
昭和の映画だなあ、と思う。
内容も映画の作りそのものも「プロジェクトX」そのまんま、というよりこちらの方が元祖なのだった。
黒四ダムが完成したのが1963年、映画が公開されたのが1968年だから映画化まであまり間を置いていない。
これだけ当時としては新しい素材に着目しプロダクションをあげ五社協定を越えて協力したスター二人(三船敏郎、石原裕次郎)の勇気と人を巻き込んで動かした力は賞賛に値すると思う。その後の五社体制のなし崩し的な崩壊を経て今しも丸の内東映のラストショーとしてスクリーンにかかることになった。
トンネルのセットが壮大。録音(安田哲夫・紅谷愃一)が破砕帯が軋む音といった静寂の中で耳を傾けるのを要求する小さな音と大音響との対比をよく生かした。
でかい画面で見られるのを待っていてよかった。
撮影もいかにも「実写」という感覚で、本当に大量の水を出して大スターであっても本当に事故が起こりかねない体制で撮っているのがうかがわれる。
同劇場ではふだん二階席は閉鎖していたのだが、このラストショーで開放した。三時間を超す長尺で途中に休憩が入ったのでトイレに立ったら戻ってきた時にはもう始まっていた。ずいぶん短い休憩だな。
休憩の前に破砕帯にぶつかって休憩後は二進も三進もいかなくなるシーンがずうっと続く。進展がまったくない我慢劇がずうっと続き、トンネルが開通するまで粘ること粘ること。
女の出番が少ないのと出てきてもほぼ結婚絡みという扱いも昭和のセンス。
俳優で現在存命なのは樫山文枝、日色ともゑ、川口晶ら女優陣ばかりではないか。
出てくる企業名が実名だな、と思ったが、それはむしろ逆で関西電力と熊谷組とその下請けが大量の前売りを購入するタイアップのはしり。弊害も大きくなったが。
宇野重吉と寺尾聰(あ、この人も存命でした)の父子が父子役で共演している。寺尾はこれがデビュー作。石原軍団入りしたのもこの出演が縁らしい。
この映画の撮影を担当した金宇満司は石原プロで常務を務め、石原の晩年は六年にわたって看病したとのこと。
俳優たちの名前がニ大スターを含めて五十音順でローリングタイトルで流れるのに対して、監督・熊井啓の名前はぴたりと止まって出る。
