2024年7月17日

 

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 ■ 試合データ

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米国時間:2024年7月16日

日本時間:2024年7月17日(木曜日)

9時00分開始

ナショナル・リーグ

対アメリカン・リーグ

@グローブライフ・フィールド

 

 

【MLB.JP 戦評】

 日本時間7月17日、レンジャーズの本拠地グローブライフ・フィールドで第94回オールスター・ゲームが行われ、3対3の同点で迎えた5回裏にジャレン・デュラン(レッドソックス)の2ランで勝ち越したア・リーグが5対3で勝利した。ア・リーグ5番手のメイソン・ミラー(アスレチックス)が5回表の1イニングを三者凡退に抑えて勝利投手となり、9番手のエマニュエル・クラセ(ガーディアンズ)はセーブを記録。ナ・リーグ5番手のハンター・グリーン(レッズ)は決勝弾を浴び、敗戦投手となった。

 

 ポール・スキーンズ(パイレーツ)とコービン・バーンズ(オリオールズ)の先発で始まった今年のオールスター・ゲームは、3回表に大谷翔平(ドジャース)の豪快な3ランでナ・リーグが先制。しかし、ア・リーグは直後の3回裏に一死2・3塁のチャンスを迎え、フアン・ソト(ヤンキース)の2点タイムリー二塁打で1点差に詰め寄ると、二死後には代打デービッド・フライ(ガーディアンズ)のタイムリーで同点に追いついた。5回裏、ア・リーグは二死からアンソニー・サンタンデール(オリオールズ)がヒットで出塁し、続くデュランがオールスター初打席本塁打となる勝ち越し2ラン。継投でこの2点を守り、5対3でナ・リーグを破った。

 

 大谷は「2番・DH」でスタメン出場し、四球、先制3ラン、空振り三振で2打数1安打3打点1四球。2021年のオールスター・ゲームで勝利投手になっており、オールスターで勝利と本塁打を記録した史上初の選手となった。一方、今永昇太(カブス)はナ・リーグの4番手として4回裏に登板。ブラディミール・ゲレーロJr.(ブルージェイズ)をセカンドゴロ、アドリー・ラッチマン(オリオールズ)を空振り三振、マーカス・セミエン(レンジャーズ)をレフトライナーに仕留め、1イニングを三者凡退に抑える好投を見せた。

 

 

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 ■ 今日の大谷翔平(関連NEWS)

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【スタメン】

2番DH

 

【出場成績/打者】

2打数 1安打 3打点 1得点 1三振 1四球 1本塁打

 

 

◆第1打席:

(結果)四球

(状況)1回1死走者なし

(投手)コービン・バーンズ右

※バーンズ(オリオールズ)相手に、カウント1-2から3球連続見送って四球を選んだ。

 

◆第2打席:

(結果)ホームラン

(状況)3回無死1、2塁

(投手)タナー・ホウク右

※待望のオールスター戦初アーチが飛び出したのは通算8打席目。3回無死一、二塁でマウンドは3番手の右腕ホーク(レッドソックス)。2ボールからの3球目、真ん中低めの88・7マイル(約142・7キロ)のスプリットを豪快に振り抜いた。大谷は確信歩き、客席は大歓声だ。打球角度29度、打球速度103・7マイル(約166・9キロ)の弾丸ライナーは右中間席に飛び込んだ。自身のオールスター戦初アーチは打球飛距離400フィート(約121・9メートル)。試合中に応じた会見で「ちょっと先気味でしたけど、いい角度で上がったので十分入るんじゃないかなと思いました」と振り返った。

 

 

 

 

 

◆第3打席:

(結果)空振り三振

(状況)5回1死走者なし

(投手)メイソン・ミラー右

※5番手の右腕ミラー(アスレチックス)との対戦になった大谷。3球目には163キロを計測したフォーシームに手が出なかった。最後は内角低めのスライダーで空振り三振。2打席連続の快音は響かなかった。

 

