2024年7月15日

 

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 ■ 試合データ

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米国時間:2024年7月14日

日本時間:2024年7月15日(月曜日)

2時40分開始

ロサンゼルス・ドジャース

対デトロイト・タイガース

@コメリカ・パーク

 

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【MLB.JP 戦評】

 日本時間7月15日、ドジャースはタイガースとの3連戦の3戦目に3対4で2日連続のサヨナラ負け。ドジャースは3対2とリードして迎えた9回裏、代打ジャスティン=ヘンリー・マロイのタイムリーを浴びてまず同点に。さらにその後投手ヨハン・ラミレスが2連続でバントの処理を誤り、あえなく4対3で敗れた。3番手で登場したタイガースの前田健太は3.2回無失点5奪三振の活躍だった。なおドジャースの大谷翔平も4打数2安打の活躍だった。

 

 ドジャースは初回、4番テオスカー・ヘルナンデスのタイムリー二塁打、5番アンディ・パヘスが続いてタイムリー。さらに二死1・3塁からダブルスチールを試みて、一塁走者がアウトになる前に三塁走者が還って、初回一気に3点を先制する。タイガースは2番手ライアン・ヤーブローへの代わり端を叩き、犠牲フライで1対3に。さらに6回にも内野ゴロの間に1点を返した。

 

 タイガースは3番手としてブルペンに転向したばかりの前田健太を4回から投入する。4回は見逃し三振を含む三者凡退。5回は二死から大谷翔平に内野安打を許したが、大谷がその後二塁で盗塁死しイニングが終了。そして、5回は3番フレディ・フリーマンと4番ヘルナンデスからスライダーで連続三振を奪い三者凡退。続く7回は先頭の2打者を難なく打ち取ったところで降板。トータルで3.2回無失点1安打5奪三振という好成績で、リリーフ投手としての今季初登板を最高の形で終えた。

 

 9回まで3対2でリードしていたドジャースだったが、昨日に続いて9回裏が鬼門だった。8回から登板していた5番手ヨハン・ラミレスは、先頭に三塁打を浴び、さらに代打ジャスティン=ヘンリー・マロイに二遊間を破る同点タイムリーを許してしまう。続く、9番ライアン・ビレイドは犠牲バントでチャンス拡大を試みたが、これを投手のラミレスがエラー。無死1・2塁となってから、タイガースは続く1番ウェンシール・ペレスにも犠牲バントさせ、ラミレスはこれをまたしても三塁に悪送球。これを見た二塁ランナーは悠々と本塁へと還り、タイガースは4対3と2日連続のサヨナラ勝ちを収めた。

 

 ドジャースの大谷は「1番・DH」でスタメン出場。1回表先頭の第1打席はセンターライナー、3回表先頭の第2打席もライトライナー、5回表二死走者なしの第3打席は前田から内野安打を記録。これで前田との直接対決は9打数3安打としている。さらに8回二死走者なしの第4打席はライト前へのクリーンヒットを放ち、4打数2安打とした。今日の試合を終えて、前半戦成績を打率.316、出塁率.400、OPS1.035、29本塁打、69打点、23盗塁。多くのスタッツで自己最多を更新した。

 

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 ■ 今日の大谷翔平(関連NEWS)

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【スタメン】

1番DH

 

【出場成績/打者】

4打数 2安打

通算打率・316

OPS1・035

 

◆第1打席:

(結果)センターライナー

(状況)1回無死走者なし

(投手)ボー・ブリースケ右

※先発ブリースケが投じた初球の外角低めの真っ直ぐを強振。打球速度111・3マイル(約179・1キロ)の鋭い打球が中堅後方を襲ったが、中堅手・ビアーリングが背走しながら、最後は少しジャンプする形でキャッチされた。

 

◆第2打席:

(結果)ライトライナー

(状況)3回無死走者なし

(投手)タイラー・ホルトン左

※3-0の3回に迎えた第2打席は、右翼へ打球速度108・1マイル(約173・9キロ)の鋭い打球を放ったが、右翼手の正面で右直に倒れた。

 

◆第3打席:

(結果)ショート強襲ヒット

(状況)5回2死走者なし

(投手)前田健太 右

※4回に先発からリリーフに回った前田健太投手が3番手としてマウンドへ。5回に二死走者なしから大谷と対戦し、4球目のスプリットをとらえて遊撃手のグラブを弾く強襲の内野安打とした。すぐさま24個目の盗塁を狙うも、ケリーの強肩の前に撃沈した。

