2024年9月7日

 

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 ■ 試合データ

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米国時間:2024年9月6日

日本時間:2024年9月7日(土曜日)

11時10分開始

ロサンゼルス・ドジャース

対クリーブランド・ガーディアンズ

@ドジャースタジアム

 

 

【MLB.JP 戦評】

 日本時間9月7日、ドジャースは本拠地ドジャー・スタジアムでのガーディアンズ3連戦がスタート。大谷翔平が45号ソロを放ったものの、ガーディアンズの強力投手陣を攻略できず1対3で敗れ、2位パドレスとのゲーム差が4に縮まった。ガーディアンズ先発のマシュー・ボイドは大谷に一発を浴びたが、6回3安打1失点の好投で2勝目(1敗)をマーク。4番手のエマニュエル・クラセがメジャートップに並ぶ42セーブ目を挙げ、ドジャース先発のランドン・ナックは6回3安打2失点の力投も3敗目(2勝)を喫した。

 

 ボイドとナック、両軍先発投手の好投で5回まで両軍とも無得点となった一戦は、6回表一死1塁からアンドレス・ヒメネスの8号2ランでガーディアンズが先制。6回裏に大谷の45号ソロでドジャースが1点を返したものの、8回表にブライアン・ロキオの8号ソロが飛び出し、ガーディアンズが3対1とリードを広げた。ドジャースは8回裏に大谷のヒットから一死満塁のチャンスを作ったが、クリス・テイラーが痛恨の併殺打。9回裏はガーディアンズの守護神クラセが締めくくり、ドジャースは1対3で3連戦の初戦を落とした。

 

 ドジャースの大谷は「1番・DH」でスタメン出場。左腕ボイドに対し、初回の第1打席はいい当たりのセンターフライ、3回裏の第2打席は空振り三振に倒れたが、6回裏の第3打席で45号ソロを放ち、史上初の「45本塁打&45盗塁」を達成するとともに、3年ぶり2度目となるシーズン100打点に到達した。8回裏の第4打席は右腕ハンター・ガディスからライトへヒットを放ち、今日は4打数2安打1打点。今季の打率は.291、OPSは.993となり、前人未到の「50-50」達成に向けて残り21試合となっている。

 

 

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 ■ 今日の大谷翔平

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【スタメン】

1番DH

 

【出場成績/打者】

4打数 2安打 1打点 1得点 1三振 1本塁打(45号)

通算打率・292

OPS・993

 

◆第1打席:

(結果)センターフライ

(状況)1回無死走者なし

(投手)マット・ボイド左

※カウント1-2から150キロ真ん中高めシンカーを捉え打球はセンターへ。行ったかと思われたがフェンス手前で中堅手がキャッチ。45号ならず。飛距離は394フィート(120メートル)だった。

 

◆第2打席:

(結果)空振り三振

(状況)3回1死走者なし

(投手)マット・ボイド左

※カウント2-2から128キロの外角低めボール球のスライダーに空振り三振。

 

◆第3打席:

(結果)ホームラン

(状況)6回1死走者なし

(投手)マット・ボイド左

※2点差を追いかける6回一死走者なしの場面で迎えた第3打席。相手先発左腕のボイドが1ボールから投じた2球目を完璧に捉えた。2球続けたシンカーが真ん中付近に入ってきたところを見逃さずにフルスイング。大谷は手応えが残るバットを持ったまま中堅左に消える413フィート(約125・9メートル)の放物線を見届けた。

 

 

 

◆第4打席:

(結果)ライト前ヒット

(状況)8回1死走者なし

(投手)ハンター・ギャディス

※カウント0-1から155キロの内角直球を打って右前安打。これで自己最多タイのシーズン160安打に到達。ベッツの二塁打で三進。フリーマンは申告敬遠で満塁もテーラーは遊ゴロ併殺打で無得点。

 

【コメント】

なし

 

【NEWS】

◯ 大谷は試合前はキャッチボールなどで調整。練習を終えると地元リーグでプレーするローレンス・ルー君(10)と三塁側ベンチ前で記念撮影に応じる場面もあった。大谷が本拠でファンと絡むのは珍しく、ルー君にとっては貴重な経験。ルー君は「翔平は最高の選手だ。僕と比べてすごく大きくて驚いた。人生で1番素晴らしい経験になった。最低でも48-48の成績は残すんじゃないかな。左投げ左打ちで、リトルリーグでは一塁と投手をやっている。二刀流?そうだね、はっは」と目を輝かせた。

 

