2024年8月15日

 

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 ■ 試合データ

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米国時間:2024年8月14日

日本時間:2024年8月15日(木曜日)

9時10分開始

ロサンゼルス・ドジャース

対ミルウォーキー・ブルワーズ

@アメリカン・ファミリー・フィールド

 

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【MLB.JP 戦評】

 日本時間8月15日、5連勝中のドジャースは敵地アメリカンファミリー・フィールドでのブリュワーズ4連戦の3戦目を迎え、初回に3点を先制したものの、4対5で逆転負け。連勝がストップし、地区2位タイのパドレス、ダイヤモンドバックスとのゲーム差が2.5に縮まってしまった。ブリュワーズ4番手のジョエル・パヤンプスが3勝目(5敗)を挙げ、5番手のデビン・ウィリアムスは2セーブ目を記録。ドジャースは先発のウォーカー・ビューラーが4回途中4失点(自責点1)で降板し、3番手のブレント・ハニーウェルが今季初黒星(0勝)を喫した。

 6連勝を目指すドジャースは、初回に無死満塁の大チャンスを迎え、ケビン・キアマイアーのタイムリー二塁打などで3点を先制。その裏に無死満塁のピンチとなったが、ケビン・キアマイアーが好返球でダブルプレーを完成させるなど、無失点で切り抜けた。しかし、2回裏にジェイク・バウアーズの10号ソロなどで追いつかれ、4回裏には三塁キケ・ヘルナンデスのエラーで勝ち越し点を献上。7回表にミゲル・ロハスが同点タイムリーを放ったが、7回裏に右翼ムーキー・ベッツのエラーで勝ち越され、そのまま4対5で敗れた。

 ドジャースの大谷翔平は「1番・DH」でスタメン出場。初回の第1打席は三塁ジョーイ・オーティズのエラーで出塁し、2回表の第2打席は四球を選んで二盗、三盗を決め、球団史上2人目となる「35-35」を達成した。しかし、4回表の第3打席はレフトライナー、7回表の第4打席は見逃し三振、9回表の第5打席はレフトフライに倒れ、4打数0安打1四球2盗塁。連続試合安打は3でストップし、今季の打撃成績は打率.295、出塁率.383、OPS1.000となっている。

 

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 ■ 今日の大谷翔平

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【スタメン】

1番DH

 

【出場成績/打者】

4打数 0安打 1得点 1三振 1四球 2盗塁

通算打率・295

OPS1・000

 

◆第1打席:

(結果)ショートゴロ・失策

(状況)1回無死走者なし

(投手)フランキー・モンタス右

※2ストライクからの3球目、相手先発・モンタスの直球を弾き返した。痛烈なゴロは打球速度101マイル(約162・5キロ)を計測し、遊撃手・アダメズが取り損ねエラーで出塁。次打者・ベッツの左前打で二塁に進むと、3番・フリーマンの左前打で三進。無死満塁から4番のT・ヘルナンデスが押し出し四球を選び、大谷が先制のホームを踏んだ。

 

◆第2打席:

(結果)四球

(状況)2回1死走者なし

(投手)フランキー・モンタス右

※フルカウントからの7球目、外角のカットボールを見送った。微妙なコースだったが球審の手は上がらずに四球で出塁。ベッツの2球目に二盗に成功、今季34盗塁目でナ・リーグ2位に並んだ。二死後にフリーマンの2球目に三塁へスタート。楽々セーフで今季の盗塁を35に伸ばした。37本塁打と合わせて、自身初の「35―35」に到達。史上6人目の「40―40」達成が見えてきた。

 

 

◆第3打席:

(結果)レフトライナー

(状況)4回2死走者なし

(投手)フランキー・モンタス右

※1ストライクからの2球目、やや外角低めの96・9マイル(約156キロ)のフォーシームを逆らわずに左翼線へ運んだ。打球速度101・3マイル(約163キロ)の痛烈なライナーはあらかじめ左翼線よりに守っていた左翼手が捕球した。

 

◆第4打席:

(結果)見逃し三振

(状況)7回無死走者なし

(投手)ジャレド・ケーニック左

※3番手の左腕ケーニッグと対戦。2球で追い込まれると3球目のほぼ真ん中の96・7マイル(約155・6キロ)のツーシームに手が出ず、見逃し三振に倒れた。

 

◆第5打席:

(結果)レフトフライ

(状況)9回無死走者なし

(投手)デビン・ウィリアムズ右

※5番手の右腕ウィリアムズに2球で追い込まれた3球目、外角高めの95・1マイル(約153キロ)のフォーシームを左翼へ運ぶも平凡な左飛だった。安打は出なかったが、強引に引っ張らずに逆方向を狙った打撃は悪くなかった。

 

【コメント】

なし

 

【NEWS】

◯ 試合前に投球練習を行った。グラウンドの芝の上でキャッチボールから始め、遠投などをこなすと、捕手役を座らせてから20球弱を投じた。捕手役が座るのは、術後初めてで、また一つ段階が上がった。投球後には少し笑みも漏らすなど、リハビリも順調のようだ。

 

◯ 4打数無安打に終わった結果、打率タイトル争いでは、6位と後退している。試合後のランキングは以下の通り。
1位 .307 ルイス・アラエス(パドレス)
2位 .299 マルセル・オズナ(ブレーブス)
3位 .298 ケテル・マルテ(ダイヤモンドバックス)
4位 .297 アレク・ボーム(フィリーズ)
5位 .2948 ジュリクソン・プロファー(パドレス)
6位 .2946 大谷翔平(ドジャース)

 

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 ■ 試合情報(ドジャース関連NEWS)

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【コメント】

デーブ・ロバーツ監督:

(試合前)

「カウント序盤から積極的に振っている。ストライクを振ってさえいれば、私は構わない。一振りで試合を変えられる選手だ」

 

「彼の(狙っている)球を振っているのであれば、数字に表れるだろうし、ムーキー(ベッツ)が控えていることで四球もついてくるだろう。(毎月)打率.340を打つことは思っていない。個人的には、いいバッティングができていると思うよ」

 

(試合後)

「守備ではミスがあった」

「試合では色々なことが起きた。1回が終わった時点では好感触だったけど、残念ながら追いつかれてしまった」

「(先発のビューラーは)制球含めて不安定な投球だった。彼はまだ(自分の投球を)模索している状況だ。安定した投球をすること。そして、彼も理解しているけど、イニングを稼がないといけない。ここにいるのであれば、活躍が求められる」

 

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 ■ 注目記事&コラム

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◆ 大谷翔平が到達した「35-35」は史上22人目。その上の「40-40」まで3本塁打と5盗塁

宇根夏樹氏/スポナビ)

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 8月14日、大谷翔平(ロサンゼルス・ドジャース)は、2回表に二盗と三盗を成功させた。シーズン34盗塁目と35盗塁目だ。

 シーズン本塁打は、すでに35本以上を数える。35本目は8月9日。さらに、12日と13日に、それぞれ、シーズン36本目と37本目のホームランを打った。

 1シーズンに35本塁打以上と35盗塁以上は、大谷が延べ22人目だ。この記録は、ホームランと盗塁の数を5刻みに区切り、どちらもが到達した地点、いずれか一方の少ないほうに揃えて表記すると「35-35」となる。

 

 

 上のリストのAのとおり、これまでの21人中、「35-35」より上の「40-40」に達したのは、1988年のホゼ・カンセコ、1996年のバリー・ボンズ、1998年のアレックス・ロドリゲス、2006年のアルフォンソ・ソリアーノに、昨シーズンのロナルド・アクーニャJr.(アトランタ・ブレーブス)の5人だ。「45-45」に到達した選手は、まだいない。

 また、ホームランと盗塁の数を5刻みに区切り、それぞれが到達した地点を揃えずに表記すると、リストのBのようになる。21人の内訳は、「35-35」が5人、「35-40」が8人、「35-50」が1人(1987年のエリック・デービス)、「40-35」が2人(1997年のバリー・ボンズと2019年のアクーニャJr.)、「40-40」が2人(1988年のカンセコと1996年のバリー・ボンズ)、「40-45」が1人(1998年のロドリゲス)、「40-70」が1人(2023年のアクーニャJr.)、「45-70」も1人(2006年のソリアーノ)だ。

 8月14日は、ドジャースの121試合目だった。レギュラーシーズンは、あと41試合残っている。121試合で37本塁打と35盗塁を、162試合に換算すると、49.54本塁打と46.86盗塁、49~50本塁打と46~47盗塁となる。この場合、Aの表記は「45-45」。一方、Bの表記は、49本塁打と46~47盗塁だと「45-45」、50本塁打と46~47盗塁なら「50-45」だ。