 

 

◆第4打席:

(結果)ライト前ヒット

(状況)8回2死走者なし

(投手)アンドルー・チェフィン左

※1点リードの八回2死の打席では左腕チェイフィンに対し、カウント0―1から151キロ外角高め直球を右前へ運び、2試合連続、36度目のマルチ安打を記録した。

 

【コメント】

なし

 

【NEWS情報】

◯ 大谷は試合前にウィル・アイアトン通訳を相手に60球のキャッチボールを行い、最大距離110フィート(33・5メートル)だった。

 

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◯ 2試合連続、今季36度目のマルチ安打をマーク。今季は94試合出場して打率.316、29本塁打、69打点。OPS1.035、23盗塁の好成績だ。29本塁打、長打率.635、OPS1.035、75得点の4部門でリーグトップだ。

 

◯ 試合後はテキサス州アーリトンで行われる16日のオールスター戦に向けて移動。球団公式Xはプライベートジェットとみられる機体に乗り込む大谷、フリーマン、スミスの様子を投稿した。大谷は上下黒のジャージー姿でいつもの様に帽子を後ろ向きに被って機内でくつろぐ様子も投稿された。

 

 

◯ 大谷のユニホームが、球宴会場の売り場を独占していた。17日にオールスター戦が開催される。球場の真向いにある旧本拠地チョクトー・スタジアムに設置されたグッズショップでは、ナ・リーグのコーナーは“大谷一色”となっていた。MLBでユニホームの売り上げ1位に輝く男の扱いは別格。ショップに入ると、ナ・リーグのコーナーには大谷の球宴仕様のユニホームがズラりと並んでいた。その数は120枚以上。ア・リーグのコーナーは地元レンジャーズのマーカス・セミエン内野手、カービー・イエーツ投手らのユニホームが並んでいたものの、ナ・リーグのコーナーは大谷だけという異様な光景が広がっていた。ショップが開いてからわずか2日だが、スタッフのエリック・ウィーラーさんは「たくさん売れています。再入荷するほどです」と驚く。「彼は間違いなく球界で最高の選手の1人だからです。ファンは彼のことを愛しています」と人気の理由を分析した。

 

 

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 ■ 試合情報(ドジャース関連NEWS)

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【コメント】

デーブ・ロバーツ監督:

(試合前)

「彼は素晴らしい男だよ。私が期待していたとおりの才能がある。毎日見ることが出来て楽しいよ。彼がなんていい人間なのかも分かった。毎日楽しそうにやっている。彼は学ぶことに意欲的。世界中の野球界の顔にも関わらず、品良く毎日を過ごしている。そんな彼を毎日見ることが出来て私たちはとてもラッキーだ。翔平、フリーマンは毎日出ている。このようなチームの苦しい状況が続くと中心選手が必要。テオスカー(ヘルナンデス)も含めて彼らは主軸だ」

 

(試合後)

「間違いなくイライラが溜まる前半戦の締め方」

 

「1回に3点のリードを奪えて満足していたけど、残念ながらその後の8回は追加点を奪うことができなかった」

 

「(投手起用について)9回に最善の投手を起用したら、10回は野手が投げなくてはいけなかった。(負け投手となったラミレスについて)針の穴を通す投球をしなくてはいけない。三塁打が(逆転の)きっかけになった」

 

前田健太投手:

「(大谷への3球目には、今季最速となる時速94・1マイル(約151・4キロ)をマーク。3年ぶりの対戦に)特別でしたね。すごく楽しかったです。翔平のおかげで94マイルも出ましたしね」

 

「(先発から)外れた悔しさとかいろんなものがありましたけど、気持ちも入りましたし、いい感覚で投げることができました。ここから修正してはい上がっていけるように頑張っていきたい」

 

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 ■ 球界情報

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上沢直之投手:

◯ DFA通告の後、ウェーバー公示期限を過ぎ、レッドソックスとマイナー契約を結び直した上沢直之投手が14日(日本時間15日)、レッドソックス傘下3Aウースターに再合流。メジャー登録の40人枠から外れて、事実上の戦力外(DFA)になった後、13日にウェーバー公示期間をクリア。同期間中に、他球団からの獲得の申し入れがなく、レ軍とマイナー契約を結び直して残留した。この日は、本拠地でのロチェスターとの試合前にキャッチボール、ダッシュ、ブルペン投球練習などをを行い、第2のスタートを切った後、スポーツ報知の単独インタビューに応えた。

