悪の美 | 町亞聖オフィシャルブログ「As I am」Powered by Ameba

悪の美

がすんなり歌舞伎の世界に入れたのは

"ネオかぶき"を自称する花組芝居のおかげひらめき電球



本当に枠にとらわれないユニークな発想と

なんでもありの精神で創り上げた独特の



世界観は一度観ただけでは理解不能!?

だからこそハマったら抜け出せませんにひひ


中目黒キンケロ・シアターにて先日

上演された「地獄變」を観劇しました音譜



今作は芥川龍之介の小説を三島由紀夫が

歌舞伎化した「地獄変」を元にしたもので



当初は三島由紀夫の没後50年にあたる

昨年上演予定でしたがコロナのため延期に。



席ごとに飛沫避けのシートを設置したり

スタッフも観客も劇場内では会話禁止と

徹底した感染対策を取っての上演でした。



天下一の腕前と評判の絵師でありながら

高慢で変わり者だと噂される良秀には



露艸(つゆくさ)という父親には似ても

似つかないほど美しくてさらに性格も

優しいという娘がいて溺愛していました。



その露艸は時の権力者の堀河大臣に

見初められてそばに仕えてはいますが

大臣の寵愛を受け入れようとはしません。



そんな中で大臣は「地獄變」の屏風絵の

製作を良秀に命じるも見たものでなければ

描けませぬとなかなか完成には至らず。



業を煮やしたは大臣は良秀を呼び出し

どうしても描けないものとは何かを問うと



燃え上がる牛車の中で悶え苦しみ

焼けていく女性の姿だと答える良秀。



実際にその光景を見たいとの申し出を

怪しい笑みを浮かべながら承諾する大臣。



ここまでの大まかなあらすじは原作と

同じですが芥川龍之介版では娘に名はなく



犠牲になる女性が誰だかは良秀には

知らされていませんが三島歌舞伎では



娘には露艸という名前が付けられ自らの

意志で父の地獄絵を完成させるために

火の車に私が身を投じると決意します。



芥川龍之介は自分の娘が犠牲になるのを

恍惚として見つめ筆を執る良秀を通して

芸術至上主義の理念を追及しましたが



良秀の無理難題を聴き入れるとともに

父の手討ちを阻止したいという娘の親を

想う気持ちを悪用することで意のままにし



露艸という麗しい女性を父親の目前で

生きたまま燃やしてしまうという己の



欲望を遂げようとする大臣に人間の究極の

悪の美を重ねたのが三島由紀夫の地獄変。



初演の際に三島由紀夫は大臣みたいな

人間になりたいと日頃念じていること



露艸のような美女を車に入れて焼くことに

ローマ皇帝の悪趣味を感じて恍惚として

作劇の筆を執ったと語っていたという。



地獄変で三島由紀夫が描きたかったのは

"美を自ら滅ぼす行為"という自らの美学。



「人間の悪の固まりみたいなものが

美しい華を咲かせたのが歌舞伎である」



「地獄変」は生涯で6作の歌舞伎を

残している三島由紀夫の最初の作品で



義太夫狂言を取り入れるなど新作なのに

古典歌舞伎様式にこだわっていたそう。



三味線のリズムに乗せて人物の激しい

感情を表す義太夫節を花組芝居では



寺山修司さんの「毛皮のマリー」に

取り入れた実験浄瑠璃劇も上演してます。



毒々しくて悪の美の創造者を描いた

三島歌舞伎を蘇らせるのに相応しい劇団は

花組芝居しかいないと感じた「地獄變」



終演後のご挨拶も出来ませんでしたが

無事、幕が閉じて本当に良かったですあせるあせる



花組芝居のみなさんお疲れ様でしたクローバー



見逃した方も大丈夫アップ「地獄變」の

DVDが発売されますので詳しくは☞


https://hanagumi.ne.jp/