「45-45」に達した選手が皆無ということは、「50-45」を成し遂げた選手もいない。

 これまで、50本以上のホームランを打ったシーズンに最も多く盗塁を記録したのは、Bの表記だと「50-20」の2人、1955年に51本塁打と24盗塁のウィリー・メイズと、2007年に54本塁打と24盗塁のロドリゲスだ。ちなみに、Aの表記の場合、この2人は「20-20」となる。

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◆ 最速300号のジャッジ「ムカついていた」 怒りの一発呼んだ敵軍の戦略「闘志が湧いたよ」

(フルカウント)

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 ヤンキースのアーロン・ジャッジ外野手は14日(日本時間15日)、敵地・ホワイトソックス戦で通算300号を放った。メジャー最速の955試合目、3431打数での大台到達となったが、怒りの感情を抱いて入った打席だったことを試合後に明かした。

 4点リードの8回1死一、二塁で迎えた第4打席。ジャッジは怒っていた。直前にフアン・ソト外野手が敬遠で歩かされたからだ。ヤンキース専門番組「トーキン・ヤンクス」が公式X(旧ツイッター)に投稿した試合後のインタビュー映像によると、「敬遠にムカついていたから、闘志が湧いたよ。普段は、次の打者に繋ごうと思うからカウント3-0は見送る。でも、勝負をしたかったようだから、やるしかなかったよ」と心境を明かした。

 右腕チャド・クール投手との対戦。カウント3-0になっても集中力は途切れなかった。94.2マイル(約151.6キロ)の内角高め。見逃せばボール気味の4球目を弾丸ライナーで運んだ。打球速度110.1マイル(約177キロ)、飛距離361フィート(約110メートル)の43号3ランとなった。ソトはこの2試合で4本塁打と打ちまくっていたが、敬遠はジャッジの闘志に火をつけてしまったようだ。

「ホワイトソックスが彼を怒らせた」「アーロン・ジャッジを怒らせるなよ」「前を打つ打者がどんなに調子がよくてもジャッジとは勝負をしてはいけない」とSNSにはコメントが寄せられた。ヤンキース放送局「YESネットワーク」がXに投稿した動画によると、ジャッジは敬遠策について「私はホワイトソックスの監督ではないから、回答は控えるよ」とも語っている。

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◆ 4月の不振から立ち直り43本塁打、OPS1・174のジャッジ 好転の理由は打席での構え方変えたこと

(スポニチ)

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 ヤンキースのアーロン・ジャッジ外野手(32)が14日(日本時間15日)、敵地でのホワイトソックス戦に「3番・DH」で先発出場。MLB通算300号となる今季43号を放った。955試合での300本塁打到達は史上最速。これまでの最速記録はラルフ・カイナーの1087試合だったが、大幅に更新。1000試合未満での到達は史上初となった。

 そのジャッジだが、4月は不調、打率.207だった。そこから立ち直り、今や43本塁打、110打点、OBP・OPS1・174と他の打者を圧倒している。

 なぜ成績が好転したのか。スポーツ専門サイト「ジ・アスレチック」のブレンダン・クゥティ記者がスタンスを微妙に変えたことがうまくいったと報じている。

 5月5日、タイガースのエース、タリク・スクバルと対戦するため、通常のオープンスタンスでなく、わずかに閉じ、足を投手の方に向け、少し直立した姿勢にした。1-1カウントから、スクバルの97マイルの速球を右中間のスタンドにソロホームランとしている。そこから今のように打ち出した。ジャッジはこの変更で、スライダーなどで外角を攻められたときにうまく対処できるようになったと明かす。

 5月4日までの時点で、ジャッジはスライダーに対して打率.154、長打率.333だったが、5月5日以降は打率.348、長打率.812である。「外の球にうまく対応できるようになった。多くのチームはスライダーを外角に投げ、その後に内角の速球を投げて、また外にスライダーをという感じで攻めてくる。少し閉じたスタンスにしたことでうまく対応できる」。そしてフロントフットが目標に近い位置に着地、ほぼ直線的に投手の方を向くようになった。「着地した時はいつもスクエアにと思っているが、スタートが外側すぎると、スクエアに戻った気がしない。そのため、外角の球が遠く感じる。だから、よりスクエアにスタートすれば、ボールに対してより良い対応ができる」。