 

ーーここに至る経緯を教えて下さい。

「週末遠征から戻って、火曜日(9日)ここに来て、DFAと言われて、ホテルに帰りました。シーズン中に所属がなくなる経験は、初めて。その後はホテルのジムでトレーニングしていました。意外に皆が思っているほど、落ち込まなかったです。家族の方が心配していました」

 

ーー意外に、冷静だったということですか。

「そうですね。こっち(マイナー)は、メジャーに上がった選手が数日で戻ってくることも多いし、DFAもしょっちゅうなので。そこは、もう現実を受け止めて。自分の中で、リセットしようという気持ちになれたことが良かった」

 

ーーと言いますと

「6月、結構メンタルがキツかったんです。投げ方が分からなくなっちゃった。どうしてうまくいかないんだろうと自分を責めていたし、フォームもおかしくなってしまった。野球が面白くないな、っていう状態になって。実は、2016年もそういう経験しています(一軍登録ゼロ)。その時は肘のけがから戻る時だったんですけど、今回は体よりメンタルで」

 

ーーそこまで、追い込まれた原因は。

「メジャーからマイナーに降格して、中継ぎとして調整していたんですが、やったことがなくて。登板間のルーチンも(先発と)違いますけど、一番、難しかったのは、ブルペンでの準備です。電話が鳴って、数球で肩をつくる中で、1球目からガーンと(最速で)投げなきゃいけない。それが難しくて。適用しよう、適用しようと思えば思うほど、自分のボールが投げられなくなってしまった」

 

ーーウェーバーで他球団からオファーがなくて、マイナー契約を結び直して残留。シーズン途中の古巣日本ハムを含めた日本球界復帰の可能性も考えましたか。

「それは、考えなかったです。こっちで頑張りたいというところは、変わらなかった」

 

ーーメジャーとの距離感。

「それは、遠くなったと思います。ただ、メジャー契約でいることで、早く上に上がりたい、上がらなきゃ、と追い込んだ部分もある。一から出直すじゃないけど、残り2か月、しっかり課題に取り組んで、よくなるようにやっていきたいと思います」

 

ーーマイナーも明日からオールスターのオフ。

「いいタイミングかなと思います。ここから車で30分ほどの湖で、テラ(寺嶋通訳)と釣りでもして、いい時間を過ごして、後半戦に備えたいです」

 

昨オフ、日本ハムからポスティング制度で、レイズに入団したが、キャンプでマイナースタートが決まったことで、オプトアウトの権利を行使し、金銭トレードで、レッドソックス入り。4月28日にメジャー初昇格し、2試合に登板したが、5月8日にマイナー降格。傘下3Aウースターでは、13試合に登板し、3勝3敗、防御率は6・54。

 

 

千賀滉大&藤浪晋太郎投手:

◯ 右肩痛で60日間の負傷者リスト(IL)入りしているメッツ・千賀が14日、傘下3Aシラキュースの一員としてレイルライダーズ戦に先発。2番手で藤浪が救援登板し、日本投手リレーが実現した。千賀は9日の2度目のリハビリ登板では、2回2/3で52球を投げ、2安打無失点、3奪三振。2四球、2暴投とやや制球が乱れた。この日は先発して4回に犠飛で1失点こそしたが、4回2/3で67球を投げ、2安打1失点、3奪三振、2四球。最速は97マイル(約156.1キロ)で、ストライク率は61.2%だった。

 

千賀の後に登板したのは藤浪。5回2死一塁から2番手として救援登板し、二盗と連続四球で満塁のピンチを招いたが、最後は見逃し三振で切り抜けた。回またぎで6回もマウンドに上がり、先頭打者を三ゴロ、次打者に四球を与えたところで降板し、2/3を無安打無失点、1奪三振、3四球だった。藤浪の最速は見逃し三振に仕留めた99.6マイル(約160.2キロ)。2試合ぶりに無失点に抑え、防御率は12.10となった。

 

千賀は登板後、地元放送局「SNY」の取材に対し「もちろんパーフェクトではないですけど、まず順調に球数を放れたことは良かったと思います。自分が球数を放るにあたって、どこが崩れていくかを把握できた。1試合ごとにリハビリの経験値が上がっているので、順調にいっているんじゃないかと思います」と振り返った。

 