台湾出身の父・アレン・ルーさん(51)は「ベンチ前で息子と“オオタニサン!”と叫んでいたら近寄ってきてくれて“写真なら喜んで”と言ってくれた。本拠地ではなかなかファンが見られる時間に練習することがないからそれだけでもラッキーだし、写真を撮ってもらって、握手もしてもらったなんて、我々はなんてラッキーなんだ。月にも昇る気分だ。翔平はMVP。100%間違いない。DHは獲りづらいと言われてるけど、それは10年以上前の話。彼は打って走って誰にもできないことをやっている。ベストプレイヤーだ」と興奮気味に話した。

 

 

◯ 大谷がオーディオブランド「Beats」の公式アンバサダーに就任。6日、大谷がドジャースタジアムに到着した時のこと。サンダルにキャップを後ろ向きに被ったラフな装いだったが、首には契約が発表されたばかりの「Beats」の黒いヘッドホンがつけられていた。ロゴもはっきり見え、同社の製品と分かる。この光景をMLB公式Xが写真とともに紹介。すると、日本ファンからは大谷が企業思いであるとの称賛のコメントが相次いだ。

 

 

◯ 史上初となる45本塁打&45盗塁(45-45)を達成。キャッチしたのは横浜市在住の山田さん一家。父は「今は現実とは思えない。夢を見ているみたい」と喜んだ。メモリアルな一発をキャッチしたのは家族で観戦していた山田さん一家だった。バックスクリーン横のネットに着弾し、跳ねたボールを息子が掴んだ。父は以前米カリフォルニア州ロサンゼルスに在住しており、野茂英雄氏がチームにいた頃からのドジャースファンだという。現在は横浜に在住しているが、8月17日から渡米。レギュラーシーズンは27試合を観戦予定でワールドシリーズを見据え11月の帰国便を予約した。「運を使い果たしてしまったかもしれないね」と興奮気味だった。

 

 

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 ■ 試合情報

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【コメント】

デーブ・ロバーツ監督:

「(50本塁打50盗塁について)かなり可能性が高い。彼は目標に向かっている人間で、記録を更新するのが好きな男だ」

 

スティーブン・ボート監督:

「(先発ボイドについて)素晴らしいパフォーマンスだった。序盤から積極的に打者に対して攻めていたし、初回は走者を出しても、うまく立ち回った。相手は素晴らしいチームだが、オオタニに打たれたホームラン以外は封じ込んだ」

 

「テーラーという本当にいい打者に回ったが、幸運にも(遊撃手の)ロキオへのゴロとなった。(二塁手ヒメネスと)2人は大きなダブルプレーをいつも決めてくれる。(MVPトリオとの対戦に)あの上位打線は勘弁して欲しいね(笑い)。我々は相手チームに対して最大限のリスペクトを持っているし、3人のプレーを見ることは他の選手と同様に大好き。ただ、彼らと対戦しなければいけないし、抑えなければいけない。(先発の)マシューはそれをやってくれた」

 

マシュー・ボイド投手:

「内角に投げきれなかった。真ん中にいってしまった。彼は野球界でベストヒッターの1人。ミスをすれば、その代償を受けることになる。インサイドかつ、高めに投げたかった。投げきっていても、結果はどうなっていたか分からないけどね。いいスイングだった」

 

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 ■ 注目記事&コラム

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◆ 大谷翔平の史上初「45―45」記念球をゲットしたのは超強運の日本人親子「墓場に持っていく」金人形も

(スポニチ)

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 ドジャースの大谷翔平投手(30)は6日(日本時間7日)、本拠でのガーディアンズ戦に「1番・DH」で先発出場。2打席凡退して迎えた第3打席で8月31日のダイヤモンドバックス戦以来5試合ぶりの一発となる今季45号ソロを放った。これで打点は自己最多をマークした2021年の100打点に並んだ。

 

 大谷のバットが快音を奏でたのは2点を追う6回だった。先頭打者として打席に入ると、1ボールから左腕ボイドの甘く入ったシンカーを逃さなかった。完璧に捉えた打球は速度111.2マイル(約178.9キロ)、38度の高角度で中堅方向に飛び出すと、413フィート(約125.8メートル)地点で弾んだ。ダイヤモンドを笑顔で一周すると、ベンチではナインから祝福を受けた。

 

 これで自己最多46本塁打を放った2021年にあと1本に迫った。キャリアハイの47号を放てば、メジャー通算218本塁打となり、アジア出身選手最多の韓国・秋信守(元レンジャーズ)に並ぶ。また、49号を放てば球団タイ記録と今後は記録的アーチの量産が期待される。

 