 アーロン・ブーン監督は「ジャッジのスイングが、変更後、よりボールに対し、まっすぐに出るようになった」と指摘する。「シンプルで、動作が非常に効率的になった。その上で冷静で球種をしっかり見極め、何を狙っているのかを理解している。多くを求めすぎない。よりスイングを強くしたり、余計な力を入れる必要がないこともわかっている」。ちなみにこういった微妙な変更は一度きりではない。ジャッジはその後も適切なバランスを見つけるために調整を続けている。「今の立ち方はすごく気に入っているのではないか?」と記者に聞かれると、「今のところはね」と微笑みながら返事をしたそうだ。

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◆ ド軍から“戦力外”も「彼は人格者だ」 功労者の発言に称賛の声「野球界は時に残酷」

(Full-Count)

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 ドジャースを去った左腕の対応に、称賛が相次いでいる。ブルージェイズに加入したライアン・ヤーブロー投手が、ドジャース専門ポッドキャスト番組「ドジャース・テリトリー」に出演。ドジャースは敵となってしまったが、健闘を祈る姿勢に、ファンからは「彼は人格者だ」といった声があがった。

 

 ヤーブローは7月29日(日本時間30日)に事実上の戦力外(DFA)となり、ブルージェイズにトレードで移籍した。32歳の左腕は、DFAになった時点で32試合に登板して4勝2敗1セーブ、防御率3.74をマーク。イニング跨ぎをこなし、昨夏のトレード加入後から戦線離脱は1度もなかった。

 

 地区首位を走っているドジャースから、地区最下位に沈んでいるブルージェイズへの移籍となり、チーム状況はガラリと変わった。ただ、このままドジャースがワールドシリーズを制覇すれば、チームに在籍していたヤーブローもチャンピオンリングを受け取ることができる。

 

「リングを貰ったら誇りに思いますか?」と問われたヤ―ブローは、「4か月間チームの一員だったから、間違いなく誇りに思うよ。彼らの応援もする。(ドジャースでは)たくさんの素晴らしい人たちと出会うことができた。プレーオフで彼らを見るのは少し奇妙な感じはするけど、間違いなく応援するし、幸運を祈っているよ」と笑顔を見せた。

 

 古巣への愛を感じるコメントに、ファンも反応。X(旧ツイッター)では「ライアンは本当に好きな選手だった」「彼がいなくて恋しい」「君がいなければ先発や中継ぎは今以上に負担がかかっていた」「礼儀正しい」「彼のことを思うと少し残酷だけど、野球界は時に残酷になることがある」「イニングイーターが恋しい」といった声が並んだ。

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◆ 「超人」大谷翔平はリハビリと打者の「二刀流」 大ベテランが証言する投手のケガ頻発の理由とは

奥田英樹氏/webSportiva)

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本塁打を筆頭に打者としてMVP級の活躍を続けるドジャースの大谷翔平は、来季の投手復帰を見据えた取り組みも同時に行なっている。われわれは再び「二刀流」を目にする楽しみが増すばかりだが、一方でメジャーリーグ全体では、大谷を含めて一流投手が手術を伴う肩ヒジの故障で長く戦線離脱する傾向も年々、強くなっている。

 

 なぜか? その背景について、考えみる。

 

【大谷は投手復帰に向け順調】

 

 大谷翔平は、週に3度、試合開始の3~4時間前に外野のフィールドに出て約70球のキャッチボールを行なう。最初は短い距離で足を固定して投げる。徐々に距離を長くし、足も使って、強度も上げていく。

 

 いろいろとバリエーションがある。スタンスを広げ、足を固定し、腰を低く落として投げるもの。左足、右足、左足と助走をつけて投げるもの。8月12日時点で最長距離は約45m。そこまでたどり着くと、あとは反対に距離を狭めていき、マウンドからホームプレートの距離まで戻ってくると、セットポジションから左足を高く蹴り上げて強く腕を振る。リリース時に唸り声も出る。強度は約85%だそうだ。

 

 ヘッドアスレチックトレーナーのトーマス・アルバートがポケットレーダーで球速を測定。球速は85マイル(136キロ)を超え、90マイル(144キロ)に近づいている。3月末に約9mの距離を放り投げることに始まったが、ここまで強く投げられるようになった。次の段階は投げる回数を週4回、5回と増やしていき、順調なら9月初旬にマウンドに上って投げる。そして9月下旬には、打者相手に投げる。

 

