考えてください。。。 | 町亞聖オフィシャルブログ「As I am」Powered by Ameba

考えてください。。。

皆さんは「尊厳死」に関する
法制化が私達の知らないところで
進められていることをご存知ですか?

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きょうは「尊厳死法案」について
考える勉強会に参加してきました。


講師は東北大学大学院
伊藤道哉先生
国立病院機構新潟病院
中島孝先生
立命館大学産業社会学部
大谷いづみ先生です。


そして参加されているのは
難病や事故などで
生きるために人工呼吸器を
必要とする患者家族
そして支える医師の皆さんです。


実は随分前から厚生労働省では
「終末期の在り方」を検討する
会議が何度か開催され
平成22年に報告書も出されています。

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000yp23-att/2r9852000000yp3k.pdf


2年前の報告書では高齢者、脳卒中、
がん患者、難病患者など病状は様々で
「終末期」自体を定義することは
難しく、また課題が多いので
まだ議論が必要であると
提言していました。


しかし尊厳死法制化を考える議員連盟が
昨年末に出した法案では
議論が必要とされる「終末期」が
わずか3行で表現されています。

photo:04


「患者が傷病について行い得る
全ての適切な治療を受けた
場合であっても回復の可能性がなく
かつ死期が間近であると
判定された状態にある期間」


まず死期を「判定する」という
言葉自体がおかしいと思いませんか?


わずかこれだけの定義で医師は
終末期をどうやって判断するのか
先生からも疑問の声が
上がっていました。


この法律の目的は
単刀直入に言うと「終末期」に
「延命治療」をしなくても
医師を罪に問わないということです。


厚生労働省の検討会で
一番の問題になっていたのは
「人工呼吸器」を外すことでしたが
このことには一言も触れていません。


「延命治療」とは栄養補給や
水分補給などの措置とあるだけで
こちらもわずか3行です。


法制化の議論のきっかけは
平成18年に患者の人工呼吸器を
外した医師が殺人容疑で
書類送検されるという出来事でした。


病院経営をめぐる対立が
背景にあったとも言われていますが
実は患者家族からの告発ではなく
警察に通報したのは病院でした。


病院自ら騒ぎ立てるという
大変奇妙なケースで
この医師は不起訴になりました。


正当な医療行為をした医師が
警察に逮捕されるということは
絶対にあってはなりません。


残念ながら日本において
終末期に対する理解が
いかに稚拙であるかという
現れでもあります。


本来は人工呼吸器外しの例として
挙げるには相応しくありません。


ですがこの出来事を受けルール作りが
必要となり議論が活発になったという
経緯が厚労省の報告書に書かれてあり
あえて私も書きました。


法案では事前に
「延命治療の差し控え」を
希望する意思表示がある場合は
民事刑事、行政上の責任を
問わないと書かれています。

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右下の黒くつぶれてしまっている
四角の中に書かれています。
差し控えという言葉が
いかにも役人らしいです。


水分補給や栄養補給をしないことに
対してわざわざ刑事責任を問わないと
定める必要があるでしょうか?
しかも誰をという主語がありません。


人工呼吸器の言葉はなくとも
念頭にあるのは間違いありません。


人工呼吸器を必要とする患者家族が
きょうの勉強会を開いたのは
命の綱の「人工呼吸器」が
問題になっているからです。

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参加された家族の方からは
「人工呼吸器を付けてから
命が始まるのです」という
切実な意見が出ました。


「無駄な」「いたずらな」という
表現が検討会でも頻繁に
延命治療に使われていました。


再発や進行したがんの場合
病気そのものを治すための治療から
緩和ケアに切り替える時がきます。


病気を治すことを目的とした行為だけが
医療なのでしょうか?
私は違うと思います。


実際に母を家で看護しましたが
食事をほとんど取れなくなった
母にとって最低限の
カロリーを補給する点滴は
命を繋ぐ必要な処置でした。


もしこの点滴をしなければ
何も食べられない母は
飢えに苦しみ死んでいったでしょう。


また自分でトイレに行けなくなったので
オシッコの管をしていましたが
きちんと尿が出ているか
目でチェックすることができました。


肺に水が溜まり
息が出来なくなった父には
酸素マスクがつけられました。


「水の中で息をするような苦しみ」と
先生は表現していました。
息を吸い込もうともがく父の
見開かれた目を今でも忘れません。


どこから「無駄な」延命治療と
誰が判断するのでしょうか?
まだやってない治療を
最初からいらないと
本人や家族が判断できるでしょうか。


私達家族もがんが進行することで
母がどんな状態になっていくのか
全くわかりませんでした。


ほとんどの人が同じだと思います。
何もしないこと=穏やかな最期を
迎えられるとは限りません。


最期までその人らしく
過ごせるための体制を作り
「終末期」医療への理解を
深める教育を充実させるという
法律なら分かりますが
残念ながら法案の中身からは
全く理念が伝わってきません。


あえて文言は書きませんが
保険金の受け取りに関する条項もあり
誰に⁈何を⁈考慮した法律なのか
全く意味が分かりません。


今の日本では在宅看護
在宅介護を支える対策さえ
十分に行われていません。


このブログで度々書きましたが
終末期を支える緩和ケアの医師さえ
全く足りていない状況です。


そんな状況を全く無視している
条項も盛り込まれています。


主治医ではない知識や経験を有する
医師二人が立会い終末期かどうか
判定するというのです。


そもそも主治医ではない医師が何を
基準にして判定するのでしょうか?


カルテやその時の状態だけで
簡単に「今終末期ですね」と
判断できるものではありません。


厚生労働省の調査によると
終末期の法制化に関して
医療界の考えは二分していて
一般の人は6割以上が
反対しています。


もちろん最期の時まで
どう生きたいのか本人の意思が
尊重されるべきですし
それは当たり前のことです。


そのために必要なのは法律ではなく
医師と患者の間の
「信頼関係」だと思います。


これはきょう参加した
全ての人の共通の意見です。


まずは1人1人が適切な
終末期の医療を選択できる
体制作りに力を入れるべきです。


「尊厳死」は響きの良い言葉に
聞こえるかもしれませんが
中身は天と地ほどかけ離れています。


法制化の1人歩きは
止めなければなりません。


議員連盟の中でもまだ意見が
まとまっていないそうですが
3月中には法案を形にするようです。


難病の患者さんの中でも
家族の介護の負担もあり
人工呼吸器に関して考え方は
ひとつではありません。


とても難しい話しですし
まだまだこの一回では
書ききれていない事が沢山あります。


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尊厳死の法制化について少しでも考える
きっかけになればと思いますクローバー


星参考ホームページ星

ALSの患者会「さくら会」☞
http://www31.ocn.ne.jp/~sakurakai/

人工呼吸器をつけた子の親の会
「バクバクの会」ホームページ☞
http://www.bakubaku.org/