 大谷のホームランボールをゲットしたのが、横浜から来た山田さん親子だ。父は以前ロサンゼルスに駐在していた経験もあり、大谷と愛犬デコピンのボブルヘッド人形が配られた試合も観戦し、金の特別版ボブルヘッドをゲットし、40-40も現地観戦した幸運の持ち主だ。8月から米国に来て27試合観戦予定。ドジャースがワールドシリーズまで進めば観戦予定で、車で6時間往復してアリゾナの4試合も観戦した。

 

 父は「たまたまカバーしているシートに本塁打球がきた。端っこに座っていたから。夢を見てるみたい。この球は大事に保管します。私の墓場に持って行きます」とうれしそうに話した。これまで現地取材陣が確認できる限り、大谷のホームランボールを獲得した初めての日本人となった。

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◆ 大谷翔平とガーディアンズ新監督との秘話「彼は僕に謝ってきた。最後の試合なのに…」

(日刊スポーツ)

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今季からガーディアンズを率いる新監督のスティーブン・ボート監督(39)が、ドジャース大谷翔平投手(30)との秘話を明かした。

 

 22年10月5日、アスレチックスの選手として現役最後の試合を迎えた同監督は、エンゼルス時代の投手大谷と対戦。この試合で、大谷はメジャー史上初となる投打で規定投球回&規定打席に到達した。

 

 5回1死まで完全投球だった大谷から、同監督は四球を選んだ。「パーフェクト投球だったのを打ち破ったんだ。すると彼は僕に謝ってきた。最後の試合なのに、ボール球を投げてしまったってね。でも僕は、『いや、ありがとう』って。四球で歩かせてくれて、ありがたかった」と笑い、当時のやりとりを明かした。

 

 大谷は同年、15勝9敗、防御率2・33と投手でも圧倒的な成績を残した。ボート監督は「僕は打率1割5分8厘だったからね。大谷から四球で出塁して、それで良かったんだ」と正直に明かし、周囲を笑わせた。

 

 現役最後の試合で対戦し、同監督にとっては思い出深い縁のある大谷。今季、右肘のリハビリと並行しながら、史上最速の「40本塁打&40盗塁(40-40)」を達成し、「50-50」も狙える位置にいる。ボート監督は「彼はまぎれもなく、特別な才能があり、打って、走って、投げて、我々が長い間見られなかったようなことをやっている」と称賛した。

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◆ ドジャース・大谷「50―50」Xデーは28日!?データサイトが分析 米国人記者の予想は?

(スポニチ)

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 ドジャース・大谷翔平投手(30)は前人未到の「50―50(50本塁打&50盗塁)」へ、残り22試合で44本塁打、46盗塁と視界に捉えている。現在シーズン50本塁打&53盗塁ペース。現地での注目度も高く、米データサイト「ファングラフス」は記録達成のXデーを「9・27(日本時間28日)」と分析した。スポニチ本紙は歴史的快挙への条件や障害などを、米国人記者3人に聞いた。「Quest for 50―50(50―50への探求)」の行方は――。

 

 【ロサンゼルス・タイムズ ディラン・ヘルナンデス記者予想 51―53】エンゼルス時代に自己最多の46本塁打した21年は、トラウトら主力に故障者が続出しマークが集中したことと、チームが低迷してモチベーションの維持が難しかったことの影響が大きく、本塁打王を逃した印象が強い。

 

 今年は違う。後ろにベッツ、フリーマンのMVPコンビが控え、その後もT・ヘルナンデスら強打者がそろう。大谷との勝負は避けられない。大谷が申告敬遠された直後にベッツが3ランを放った3日のエンゼルス戦が典型的な例だ。チームは優勝争いをしており、大谷の本塁打と盗塁は勝利に直結する。勝つために両方を積み上げなければならず、今は「50―50」達成に向けて、理想的な状況といえる。最終的に「51―53」と予想している。

 

 地区優勝後のチームは主力を休ませるが、「50―50」を達成していなければ、休ませることはないだろう。大谷も出場を希望するに違いない。デーブ・ロバーツ監督には大谷と心中する覚悟があり、メディアに「大谷はわがままだ」と言われたとしても、きっとかばうはずだ。記録が近づいても力まないこと、ケガをしないこと。この2点さえ注意すれば、達成は間違いない。

 

 【ジ・アスレチック ファビアン・アルダヤ記者予想 50―50】「50―50」は達成可能だと思うが、故障はいつ起きるか分からない。最近は内角への速球の攻めが多い。大事には至らなかったが、事実危ない死球もあった。8月25日のレイズ戦では左手首に、30日のダイヤモンドバックス戦でも右肘に死球を受けた。相手投手は翔平に打たせたくないため、攻めは厳しくなる。不測の事態はいつ起きるか分からない。