【コメント】

交代後

――出番を終えて。
「あまりオールスターで打てていなかったので、まずはいいヒットが出たのが自分としてはホッとはしました」

――打席でどんな心がけを。
「自分の普段通りの打席をまずは送りたいなと思っていたので、シーズンの延長でいいアットバットを心掛けました」

――MVPは。
「そうですね、できれば獲りたい気持ちはもちろんありますけど、自分としてはもう終わった仕事なので、いい1日だったなと思います」

――もし獲れたら(MVPはレッドソックスのジャレン・デュランが受賞)。
「すごく光栄なことですし、ここに出られること自体光栄なことですけど、そこでMVPを獲る選手というのはそれだけ名誉なことだなと思います」

――何が一番楽しかったか。
「やはりゲームが今日楽しかったですし、そこで打てたことが一番自分にとっては特別な瞬間だったかなと思います」

――これから長いことプレーする(ドジャースという)チームについて。
「まずドジャースで勝つことを第一に考えていますし、ドジャースの一員として今回選んでもらってすごく光栄なことだなと感じているので、何回でもドジャースの代表としてここに来られるように、そういう野球をしたいなと思っています」

――メイソン・ミラーと対戦(空振り三振)した感想は?
「素晴らしかったです。全球種、スライダーも威力のあるボールで、ちょっと難しい、素晴らしい投球だったかなと思います」

――何年もア・リーグのクラブハウスにいましたが、(今年は)ナ・リーグのクラブハウスです。感想をお聞かせください。最も驚かされたスター選手は誰ですか?
「この前まではアメリカン・リーグの敵として数多くやっていた選手もいましたけど、その中でブライス・ハーパー選手(フィリーズ)は、一緒にケージワークしたり、試合前どういう練習しているのかなと見たりしたので、凄く勉強になりました。」

――昨日、ソト(ヤンキース)が「一緒にプレーしたい」と言っていました。
「ただただすごく光栄ですね」

 

――ア・リーグの投手とは何度も対戦していると思うが、どうアプローチしてあのスイングになったのか。
「今日はシーズンの延長だと思って、本当に同じ準備の仕方だったりとか、試合前の過ごし方だったりとか。レギュラーシーズンと何も変わらずに、同じことをやりました」

――本塁打を打った後、どんな祝福をチームメートから受けて、どんなことを話したか。
「ナイススイング、グッドジョブだと。シンプルですけど。色んな選手と話す中で、試合以外もそうですけど、色んなコミュニケーションを取れるっていうのは、オールスターならではだと思います」

――ハウクはスプリットが真ん中に行ってしまったと言っていたが、HRの感触は。
「いい角度で上がってたので、十分入るんじゃないかなとは思いました」

――ハーパーのどんな練習に学びを得たのか、今後自分に生かしたい練習は。
「どんな練習をしているかはちょっと言っていいか分からないので、本人いないですし。自分が見て勉強になったというところはあるので、自分の練習にももちろん取り入れられるところはあると思いますし、その時その時で誰がどういうふうに取り組んでいるかというのは自分に取り入れるべきではないかなと思います」

――後半に向けてこのオールスターがどう生きてきそうか。
「これはこれで、オールスターというのは完結していると思うので、また各々のチームに帰った後というのはチームのプレーに戻りますし、それとこれはまた別々なことかなと思います」

――メンタル的には楽しめる、リラックスできる舞台だったか。
「普段一緒にやらない、別々のチームで、敵のチームの選手たちとできるのは特別だと思いますし、ここに選ばれるレベルの高い選手たちとできるのがまず特別な事だなと思います」

――シーズンと同じ調整をしたとのことだが、昨年まではどういう調整をしたのか。期待されている中での本塁打は自信になるか。
「投げる投げないとかによってだいぶ変わってくるので。今年はDHで打席だけだったので、やることは特にシンプル。それがいい結果につながっているかどうかは分からないですけど、今年はそういう感じでやりました」

 

――レッドカーペットに愛犬デコピンが来なかったのは。
「トイレでもしたらちょっと困るので。お留守番をしていました」

――スーツにはたくさんデコピンが描かれていたが大谷選手の発案だったのか。
「そうですね。2人で歩くのは決まっていたので、色をどうしようかというのを最初、ブラウンと白でいいんじゃないかなという感じで、じゃあ裏に入れようかみたいな感じでした」