また、マイナーでの登板については「試合で投げる日にしか(マイナーに)来ていないですけど、メジャーやスプリングトレーニングで会ったことがある人がよく声をかけてくれるので、本当にやりやすかった。メジャーのスピードだったり、アドレナリンが出た中での状態がまだ把握できていないのでわからないですけど、現時点でやれることはやれていると思います」とコメント。メジャーへの復帰時期については「僕と他の人の話し合いになってくる。そこ次第かなと思います」と話すにとどめた。

 

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 ■ 注目記事&コラム

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◆ 大谷翔平、リーグ4冠でMVP級の前半戦 日本人初トリプルスリーに現実味…12年ぶり3冠王も

小谷真弥氏/Full-Count)

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 ドジャースの大谷翔平投手は14日(日本時間15日)、敵地で行われたタイガースとの前半戦最終戦に「1番・指名打者」で先発出場し、2試合連続マルチ安打をマークした。中継ぎに回った前田健太投手との3年ぶり対決で遊撃内野安打。4打数2安打で打率.316。

 

 移籍1年目から目覚ましい活躍だ。今季は94試合出場して打率.316、29本塁打、69打点、OPS1.035。23盗塁と足でも結果を出した。本塁打、長打率.635、OPS1.035、75得点の4部門でリーグトップ。打率はリーグ2位、打点はリーグトップのブレーブス・オズナと8点差となっている。2012年ミゲル・カブレラ以来12年ぶりの3冠王も期待できる好成績だ。

 

 大谷の前半戦について、ロバーツ監督は「素晴らしい人間だ。才能を発揮することを期待していた。それを毎日見られることは楽しいけど、人間性を評価している。彼は毎日、ハッピーな感じでやってくる。そして一貫性があるし、一生懸命プレーするし、学ぶことにも意欲的だ。世界的にみて、野球の顔となる選手だ。気品がある。私たち全員、彼を毎日見られるので幸運だ」と高評価した。

 

 シーズン換算では48本塁打、116打点、38盗塁ペースとなった。日本人初のトリプルスリー(打率3割、30本塁打、30盗塁)はもちろん、日本人初の50本塁打、40?40(40本&40盗塁)とさまざまな快記録が期待できる。16日(同17日)のオールスター戦(テキサス州アーリントン)を挟み、後半戦は19日(同20日)の本拠地・レッドソックス戦からスタートする。

 

小谷真弥 / Masaya Kotani

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◆ 大谷翔平30歳“スイング超進化”が200本塁打成績で判明「投手・大谷はリハビリ中だが…」エンゼルスとドジャースの6年半で打球速度も弾道も

広尾晃氏/NumberWEB)

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 大谷翔平が7月13日のタイガース戦でMLB通算200号本塁打を打った。2018年のデビュー以来、809試合目、途中2度の右ひじ靱帯再建手術を受けた中での達成は見事と言うほかない。データサイト『Baseball Reference』から、大谷がMLB200本塁打を達成した時点のデータと成績で振り返ろう。

 

2018年以降、大谷はメジャーで5番目のホームラン数

 まず、日本人選手のMLBでの本塁打数5傑。

 

1大谷翔平 200本(2018年~24年)809試合

2松井秀喜 175本(2003年~12年)1236試合

3イチロー 117本(2001年~19年)2653試合

4城島健司 48本(2006年~09年)462試合

5鈴木誠也 46本(2022年~24年)318試合

 

 松井秀喜が10年、イチローが19年かけて打った本塁打数を大谷は7年で易々と抜いていった印象だ。現役では同い年の鈴木誠也が5位にいるが、2人の差は154本となっている。

 

 以下は大谷がメジャーデビューした2018年以降、現在までの本塁打数10傑。★は2018年以前も含めたキャリアでの本塁打王回数。MはMVP。

 

1ジャッジ(ヤンキース)235本 748試合 ★★M

2オルソン(ブレーブス)219本 923試合 ★

3シュワーバー(フィリーズ)219本 863試合 ★

4アロンソ(メッツ)210本 778試合 ★

5大谷翔平(ドジャース)200本 809試合 ★MM

6スアレス(ダイヤモンドバックス)192本 908試合

7ラミレス(ガーディアンズ)191本 900試合

8マチャド(パドレス)189本 909試合

9アレナド(ガーディアンス)185本 897試合 ★★★

10マンシー(ドジャース)184本 791試合

10ベッツ(ドジャース)184本 829試合 M

10デバース(レッドソックス)184本 866試合

 

 ジャッジの234本を筆頭に200本以上は5人。大谷は間違いなく、MLBトップクラスのスラッガーである。そして忘れてしまいそうになるが――その上、彼は2023年までサイ・ヤング賞が狙えそうな投手でもあったのだ。

 

 1位のジャッジはア・リーグのヤンキースだが、2位から10位タイのベッツまではナ・リーグ。今はナ・リーグに大物スラッガーが固まっている。

 

同期間のプロ野球で“大谷よりHRを打っていた”2人は?

