変化する心。。。 | 町亞聖オフィシャルブログ「As I am」Powered by Ameba

変化する心。。。

失ってから「大切なもの」に
人は気づくとよく言いますが


私が介護の体験を語り続けるのは
悲しい体験をする前に大切なものに
気づいて欲しいという想いからクローバー

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1990年代は介護が語れる
時代ではありませんでしたが


時代は変わり介護体験者や当事者が
声を上げられるようになりました。


そして最近は介護をテーマにした
映画が数多く作られています。


今週19日土曜日に公開される
映画「つむぐもの」はそんな
"気づき"のきっかけになる映画映画

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きのうは監督犬童一利さんと
主演の石倉三郎さんとご一緒し
映画に込めた想いを伺いましたひらめき電球


妻に先立たれ1人暮らしをする
頑固で不器用な和紙職人
剛生を演じるのは石倉三郎さん。


韓国から和紙作りを学ぶために
来日したはずが脳腫瘍になった
剛生を介護することになる
ヨナをキム・コッピさん。


言葉も世代も全く違う二人は
お互いに理解し合うことが
果たして出来るのか。。。


「俺は誰の助けもいらない」


剛生は一人で暮らすのも難しいのに
始めは周囲の心配もヨナの存在さえ
拒否するような態度を取ります。


石倉さん演じる「剛生」は
日本の社会の中に沢山います。

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石倉さん自身、現在69歳。


「自分で何も出来なくなる
ということはとても辛く情けない。
生きていても仕方がないと
諦めの想いが強くなる。」


「出来れば介護される側ではなく
介護する側になりたい」と
素直な想いを口にされていました。


犬童監督も映画を製作するまでは
介護は身近ではなかったそうです。


介護の仕事は素晴らしいという
映画にはしたくないと考え


実際に介護現場で仕事を体験し
“理想”と“現実”をしっかりと
描くように心がけたと話します。


介護の専門家ではないヨナ。
2人で街中に散歩に出ても
必要以上に手を貸しません。


でもそれでいいんだと思います。
私も厳しい娘でした。。。


右半身麻痺だった母が杖を使って
人の2倍も3倍も時間をかけて
ゆっくり歩くのを辛抱強く
見守った日々を思い出しました。


ある介護施設を訪れたヨナは
無表情の認知症の女性を見て
「毎日、つまらないって」と
本音を一目で見抜きます。


施設で働く若い介護職の涼香は
「ご利用者様の事を一番に考えて」
と一生懸命に働いていますが
その想いはどこか空回りしています。


マニュアルに縛られないヨナは
剛生の生き甲斐が和紙作りで
あることを知り元気になるように
ヨナなりに工夫をしていきます。


「その人らしく生きるとは」
という命題をヨナは自然にそして
いとも簡単に紐解いていくのです。


ヨナと涼香。2人の剛生への
向き合い方から日本の介護の現場で
当たり前のように行われている
「過剰介護」「管理介護」の
問題が浮かび上がってきます。


病院では“患者”、施設では“利用者”と
当たり前に呼んでいますが
私はずっと違和感を持っていました。


犬童さんも同じで涼香が口にする
“ご利用者さま”という
言葉にはこだわったそうです。


石倉さんも子供をあやすような
言葉をお年寄りに使うのは
違和感があると言っていましたが


韓国語を理解しない剛生に向かって
笑顔を見せながらヨナは韓国語で
「分かりました。くそじじい」
というシーンがあります。


介護する側も感情を持つ普通の
人間なので頭にくることもあるはず。


患者や利用者である前に
「ひとりの人間」であることを
医療や介護を提供する側は
絶対に忘れてはなりませんし


介護は自己満足でやる
一方向の仕事ではなく
「人」と「人」が支え合い
互いを思い遣る共同作業ですクローバー


ある夜、トイレに間に合わず
ヨナに介助してもらいながら
お風呂に入っている剛生は
妻と息子のことを思い出します。


「昔話するようになったら
もうお終いやな」とつぶやく剛生。


「昔話するのは悪くない。
思い出は生きた証」と
剛生の背中に語り掛けるヨナ。


切ないシーンではありますが
私の中で一番心に残る場面です。


人生の全てを和紙作りに
賭けて生きてきた剛生は
妻も失い和紙作りも出来ない。。。


「この年になって何も出来ん」
大きな喪失感を感じている剛生の
姿は明日の貴方かもしれません。

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芸歴50年で初主演の石倉三郎さん。


普段は豪快なイメージですが
「老い」と「死」という
大きなテーマを背負い


寡黙で不器用な和紙職人の
“剛生”を見事に演じていました。


人は一人で生きられない生き物。
誰かに支えられ、そして支え合って
生きていることをヨナと過ごす
日々の中で剛生は実感していきます。


心が変化していく様子が
剛生のつぶやきから伝わります。


和紙作りへの想い、家族への想い、
そしてヨナへの想い。。。


変化するのは剛生だけではなく
韓国では投げやりに生きていた
ヨナも剛生と出逢ったことで


自分の人生を見つめ直し
新たな一歩を踏み出します。


過酷な介護現場で働く涼香も介護の
本質に立ち返る機会を得ました。


介護とは。。。


最期までその人らしく人生を
悔いなく生きることを支えること。


「介護福祉士は国家資格です」
涼香のこのセリフが2度出てきますが


1度目と2度目では彼女の意識が
明らかに変化しているのが分かります。

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映画のタイトルにもなっている
“つむぐ”という言葉私も好きですクローバー


細い糸を縒り合わせて一本の生糸に
することを“紡ぐ”と言いますが


想いも言葉にしなければ
相手に伝わりません。


1人ひとりの想いを
言葉にして伝えていくこと。


言葉で想いを紡いで
いくことが私の役目です。


人生の終末期に寄り添う介護は
「最期までどう生きるか」を
人生の先輩から学ぶ貴重な機会です。


その学びや気づきを次の世代に
伝えていく役目も介護職は
実は担っているのだと思います。


介護は単なるお世話ではなく
人が人を支えるという
究極の“つむぐ仕事”です。

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「人が人を支える」という
当たり前のことの大切さに
気づかせてくれる「つむぐもの」は


今週19日から有楽町スバル座より
全国順次ロードショーですニコニコ


是非、劇場でご覧ください星