神の啓示 | 町亞聖オフィシャルブログ「As I am」Powered by Ameba

神の啓示

慌ただしいながら合間をぬって

時間を作りお芝居を観ていますが

感想を書くのを忘れていたのがあせる



Bunkamuraシアターコクーンにて

先月、観劇した海老蔵さん主演の

ギリシャ神話「オイディプス」



"父を殺して母を娶るだろう"



理不尽で残酷な預言から逃れられず

運命に翻弄される王の悲劇の物語。



登場人物や都市の名前はそのままで

疫病が蔓延し生命の危機に瀕する

"近未来"の都市テーバイという設定。



海老蔵さん演じるオイディプス王は

やり手のエリートサラリーマン風の

何とスーツ姿!?ですが違和感がなく



そしてイオカステ役の黒木瞳さんは

オイディプスの母であるということを



観客全員が知っているにも関わらず

2人はしっかり夫婦に見える妖艶さショック!



テーバイの市民(コロス)たちを

率いるリーダー神官を森山未來さん。



歌舞伎役者、ダンサー、俳優と

このメンバーが揃って化学反応が

起きないわけがない未知の舞台星



外部から隔絶されシェルターの様な

無機質な灰色の空間が広がる舞台。



耳障りな警報音が鳴り響き赤色灯が

不気味な光を放つ中で分厚い扉の



向こうから現れたのは白い防護服に

ガスマスクを着けたコロスの集団。



防護服は否が応でも原発事故を

想起させギリシャ神話なはずなのに

現代を生きる私達のリアルな物語に。



オイディプスや神に救いを求める

疲弊したコロス達の祈りの群舞。



神秘性を帯びたしなやかで美しい

ダンスは言葉よりも雄弁であり



盲目的に神にすがる市民の心の中の

見えない恐怖や不安を見事に体現。



女でも男でもない歌舞伎役者の

女方による預言者は圧倒的な存在感。



絶対的な権力と愛する妻と全てを

手に入れ高みから弱き民を憐んでいた

オイディプスに全てを語る羊飼い。



預言が正しかったことに慄き震え

自分の犯した罪の深さに絶望する。



疫病の原因はオイディプス自身であり

目を潰すという裁きを自らに下して

血塗れになりながら扉の外へ。。。



尊大さと繊細さを合わせ持っている

海老蔵さんの現代版オイディプス。



母親も自分も居なくなった後に

残される子供の行く末を案じる姿に

リアルな海老蔵さんが重なります。



神の啓示が正しかったことを告げる

新たな指導者は高橋和也さん演じる

義弟クレオンとコロスを率いる神官。



偉大な王が居なくなっても国体は

変わらず哀しいかな民の声は届かず

一部の人間による支配は続いていく。



舞い散る桜は美しい国の象徴。。。



1人の王の悲劇の物語で終わらせず

日本社会への風刺も込めた普遍的な

演出はイギリスの演出家ならではひらめき電球



久しぶりの現代劇だったという

海老蔵さんは来年は團十郎を襲名。



様々な宿命を背負った歌舞伎役者

市川海老蔵をこれからも見続けたいクローバー