――ホッとしたという話だったが、周囲から本塁打を期待する声があったのか。自分の中でこういう場所で打たないといけない感情だったのか。
「自分が打ってみたいなと、こういう、なかなかある機会ではない試合で、そういう1本を打ってみたいなというところで言うと、自分の中で1つ打ててホッとしたところがあるのかなと思います」

――後半戦開始までの2日間はどう過ごしたいか。
「早くLAに戻って、いい休日を過ごして、また後半戦しっかりいい野球ができる準備をしたいなと思います」

 

 

【NEWS情報】

◯ 大谷が恒例のレッドカーペットショーに真美子夫人と手をつないで登場した。裏地に愛犬デコピンがプリントされたベージュのスーツを披露すると、会場は大歓声に包まれた。隣では真美子夫人が白のドレスで笑顔を見せた。レッドカーペットを歩いた感想を「選んでいただいてありがとうございますというのと、何度来ても素晴らしいですし光栄だなと」と爽やかに話した。真美子夫人の服装について聞かれると「普段にはない格好だと思うので、本人も楽しみにしていたと思うので、ハイ。今日は楽しみたいと思います」と答えた。

 

 

◯ MLBネットワークのインタビューで“デコピンスーツ”であることを自ら解説した。まず「これはBOSSです」と、自身がブランドアンバサダーを務めるBOSS製のスーツであることを明かした。またファッションのポイントについて聞かれると「色は自分の愛犬の色で、中に自分の犬がプリントされています。ハハハハハ」と笑いながら裏地を披露。左側には大きなデコピン、右側には小さなデコピンが何匹も描かれており、司会者たちも「ワオ! いいですね」と驚きの声を上げていた。

 

今季からドジャースに移籍。「街自体も好きですしドジャースタジアムも大好きな球場なので、毎日多くのファンの人に入ってもらって毎日楽しんでいます」と充実感を漂わせていた。

 

また新人ながらナ・リーグの先発を任されるパイレーツのポール・スキーンズ投手から受けた衝撃を明かした。「初対戦の1打席目は速すぎて見えなかったですね。ミットに収まってから振っているような感覚だったので」とスキーンズの才能を称賛。「2打席目の本塁打は適当に振ったら当たりました」と笑った。

 

 

◯ 大谷が本塁打を打つ直前、オールスター戦の中継をしていた「FOXスポーツ」ではヤンキースのフアン・ソトとアーロン・ジャッジの両外野手が守備中にインタビューを受けていた。ジャッジはジャッジ「彼が毎年していることは驚異的だ。そして今年はトミー・ジョン手術明けで打率.316に30HR近くを打っている」と脱帽。言葉を発した直後に“その時”が来た。実況のジョー・デービス氏は「ソトは動きもしない オオタニがオールスターゲームでHRを打ちました!」と興奮混じりに実況。右翼を守っていたソトは文字通り一歩も動かず、大谷の本塁打を見送っていた。

 

◯ 大谷は試合中にNHKのインタビューに応じ、「先制点を取れてよかったです。いいスイングだったなと思います。いい角度で上がってくれたと思います」と振り返った。過去3度のオールスターでは4打数1安打。本塁打はなかった。「オールスターではなかなか打てていなかったので、1本いいのが打てて良かったです」とホッとした様子。昨年までとは異なるリーグでの出場。「普段なかなか話せない選手と話せるので。違うリーグの選手といい時間を過ごせていると思います」と充実した表情で話した。

 

 

◯ 右翼席で大谷のホームランボールを取得したのがクリス・ハドルストン(40)さんだ。モンタナ州在住で「14歳の息子と7時間以上かけてきた。40歳の誕生日プレゼントとしてこのチケットを妻からもらった。ブレーブスファンだけど翔平ファン。彼のオールスター初アーチとは知らなかった。売らずにキープする。最近野球を始めた息子に渡す」と話した。

 

 