 ただ、今年のポストシーズンゲームには登板しないことは確実だ。今季についてはここまで手順を踏んでおいて、シーズンオフになったら、普通に1シーズン投げた投手のように、しばらくは肩、ヒジを休める。そして12月くらいから、次のシーズンに向けて、また投球を再開するのである。

 

 ロサンゼルス・ドジャースは2025年、3月18日と19日、東京ドームでシカゴ・カブス相手に開幕を迎える。とりあえず大谷は目標をそこに置く。7月下旬、「僕自身はリハビリ明けなので、投げられる状態に戻して開幕を迎えるというのが一番かなと思います」と大谷は明かした。日本で投げたいかと聞かれると「それくらいのクオリティでキャンプを迎えて、それくらいの信頼感で送り出してもらえるのが一番自信になる。必ずしもそこを目標にする必要はないけど、それくらいのクオリティでピッチングができる状態にしたい」と説明している。

 

 大谷のキャッチボールを観察し続けてきた、私たち記者としては、ワクワクするし、再び二刀流が見られるのかと思うとうれしい気持ちだ。しかしながら、同時にとても心配になる。ドジャースに限らず、今、メジャーの取材現場にいると、速い球を投げる投手が肩ヒジを痛め、戦線離脱を余儀なくされるシーンにたびたび出くわすからだ。

 

【技術の進化、速球への探求が肩ヒジの負担に】

 

 8月10日もそうだった。メジャー登板4試合目の25歳の若武者、ドジャースのリバー・ライアンがピッツバーグ・パイレーツの剛腕ポール・スキーンズとの投げ合いで、最速98.33マイル(157.3キロ)で5回途中まで4安打無失点と投げ勝っていた。だが、実は3回くらいから前腕に違和感が出て、イニングの合間にマッサージでほぐしていたのだが、5回に容態が悪化。この試合の56球目、投げたあとに顔をしかめる。デーブ・ロバーツ監督とアルバートトレーナーがすぐにベンチを飛び出し、ライアンの続投志願にもかかわらず、降板させた。翌日MRI検査で右ヒジ損傷が見つかり、シーズン終了と発表されている。

 

 ライアンは、大学時代は二刀流の選手だった。2021年にパドレスにドラフト11巡指名され、マイナーで遊撃手、二塁手として育成される予定だった。しかしドジャースはライアンの投手としての才能に目をつけ、2022年3月にトレードで獲得し、投手として育て直した。今年はマイナーで8試合に登板し24.1イニングを投げて、防御率2.22の好成績を残していた。

 

 ただしチームは今季、ライアンをメジャーデビューさせる予定ではなかった。ドジャースが11人の先発投手がケガで負傷者リストに登録されてしまったため、デビューを早めるしかなかった。ライアンはその期待に応え、4試合で防御率1.33、彼の先発した試合は、ドジャースはすべて勝ち、首脳陣も大喜びだった。しかし、たったの4試合でライアンのシーズンが終わった。

 

 なぜ、こんなにケガや故障が多いのか? かつてメジャーの先発投手は、長いイニングを投げるために、力を入れるところと抜くところを作るのが普通だった。だが、それがこの10年で大きく変わった。メジャー19年目、41歳のジャスティン・バーランダー(ヒューストン・アストロズ)は、次のように証言する。

 

「大きな要因はピッチングスタイルが変わったこと。みんなが1球1球、目いっぱい、より速く、よりスピンさせて投げようとしている。自分の場合は、2016年にメジャー球が飛ぶようになり、非力な打者でも反対方向に本塁打を打てるようになり、アプローチを変えないといけないと悟った。打たせて取るのではダメ。空振りを取らないと通用しないと思うようになった」

 

 ドジャースのブランドン・ゴームスGMはライアンについて、「パドレスにいたときに、彼が優れたアスリートで肩も強いことに注目していた。投手に専念すれば成功する可能性が高いとみてトレードで獲得した。うちのストレングス&コンディショニングスタッフや選手育成スタッフと連携し、現在のレベルにまで育成できた」と8月9日に、うれしそうに話していた。

 

 投手に専念させて2年ちょっとなのに、直球が速くなり、スライダーやカーブも空振り率30%を超え、ほかにシンカー、チェンジアップ、カッターも投げられる。これはピッチデザインのおかげだ。近年、高速カメラなどテクノロジーを利用し、握りや腕の振り方を改良し、効率的により強力な直球や変化球を習得できるようになった。

 