 

 スランプはいつやってくるか分からないが、スランプを招くのも相手投手の厳しい攻めが関係してくる。シーズンを通して翔平へのマークは厳しかったが、記録達成が近づけばさらに警戒される。

 

 バリー・ボンズが歴代最多のシーズン73本塁打を放った01年もそうだった。誰も“犠牲者”にはなりたくない。50本塁打も50盗塁も相手チームからすれば、前人未到の記録であるがゆえに、阻止したい気持ちが強い。故障、スランプ、増す一方の相手チームの警戒、これらが最大の障害となる。私の予想はそれでも「50―50」だ。

 

 【USA TODAY ボブ・ナイチンゲール記者予想 51―52】記録達成への障壁は、上位チームとの対戦が多いことだ。ア・リーグ中地区首位のガーディアンズに、カブスは好調でポストシーズンが狙える位置まで上がってきた。強豪のブレーブス、同地区2位のパドレスとの対戦も控える。パドレスのドジャースへのライバル心はここ数年でNo.1。みんな打倒ドジャースに燃えている。

 

 追い風は、ベッツ、フリーマンがいること。ベッツの復帰は大きい。彼らのような素晴らしい選手が後ろに控えることで、翔平はより多くのボールを見ることができる。

 

 昨年、ブレーブスのアクーニャは40本塁打と70盗塁が近づいた時は大騒ぎになった。ヤンキースのジャッジも60本塁打に迫る時が一番盛り上がった。誰も成し得ていない「50―50」も大騒ぎになること間違いなしだ。僕の予想は「51―52」。「50―50」を達成すれば、もっとリラックスして打てるようになる。王手をかけてからの一球一球の攻防は楽しみだ。でも、忘れてはいけない。相手チーム、相手投手は打たれたくない、走られたくないということをね。

 

 ≪今季最終カード初戦6・3%≫ファングラフスは独自のデータ算出を駆使してXデーを「9・27(日本時間28日)」と分析した。今季最終カードの敵地でのロッキーズ3連戦の初戦で「もし1試合しか観戦できず記録達成を目撃したいのなら、この今季最終カードの初戦に行くべきだ」と提言した。残る対戦チームの登板が予想される投手陣、球場ごとの左打者の本塁打確率などを加味。1試合5打席をベースにし、1試合は休養のため欠場するという前提で算出したという。なお現時点で9・27の確率は6・3%。次いで翌28日(同29日)が6・1%。26、29日(同27、30日)が5・9%となっている。

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◆ 「藤浪、来年は契約ないだろうけど…」NHK解説者が語る、藤浪晋太郎30歳“戦力外通告”からの復活プラン「まだ30歳…オファーする球団も出てくる」

沼澤典史氏/NumberWEB)

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NHK解説者の武田一浩氏(元日ハム、ダイエー、中日、巨人)によるMLBの8月総評。大谷翔平の影で奮闘する日本人メジャーリーガーについて語った。【全2回の後編/前編も公開中】

 

◆◆◆

 

 武田一浩氏が「日本人選手はみんな優秀です」と述べるように、大谷翔平が前人未到の43-43を達成した裏で、日本人メジャーリーガーも大きな活躍を見せている。

 

 大谷と同じドジャース所属の山本由伸投手は、右肩腱板損傷の影響で調整中だったが、現地時間8月28日のマイナーで2回を投げて1失点。再びマイナーでの登板を経て、9月10日カブス戦で復帰予定だという。

 

「山本は順調に回復していると思いますよ。この前、投球を見たら大丈夫そうでした。ドジャースはほぼ地区優勝は確実ですから、チームとしてはポストシーズンでの活躍を山本に期待しているんじゃないかな。タイラー・グラスノーも含めて、そこで貢献してくれればと」

 

 一方、今季休まず投げているのは、カブスの今永昇太投手だ。8月は3勝を挙げ、勝ち星は大台の二桁を突破し、11勝となった(その後、9月4日に12勝目)。以前の連載で武田氏は「シーズン13勝」と予想したが、その数字は十分射程範囲と言える。

 

「カブスは現在2位につけ、チームの状態もいい。打線の援護も期待できるため、もしかすると15勝まで伸びるかもしれませんね。結局、ストレートとチェンジアップを主体にしています。スライダーなど他の変化球を多投していないので、ピッチングの引き出しはまだあります。怪我さえしなければ、来年も同じような活躍はできると思いますよ。ただ、今永は日本にいるときは戦列を離れがちだったので、来年も1年間ローテを守れるといいんだけど……。千賀のようにならないことを期待します」

