪問看護などの
ニーズはこれからますます高まります。
設備が整った病院とは違い限られた環境や
情報の中で目に見えないSOSをキャッチし
素早く対応しなければならない在宅での
強い味方になる"新しい聴診器になる"と
佐々木先生もポケットエコーの性能の
高さや利便性に大きく頷いていました。
患者さんの立場から検査による早期発見の
大切さをひとことひとことゆっくりと
紡いでくれたのは歌手の堀ちえみさんです。
「拙い発語になってしまいますが」と
切り出した堀さんは舌がんが見つかり
一昨年舌の60%を切除するという手術を
受けて現在は発語のリハビリをしています。
言葉を上手く話せなくなるということは
歌手にとっては生命を奪われるに等しく
舌の切除の決断は簡単ではなかったはず。
「人はハンデを負うと伸びしろを探す」
前よりも口の自由が効かない分代わりに
頭を使うようになったと堀さんは語り
さらにひとつ何かを無くしてもひとつ
得るものがあればいいと思い気持ちを
奮い立たせて生きてきたことそして
「生きてさえいれば何でもできる」と
前向きな言葉を聴かせてくれました
またこの先どうすればいいのかと悩み
落ちるところまで落ちたけれども
後は上がるしかないし楽しみしかないと
来年デビュー40周年を迎える堀さんは
記念コンサートの開催を目指して
ボイストレーニングをしているそう。
すべてがとてもキラキラ輝いて見え
瞬間瞬間が楽しいと思えるようなったと
拙い言葉で噛み締めるように話してくれた
堀さんが私にはとても眩しく見えました
"医療が患者に近づく"を言い換えると
病院の中で医療は完結しないということ。
超高齢化が進む日本では今後、病院と在宅
医師と看護師、医療と介護などあらゆる
職種間でタスクシェアリングは必要不可欠。
せっかく素晴らしい技術があっても
現場で活用されなければ宝の持腐れに。
デバイスの進化で医療を変革するために
もうひとつ大切なのはイノベーションを
使いこなせる人材を育成することです。
さらに診断は治療のスタートでしかなく
患者さんが納得して選択するためには
医師とのコミニケーションが重要です。
聴診器のように持ち運べるVscan Airを
単なる診断機器ではなく最善の選択に繋げる
コミニケーションツールに深化できるか
これからも注目していきたいと思います
今回、勇気を持って声を聴かせてくれた
堀さんなど病と向き合う患者家族の不安に
寄り添う医療を目指し尽力する開発者と
医療者の想いに触れる貴重な機会でした