時代の抵抗者 | 町亞聖オフィシャルブログ「As I am」Powered by Ameba

時代の抵抗者

ラジオ日本「スマートNEWS」の

特集コーナーレギュラーゲストで
ジャーナリスト青木理さんの著書本


スタジオジブリが発行する小冊子
「熱風」で青木さんが連載している
対談をまとめた時代を問う一冊です。


当たり前のことが当たり前でなく
おかしいと思ってもおかしいと
言葉にすることが憚れる今の社会。


そんな時代や社会の歪みのために
本来は各界の本流であるはずなのに


抵抗者にならざるを得ない矛盾を
このタイトルに込めたと青木さん。


評論家ではなく実践者として
今の時代を生き行動してきた彼らの
語る言葉には血が通っています。


全ての人に共通するのは"危機感"


憲法改正を目論む安倍総理ですが
不戦の誓いでもある憲法9条は
日本をこういう国にしようという


我々の決意であり覚悟と語るのは
戦前生まれの政治家の古賀誠さん。


もはや戦前の状態だと指摘する
なかにし礼さんは満洲から命辛々
引き揚げてきた経験をしていて


安倍政権は戦争を弄ばすに謙虚に
経験者の声に耳を聴くべきとも。


"権力をふるうことに躊躇いがない"


まさにその権力の攻撃に晒された
文科省元事務次官の前川喜平さん。


青木さんは忖度が蔓延る官僚組織に
辛うじて残る良識を彼に見出します。


"人権のにおいがする"こう言われた
経験を持つのは小説家中村文則さん。


学生時代に戦争を肯定する友人に
反論した時に投げかけられた言葉。


人権とは生きる権利そのものであり
戦争でなくとも病気や貧困により


生きることを脅かされることが
誰の身にも起こりうると想像する
力が無いのは若者だけではなく。


"何もしない自分への罪悪感"


文句を言っても何も変わらないと
中村さんの世代は諦めている一方で


根底で罪悪感を持っているために
例えば沖縄の基地問題も本当なら


怒っていい問題であるはずなのに
見て見ぬふりをする人もいれば


自分の罪悪感を払拭するために
基地を肯定する人がいると分析。


未だに故郷は分断されたままであり
日本人でもなく韓国人でもないと
両方から差別される在日コリアン。


青木さんが傑出した在日作家と評する
梁石日さんの"主体性"は人間の根本の
問題であり国家には属さないとの


言葉が日本人のアイデンティティー
主体性とは何か問いかけているよう。


"恥の世代として歴史に残される"


政治権力の暴走を止められていない
責任は今の時代に生きる全ての人が
負っていると鋭い突き付けるのは


中村さんと同世代で同じく芥川賞を
受賞している作家の平野啓一郎さん。


平野さんとの対談は三島由紀夫から
天皇制にそして死刑制度にまで及び


最後を締め括るのはオウム事件の
弁護人を務めた安田好弘さんです。


私は麻原元死刑囚に死刑判決が
言い渡された法廷を取材しましたが


途中から心を閉ざした麻原教祖は
判決を聴いても無表情のままでした。


真実が語られないまま13人の死刑が
執行されてしまった未曾有の事件。


"平成の事件は平成のうちに"という
意味不明な理屈だったと安田さん。


人間を社会から永久に排除する
死刑を国家レベルで維持するのは


先進国の中で日本のみという現実を
重く受け止めなければなりません。


民主主義や平和は空気のように
当たり前に存在するわけではなく


守り続けていくためには改めて
不断の努力が必要だと感じました。


"こんなはずじゃなかった"と
後悔しても時すでに遅しであり


その前におかしいと思ったことは
おかしいと私は言葉にしていきたい。


ぜひ一読してもらいたい一冊ですクローバー