一世一代 | 町亞聖オフィシャルブログ「As I am」Powered by Ameba

一世一代

仁左衛門さんが悪の華を咲かせる
四月大歌舞伎夜の部を観劇しましたひらめき電球


鶴屋南北の通し狂言「絵本合法衢」
2人の悪役を演じる仁左衛門さんニコニコ


自身は5回目で歌舞伎座初の今回
”一世一代”と銘打って臨んでいます


本家乗っ取りを企む大学之助と
町人の太平次は瓜二つという設定。


笠を目深に被り登場した大学之助は
迷いも無く簡単に人を切り捨てた後


花道でゆっくりと笠に手をかけて 
顔を見せると客席から大きな拍手が。


分家だからこそ大名の息子の尊大さを
遺憾無く発揮し権力を振りかざす
大学之助は人の姿をした悪の権化か。


表情を変えることなく人を斬り
浮かべる冷酷な笑みが凄すぎます。


一方の太平次は茶目っ気があって
人間らしさが滲み出ていますが


極悪非道ぶりは留まることを知らず
自分を慕う女や女房の生命でさえ
虫けら同然に扱って手当たり次第に 


次から次へと人を殺めていく
残虐さはかえって背筋が凍ります。


それを1番よく表していたのは
本家と所縁があるというだけで
監禁された妻と助けに来た夫を


始末した後に亡骸を足蹴にしながら
蚊を叩き殺し無慈悲に払う場面。


2つの悪役を演じ分けるのではなく
台本を読んでいると自然にそれぞれ
役柄に入っていくと仁左衛門さん。


役が乗り移ったと言っていい程の
全く違う個性を持つ悪役でした。


また共演者も素晴らしく大学之助に
見染められてしまい非業の死を
遂げるお亀を演じた孝太郎さんや


太平次に気に入られようと悪事に
加担するうんざりお松を時蔵さん。


身持ちの悪さを理由に勘当されて
見世物小屋で姐さんと呼ばれる


身分に落ちていながらも艶やかな
存在感で舞台に華を添えています。


合法と名乗り兄を殺された仇討ちを
果たす時を待つ弥十郎と兄の二役を
彌十郎さんが安定感のある演技で。


恰幅も声も重みのある彌十郎さんは
舞台に深みを出す貴重な役者さん。


ほとんどの登場人物が亡き者に
されてしまう救いの無い物語。。。

 
”自分が作り上げたという自負もある”


平成でこの二役を演じたのは
仁左衛門さんだけという悪の華を
次世代で引き継ぐのは果たして誰か。


”演じ納めなんてもったいない”
と心から思いましたが先月で74歳あせる


演じきれる今だからこそ今回を
最後の舞台と決めた仁左衛門さんの
演技しっかり目に焼き付けました星


四月大歌舞伎はあす26日までニコニコ