 だが、それが肩ヒジに負担を与えている。ドジャースはドラフトで優れた人材を指名し、上手に育成する。しかし、そういった投手が次々にケガをする。その防止策は見当たらない。ゴームスGMは12日、「メジャーリーグ全体で見ても、この2、3年間、ケガがまったくなかった先発投手は非常に少ないのが現状。私たちは引き続き、選手を健康に保つための方法を模索し、さまざまな要因を考慮して取り組んでいくしかない。球界全体で改善策を見つける必要がある」と話していた。

 

【3度の大手術を経て活躍するベテラン投手の哲学】

 

 そんななか、興味深い話をしてくれたのが、ドジャースのベテランリリーフ投手、ダニエル・ハドソンだ。メジャー15年のキャリアで、右ヒジ側副靱帯再建術(通称トミージョン手術)を2度、左膝前十字靭帯断裂手術が1度と、計3度も大手術を受けている。一方で通算531試合に登板し、65勝44敗、41セーブ。2019年、ワシントン・ナショナルズ在籍時は、ワールドシリーズの胴上げ投手となった。彼は自らを「ケガのエキスパート」と呼ぶ。そして今の野球界ではケガは避けられず、それを受け入れてキャリアを送るしかない、と説く。

 

「MLBのピッチングのレベルは年々上がっている。そこでクビにならずに雇い続けてもらおうと思えば、球団に評価されるようなピッチングができないといけない。つまり速い球を投げられないといけないし、空振りを取れる変化球を投げないといけない。だから投手にケガをしないように速い球を投げるなというのはまったく現実的な話ではない。速い球を投げることがアウトを取るための手段で、お金にもつながる。この流れは変えられない。これが現実だ」

 

 ケガは避けられないから、大事なのはケガをしたときに、どれだけ適切な処置を受けられるか。つまり球団のバックアップだ。昨オフ、ハドソンがドジャースとマイナー契約で残留を決めたのは、ここのメディカルスタッフならベストのケアを受けられると信じたからだ。

 

「ドジャースには2018年、2022年、2023年といて、彼らがとてもよくしてくれた。ありがたいことに、ここ数年は腕のケガはないけど、足とか、身体のほかの部分に問題があった。それでも、すごくよくケアしてくれた。医療スタッフは優秀だし、コーチ陣ともしっかり連携が取れている。リハビリやフィジカルセラピーを受けるにはここが最適で、ほかのチームには行きたくなかった」と説明する。

 

 ハドソンはまた、若いチームメートの相談にも乗る。29歳の先発投手、ウォーカー・ビューラーは2度、右ヒジ側副靱帯再建術を受けているが、「昨年の夏にアリゾナでリハビリで一緒になり、長い時間を一緒に過ごした。リハビリは精神的にも肉体的にもきつい。良い日があったかと思えば、悪い日になったり、その繰り返し。どんな悩みがあったかをいろいろ話すことで、彼にとってもよかったと思う」と振り返る。

 

 さて、そのハドソンに大谷の今年のリハビリについて聞くと、目を丸くしていた。

 

「率直にすごいなと思う。私は打撃の専門家ではないけれど、打撃でももちろんヒジを使っている。翔平がヒジのリハビリを行ないながらバッティングで打ちまくっているのは、投打の二刀流で大活躍しているのと同じくらい、私には衝撃的だ。

 

 その日の早い時間に投手のリハビリをこなし、そのあとに打撃や走塁のための準備をする。それで、リーグの本塁打王で、盗塁も33個を決めて、フォーティ・フォーティ(40本塁打・40盗塁)のチャンスがある。超人、本当にユニコーン(神話や伝説の生き物)だと思う」

 

 大谷は今年、打者だけでもMVPレベルの活躍で、仮に投手を断念したとしても、スーパースターでい続けられる。それなのに、辛抱強く、投手のリハビリを続けている。

 

 そのことについてハドソンは、敬意を払う。

 

「大きな手術から復活するのは本当に大変なこと。私にはよくわかる。それだけに翔平がまた投げたいという強い気持ちを持ち続けることには頭が下がる。そして心から応援したい。来年は投打にスーパースターのプレーが見られる。本当に楽しみ」。

 

 現状、投手のケガは避けられない。それをわかっていても再びマウンドを目指す大谷。敬服するだけなのである。

 

奥田秀樹●取材・文 text by Okuda Hideki

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 ■ NOTE