◯ カブスの今永昇太投手が4回にナ・リーグの4番手で登板し、1イニングを三者凡退で抑えた。今永は登板後の会見で自身の登板について「投げてる時は夢のようでふわっとした気持ちだった」と振り返ると、3回に先制3ランをマークした今回は同僚の大谷については「彼はこの場でもスターになってしまうんだと、ジェラシーを感じました」と笑顔で答えた。

 

 

◯ 大谷がオールスターゲームで着用したヘルメットが「MLBオークション」にかけられ、開始からわずかな時間で早くも1万ドル(約157万円)を突破した。オークションは米国東部時間の16日午後11時50分(日本時間午後0時50分)にスタート。10ドルからスタートし、一気に最初の大台に到達した。昨年は球宴で使用したヘルメットが9万8010ドル(約1367万円)で落札。サイン入りユニホームは5万10ドル(約699万3573円)まで値を上げた。締め切りは米東部時間25日午後8時(日本時間26日午前9時)まで。

 

 

◯ レッドカーペットショーに大谷は真美子夫人と登場。裏地に愛犬デコピンが描かれた特注のHUGO BOSS製の茶色のスーツを身にまとった。真美子夫人も同社製品の白のノースリーブパンツドレスだった。ヒューゴボスジャパンによると、大谷のスーツは裏地などが特注品のため、定価はない。裏地などは受注していないが「BOSS MADE TO MEASURE」という一般消費者も購入できる体形に合わせたスーツであれば、2ピースが41万5000円、3ピースが49万円でドイツ本社に注文可能だという。通常は発注から8週間程度で届く。同社は、真美子さんのパンツスーツについては、同社製品であること以外は答えられないとした。

 

 

◯ 松坂大輔氏が17日、自身がキャスターを務めるテレビ朝日系「報道ステーション」に生出演した。松坂氏は現地で取材。熱戦から一夜明け、現地時間の朝8時前から中継で出演した。球場前でカメラの前に立った松坂氏は、球宴で初の本塁打放ったドジャース・大谷について「去年に比べても、よりスターになった。歓声も明らかに他の選手より大きかったし、正真正銘“メジャーの顔”になったと思います」と話した。

 

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 ■ 試合情報

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【コメント】

フレディ・フリーマン内野手:

「(大谷について)いつも笑顔で楽天家。いつも人々を驚かせ続ける。彼は何でもできる。オールスターゲームで3ランを打ったように、人々が彼に期待していることを成し遂げることができる。それは凄いことです。彼は毎回それを成し遂げている。特別な選手だ」


「(普段から息子のチャーリー君と笑顔で交流する大谷の人柄について)彼の振る舞いは友達のように感じさえる。それがショウ(大谷)の特徴だ。私の家族や子どもたちにも優しい。彼は私が毎日見ることができる特別な人」

 

 

プライス・ハーパー内野手:

「(大谷のコメントを受け)私とイエリ(イエリチ)、トレイ(ターナー)、他の何人かで手をどこにセットするかとか、そういったことを話していた。そんな姿勢が故に、彼はあれほど成功できるのだろう。もともとの才能も素晴らしい」

 

エリー・デラクルス内野手:

「(球宴前、大谷と話すために日本語を練習していたと明かしていたが)少し話したよ。試合のこととかね。(ホームランは)ナイスだったね。(習得した日本語について)アリガトウ、コンニチワだね(笑)」

 

マーセル・オズナ外野手:

「この野球界で特別な才能ある選手で、世界でベスト選手の1日でもある。僕にとって彼と一緒にプレーできることはアメージングだった。I love him(僕は彼が大好きだ)。彼はベスト。とてもハッピーだったよ」

「(タイトル争いをしている二人。前日、外野のフィールドで談笑していた話題の1つとして)そんな話もしたよ。『あんまり離さないでくれよ。そうすればついていける』とね」

 

ポール・スキーンズ投手:

「クラブハウスで受け入れてくれた。本当にクールだった。キャリアで彼(大谷)より優れた打者は知らない。彼とベンチにいられたのは非現実的だった」

 

コービン・バーンズ投手:

「楽しかったよ。ショウヘイに四球を出さなかったらよかったんだけど、楽しかった。最高の選手たちに囲まれた雰囲気は言葉に表せない」

 