 

「今シーズンは復帰しなくていいと思うよ」

 

 武田氏が引き合いに出した千賀滉大投手(メッツ)は、故障の影響で今季は1登板にとどまっている。その登板試合でもふくらはぎを痛めるなど、現在まで調整が続く。一部報道によるとシーズン終盤の9月25日に復帰する可能性があるというが、武田氏はこの登板に否定的だ。

 

「多分投げないだろうけど、今シーズンは復帰しなくていいと思うよ。ふくらはぎの怪我は治りづらく、癖にもなりやすいから無理しないほうがいいです。来年は5年契約の3年目。今年クビってわけじゃないから、急がなくてもいいんですよ。でも、千賀も今永も日本で故障しがちだったのにメジャー1年目ではローテを守れるんだから不思議だよね。メジャーのために日本で休んでたんじゃないかって思うくらい(笑)」

 

 メジャーはボールの滑り具合やマウンドの硬さなど日本との環境の違いが指摘され、そこへのアジャストを日本人投手は求められる。もちろん、環境の違いは怪我のリスクも高めるのだが、今永や千賀はうまく1年目に調整したのだろう。

 

「これだけ投げられたら、投手としては最高」

 

 昨今はピッチクロックの導入など投手を取り巻く環境の変化は著しいが、そのなかでも武田氏の評価が高い日本人投手は松井裕樹(パドレス)だ。

 

 松井は今季リリーフとして60試合に登板し、防御率は3.60(9月4日時点)。メジャー1年目からフル回転の活躍だ。

 

「松井はすごい頑張ってるよね。僕は、彼の投げ方的にメジャーのボールが滑ると思っていましたが、杞憂でしたね。あと松井は投球動作に入るまでが長い方なのでピッチクロックへの対応も不安でしたが、見事にアジャストしていますね。多分、今季は70登板するでしょう。2試合に1回まではいかないですが、それくらいのペースで1年投げ切るのはたいしたもんですよ。これだけ投げられたら、投手としては最高です」

 

「藤浪、来年は契約ないだろうけど…」

 

 一方、バッターで気を吐いているのが鈴木誠也(カブス)だ。鈴木は8月は4本のホームランを放つなど、今シーズンは打率.276、ホームラン19本、打点64。昨年、日本人の右打者として初の20号を達成したが、今季も大台突破は間違いないだろう。

 

「今季は打率2割8分が現実的だけど、上手くいけば3割に乗るかもしれないね。あとやはり日本人の右バッターで20本はいってほしいね。おそらく最終的には23本くらいは打つと思いますよ。ただ、鈴木は今季の前半は怪我で離脱してたから、体調が万全だったら30本いっていたかもしれない。なので、来年は30本の期待が持てます。立派です」

 

 その鈴木や大谷と同級生の藤浪晋太郎は、マイナーでもがいている。ただ、8月は12イニングを投げて4四球と徐々にコントロールを取り戻しているように見える。武田氏の見解はどうか。

 

「また、いつ乱れるかわからないですね。来年、契約はないんだろうけど素質はすごいから頑張ってほしい。中継でピッチングが見られないので、なんともいえないけどね。やっぱり、スピードを求めすぎて力みが抜けないんだろうな」

 

 こう首を傾げる武田氏は「藤浪をどうやって直すか考えるため1カ月くらい必要」と投手の指導の難しさを語った。

 

「彼の場合は腕の大振りが問題なのですが、それは自分の投げ方として根付いてしまっている。それを直すための方法を考えるのに、まず1カ月かかります。あとは、ピッチャーを立て直すには“洗脳”が一番大事なんです。つまり、ピッチングスタイルの見直しや現在の自己評価と周りの評価をちゃんとコーチが聞かせること。藤浪だったら力勝負じゃないピッチングスタイルを植え付けるとかね」

 

 とはいえ、武田氏はもがく藤浪へエールを送る。

 

「まだ30歳ですから大丈夫。巨人の菅野智之は34歳で、先日13勝目を挙げましたし、僕だって33歳で最多勝をとりましたから。初心に戻ってコントロールをつければ必要とする球団もあらわれるでしょう」

 

 シーズン終盤を迎える9月。ラストスパートに懸ける日本人選手たちの最終成績に期待したい。

 

<《大谷編》から続く>

 

(「メジャーリーグPRESS」沼澤典史 = 文)

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 ■ NOTE