ポジティブな諦め
毎週土曜あさ5時35分からOAの
障害者スポーツを応援する番組
文化放送「みんなにエール」
去年12月に出演していただいた
北京パラリンピック柔道日本代表の
初瀬勇輔さんが本を出版しました
"今自分が持っているものは視力を
失ってから手にいれたものばかり"
こう前向きに著書に綴っている
初瀬さんは弁護士を目指していた
大学受験中に若年性緑内障のため
右目の視力を失い大学在学中に
さらに左目も見えなくなりました。
トイレも一人で出来なくなるなど
日常生活にも大きな支障が。。。
努力でなんとかならない世界に
いきなり投げ出されてしまい
未来を奪われ希望も見出せずに
思い詰め死にたいと呟いてしまった
時に母親が息子に返した言葉は。。。
"私もあんたと一緒に死ねけん"
表情は見えないけれども淡々とした
声に覚悟を感じた初瀬さんは1年だけ
死ぬのを延期しようと決めました。
死ぬのを思い留まらせてくれた
お母さんだけでなく入院していた
1ヶ月間毎日会いに来てくれた友人が
一緒にいると楽しいからと手術前と
変わらず普通の友人としてそばに
いてくれたことも支えになりました。
そしてさらに大学に通うのを2年間
サポートしてくれた心強い後輩も。
"全てはベストのタイミングだった"
もし就職した後だったら友人にも
余裕がなく頼れなかったはずと
当時のことを振り返っていました。
障害を受容できず大学在学中は
人と関わらないようにしていた
初瀬さんの気持ちが少し分かります。
母の介護が始まり生活が何もかも
変わってしまった時に私も友達と
連絡を取らないようにしました。
まだ10代の友達に母の障害のことや
介護の大変さを理解してもらうのは
不可能だと分かっていたからなのと
キラキラしている同世代を見ると
羨ましくて自分が惨めになるから。
"ポジティブに諦める"初瀬さんは
目が見えないことを受け入れる
プロセスをこう表現していますが
最初から諦めたら傷つかないし
負けても悔しいと思わないで済む。
小さなことに傷つかなくなるまで
10年ぐらい時間が必要だったそう。
人との競争を避けずっと負けている
状態だった初瀬さんに"悔しい"と
思わせてくれたのがパラ柔道でした。
勝つと嬉しく負けると悔しいという
久しぶりの当たり前のこの感覚が
障害の事を忘れさせてくれたそう
パラ柔道は視覚障害の度合いではなく
体重別でクラス分けするのが特徴で
更に相手と組むところから試合が
スタートしますので実は障害の有無に
関係ないユニバーサルスポーツです。
しかも試合のどのタイミングでも
組むところから始まるパラ柔道は
逃げることが許されないスポーツ。
自分から一歩を踏み出したことで
初瀬さんを取り巻く環境は一変
パラ柔道日本代表として北京パラに
出場することになった初瀬さんの為に
100社以上落ち続けて何とか内定した
会社が支援制度を作ってくれたりと
想像していなかった嬉しい変化が
アクションを起こさなければ
リアクションもないと初瀬さん
"大切なものにもう出逢っているかも"
初瀬さんを立ち直らせてくれた
中学高校で取り組んでいた柔道や
支えてくれた学生時代の仲間達を
思い浮かべながら初瀬さんは講演で
若い人達にこう語りかけるそう
ちなみに柔道を勧めてくれたのは
当時お付き合いしていた彼女だと
初瀬さんは記憶していましたが
お母さんは"私よ"と言い張るそう
そんなユーモアを交えながら
すみませんと言うばかりの毎日から
人からありがとうと言われる"今"を
自らの手で築いて来た初瀬さんの
歩みが包み隠さずに綴られた一冊
ぜひ読んでいただけたらと思います
文化放送「みんなにエール」
初瀬勇輔さんのインタビューは
9月7日と14日にオンエアします