タナー・ホーク投手:

「スプリットが真ん中に入った。もう少し外角にいい球を投げたかった。チームメートが3点を取り戻して助けてくれた」

 

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 ■ 注目記事&コラム

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◆ 21年のMVP同士・ハーパーとの初共演に見た大谷の余裕 周り見えている4年目の“風格”

柳原直之氏/スポニチ)

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【ヤナギタイムズ】日本ハム時代の13年12月から大谷を本格取材し、TBS系情報番組「ひるおび」、「ゴゴスマ」などに随時出演する本紙MLB担当・柳原直之記者(38)の連載コラム「ヤナギタイムズ」。今回はドジャース・大谷の4度目の球宴に迫った。

 ドジャースの大谷は4年連続4度目の球宴で、ナ・リーグでの出場は初めてだった。試合後の会見。「ナ・リーグのクラブハウスで最も驚かされた選手は?」という質問に「ハーパー選手は一緒にケージワーク(室内打撃練習)をして、試合前にどういう練習をしているのかも見た。凄く勉強になった」と発言。4年目の落ち着きか、よほど印象に残ったか。自ら具体的な選手名を披露すること自体が珍しかった。

 選出8度目の31歳のハーパーは故障の影響などで、18年以来6年ぶりの出場。21年にはア、ナに分かれMVPを受賞し合った大谷との初共演は注目点の一つだった。メジャー挑戦を翌年に控えた17年のキャンプ中、大リーグ公式サイトのインタビューで「ハーパー選手の打撃を見るのが好きです」と答えたことがあった。前日、ハーパーにこの発言を伝えると「僕も彼の打撃が大好き。バットがボールを突き抜けていくような感じが印象的だ」とうれしそうだった。

 試合だけでなく、練習から共演が実現したことは感慨深かった。試合後のハーパーは「私とイエリチ、ターナー、翔平らで“構える時に手をどこにセットするか”など話していた。翔平はそういう(助言を取り入れる)姿勢があるから、あれほど成功できるのだろう」と感心していた。

 記者にとっても4年連続4度目の球宴。大谷と同様に右も左も分からなかったコロナ下の21年と比べると周りが見えてきた…はずだった。この日の大谷の会見。私は予定していたハーパーに関する質問が直前で出たため、急きょ内容を変更。「本塁打が期待された中で打ったことで自信になり、自分の中で変わりそうなものはあるか?」と質問した。焦点がぼやけ、別の記者からも「まとまりがない質問したな~」とイジられる始末。大谷のように謙虚に勤勉な姿勢で精進していきます。

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◆ 大谷翔平のメジャー通算200号本塁打で話題の「ベストな1発」脅威の一撃を浴びた右腕は「あのレポートはなんだったんだ?」と嘆いた

杉浦大介氏/webSportiva)

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【度肝を抜かれた弾丸ライナー】

 

 ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平は現地時間7月13日、デトロイト・タイガース戦で今季29本目のホームランを放ち、メジャー通算200号に到達。その前後には、一部のファンや関係者の間で「大谷のどの本塁打がベストだったか」が話題になった。

 

 筆者の答えは2018年春から変わらない。メジャーデビュー直後の同年4月27日、当時はロサンゼルス・エンゼルスの一員だった大谷がニューヨーク・ヤンキース戦で放った"弾丸ライナー"が忘れられないのだ。

 

 その試合にヤンキースの捕手として出場したゲイリー・サンチェス(現ミルウォーキー・ブルワーズ)が「自信を持って要求し、意図した通りのコースに来た。でも、素早いスイングで捉えてしまったのだから、彼を褒めるしかない」と述べた通り、カウント1-1からルイス・セベリーノ(現ニューヨーク・メッツ)がインサイドに投じた97.2マイル(約156キロ)の速球は、ストライクゾーンからは外れていたが失投ではなかった。その球を大谷は、腕を上手にたたんで完璧に捉え、打球速度112マイル(約179キロ)の弾丸ライナーで本塁打にしてしまった。

 

 打球はエンゼルスタジアムの右翼にある記者席の前を高速で通過。その打球の速さと迫力に度肝を抜かれ、言葉を失ったことを、まだ昨日のことのように覚えている。

 

 あれからもう6年強――。大谷のメジャー4本目となる本塁打を献上してからかなり時間は経ったが、この脅威的な一発は打たれた投手の脳裏には鮮明に残っているようだ。

 

 7月上旬、現在はメッツのユニフォームを着るセベリーノに、 その本塁打について「200本のなかで、印象的な本塁打として多くのメディアが挙げている」と説明すると、ドミニカ共和国出身の右腕はすぐに記憶を紐解き始めた。

 

「あの年の春、大谷はスプリングトレーニングで不調だったことをよく覚えている。私たちが手にしたスカウティングレポートにも、"インサイドの速球には対応できない"と明確に記されていた。それでその通りに投げたら、あんな本塁打にされてしまった。『あのレポートはなんだったんだ?』と思ったよ」

 

【セベリーノが被弾から得た教訓】

 

 セベリーノの言葉どおり、2018年の大谷はオープン戦では打率.125と苦しんだ。現地の一部メディアからは「まずはマイナーで起用すべき」と、今考えれば信じられない声も上がっていた。2018年にヤンキースのエースとして19勝(8敗)を挙げ、平均球速97.6マイル(約156キロ)をマークした右腕の元に、「インコースに投げておけば大丈夫」というレポートが届いていたとしても不思議はない。

 

 しかし、開幕後に別人のようになった大谷は、4月3日から3試合連続で本塁打を放つなど活躍し始める。セベリーノも、その打棒の餌食となってしまった。開花の要因としては、環境への適応、ノーステップ打法の成功などが挙げられるだろう。ともあれあの被弾は、メジャーで存在感を放ち続けているセベリーノの重要な教訓になったという。

 

「あの速球はいい球だった。それに対し、大谷はすごいスイングをした。振り返ってみれば、本当にいい経験だったと思う。『コンピューターの数字が常に正しいわけではない』と身に染みてわかったから(笑)。人間は成長するし、対応できるようになる。だからこちらも適応しなければいけない。以降、大谷に対してはいい投球ができているはずで、あれが唯一のミステイクだよ」 実際にその後、セベリーノは大谷にはホームランを1本も許していない。2度目の対戦以降は5打数2安打、1三振1四球と決して抑えているとは言えないものの、許容範囲ではある。内外角の両方を慎重に使い、同様の攻め方を繰り返さないことが基本になった。

 

「速球にしろ、チェンジアップにしろ、大谷に対してはアウトサイド中心に投げるようになった。インサイドに真っすぐも投げるけど、どちらかといえば"見せる"ため。甘く入ると、クイックなスイングで打たれてしまう。いい打者だよ。

 

 あとは、ひとつの打席内で同じコースに同じ球を投げないこと。異なる球を混ぜて勝負することが重要になる。追い込んで、(ボール球を)追いかけさせるのがベストかな」

 

今やメジャー最高級のスラッガーとなった大谷に対し、明確なウィークポイントは指摘されていない。だとすれば、複数のコース、球種を巧みに使い、的を絞らせないのがほぼ唯一の攻略法。それらは強打者への常套手段でもある。

 

 そのような攻め方をされるようになったことは、あの衝撃的な一発を放ったあと、大谷が"エリート・スラッガー"としてリスペクトされるようになった証しとも言えよう。

 

 最後になるが、セベリーノも"二刀流"の志願者であることを記しておきたい。大谷に触発されたからかどうかはわからないが、打撃練習も好きなのだという。

 

「実は私も打つのが好きで、毎日のように(バッティング)ケージに行って練習している。ただ、(チームのコーチ陣は)私がそれをやるのを好まない。二刀流にはしたくないようだ。私にもできると思うんだけどね(笑)」

 

 おそらくジョークだろうが、それでもセベリーノは「いずれ大谷としっかり話してみたい」とライバルに対して興味津々だった。

 

 伝説的なデビューから6年が経ち、早々に200号に到達した球界の"ユニコーン"は、さまざまな意味で他のメジャーの選手たちの目標、基準となる存在になったのである。

 

杉浦大介●取材・文 text by Sugiura Daisuke

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◆ 前半に最も多くのホームランを打った選手は本塁打王を獲得しているのか。今年はジャッジと大谷がトップ

宇根夏樹氏/ナビスポ)

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 今シーズン、オールスター・ブレイクまでに最も多くのホームランを打ったのは、ア・リーグが34本のアーロン・ジャッジ(ニューヨーク・ヤンキース)、ナ・リーグは29本の大谷翔平(ロサンゼルス・ドジャース)だった。

 

 2人とも、シーズン前半にリーグ最多のホームランは3度目だ。ジャッジは、2017年の前半30本塁打と2022年の前半33本塁打がア・リーグ1位。どちらのシーズンも、本塁打王を獲得した。今のところ、この2シーズン以外の本塁打王はない。

 

 大谷は、2021年の前半33本塁打と2023年の前半32本塁打がア・リーグ1位。2度目の2023年は本塁打王となったが、1度目の2021年は、サルバドール・ペレス(カンザスシティ・ロイヤルズ)とブラディミール・ゲレーロJr.(トロント・ブルージェイズ)の後塵を拝した。大谷のシーズン46本塁打に対し、2人は48本塁打を記録した。

 

 短縮シーズンの2020年を除く、直近10シーズン(2013~19年と2021~23年)の前半トップと後半トップは、以下のとおり。1チーム60試合の2020年は、オールスター・ブレイクがなく、ア・リーグは22本塁打のルーク・ボイト、ナ・リーグは18本塁打のマーセル・オズーナ(アトランタ・ブレーブス)がタイトルを手にした。

 

 

 前半に1位あるいは1位タイの延べ24人中、そのシーズンに本塁打王は、41.7%の10人だ。半数に満たないが、後半に1位もしくは1位タイの本塁打王は30.8%(8/26)なので、前半トップのほうが割合は高い。もっとも、これは、当然の結果だろう。前半の試合数は、後半よりも多い。

 

 2013~19年と2021~23年の本塁打王、延べ24人のうち、前半と後半のどちらも1位――1位タイを含む――は、2017年のジャンカルロ・スタントン(当時マイアミ・マーリンズ/現ヤンキース)、2022年のジャッジ、2023年のマット・オルソン(ブレーブス)の3人だ。前半も後半も単独1位は、2年前のジャッジだけ。どちらのスパンも、ア・リーグだけでなく、両リーグで最も多くのホームランを打った。

 

 2017年のジャッジや2023年の大谷のような、前半1位&後半2位以下の本塁打王は7人。一方、2021年のペレスのような、前半2位以下&後半1位の本塁打王は5人だ。

 

 24-3-7-5=9だ。あと9人の本塁打王は、前半も後半も1位ではなかった、ということになる。直近では、2021年のゲレーロJr.がそう。前半の28本塁打は、トップの大谷と5本差の2位。後半の20本塁打は、ペレスより7本少なく、このスパンの5位タイに位置した。

 

 このパターンで本塁打王を獲得したナ・リーグの直近は、2019年のピート・アロンゾ(ニューヨーク・メッツ)だ。こちらは、前半も後半も2位。前半の30本塁打が1位と1本差、後半の23本塁打は1位と6本差だった。

 

 なお、2013年の後半にア・リーグ1位の17本塁打を記録したアルフォンソ・ソリアーノは、7月下旬のトレードにより、ナ・リーグのシカゴ・カブスからア・リーグのヤンキースへ移った。前半にカブスで16本塁打、後半はカブスで1本塁打とヤンキースで17本塁打だ。

 

 2015年のスタントンは、前半にナ・リーグ最多の27本塁打ながら、7月を迎える前にシーズンを終えた。2014年の前半に21本塁打――スタントンと並ぶナ・リーグ最多――のトロイ・トゥロウィツキもそれに近く、後半は最初の2試合しか出場していない。

 

 今シーズン前半の本塁打ランキング(15本以上)は、こちらにリストを記載した。

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 ■ NOTE