 

 ちなみに同じ2018年から現在までの期間に、NPBではどれくらい本塁打が出ていたのか?  以下は2018年以降のNPBの本塁打数10傑。所属は現チーム。

 

岡本和真(巨人)221本 909試合 ★★★

村上宗隆(ヤクルト)206本 775試合 ★★MM

山川穂高(ソフトバンク)193本 724試合 ★★★M

浅村栄斗(楽天)175本 914試合 ★★

ソト(ロッテ)171本 786試合 ★★

丸佳浩(巨人)169本 849試合 MM

山田哲人(ヤクルト)158本 803試合 ★M

柳田悠岐(ソフトバンク)150本 736試合 MM

中田翔(中日)129本 707試合

坂本勇人(巨人)127本 745試合 M

 

 MLBとは試合数が違うNPBでの記録だが、同じ時期に大谷よりも本塁打を打っていた岡本和真と村上宗隆は、当代のNPBでは頭抜けた存在であることがわかる。この2人が「次のメジャーリーガー候補」と言われる所以ではある。ただ、大谷が大成功しているから彼らも――とは断言できないのが難しいところだ。

 

大谷が積み上げた200本塁打を詳細に見ていくと

 

 さて、大谷の200本の本塁打を年度別に細かく見ていこう。打点の横のカッコ内は本塁打1本当たりの打点。「Exit.V」という指標は、MLB公式サイトのスタットキャストに公表されている全打球の最高球速(マイル表示)と、MLB全打者における順位。

 

〈ロサンゼルス・エンゼルス時代〉

☆2018年 22本37打点(1.68点)、Exit.V 113.9(60位)

・左投手2本 右投手20本

・フライ21本 ライナー1本

・左翼3本 左中間2本 中堅9本 右中間3本 右翼5本

(左5本 中9本 右8本)

・ソロ12本 2ラン5本 3ラン5本 満塁0本

・打順 2番2本 3番6本 4番4本 5番4本 6番2本 7番1本 8番3本

 

☆2019年 18本32打点(1.78点)、Exit.V 115.1(29位)

・左投手3本 右投手15本

・フライ14本 ライナー4本

・左翼3本 左中間4本 中堅7本 右中間2本 右翼2本

(左7本 中7本 右4本)

・ソロ8本 2ラン6本 3ラン4本 満塁0本

・打順 3番17本 4番1本

 

☆2020年 7本15打点(2.14点)、Exit.V 111.9(85位)

・左投手1本 右投手6本

・フライ3本 ライナー4本

・左翼1本 左中間2本 中堅1本 右中間2本 右翼1本

(左3本 中1本 右3本)

・ソロ2本 2ラン2本 3ラン3本 満塁0本

・打順 4番2本 5番4本 6番1本

 

☆2021年 46本67打点(1.46点)、Exit.V 119.0(3位)MVP

・左投手18本 右投手28本

・フライ42本 ライナー 4本

・左翼4本 左中間3本 中堅6本 右中間11本 右翼22本

(左7本 中6本 右33本)

・ソロ29本 2ラン13本 3ラン4本 満塁0本

・打順 1番6本 2番39本 3番1本(先頭打者3本)

 

☆2022年 34本57打点(1.68点)、Exit.V 119.1(3位)

・左投手9本 右投手25本

・フライ 33本 ライナー 1本

・左翼2本 左中間8本 中堅6本 右中間11本 右翼7本

(左10本 中6本 右18本)

・ソロ17本 2ラン12本 3ラン4本 満塁1本

・打順 1番7本 2番9本 3番17本 4番1本(先頭打者2本)

 

☆2023年 44本57打点(1.52点)、Exit.V 118.6(4位)※本塁打王、MVP

・左投手11本 右投手33本

・フライ41本 ライナー3本

・左翼2本 左中間8本 中堅10本 右中間13本 右翼11本

(左10本 中10本 右24本)

・ソロ24本 2ラン18本 3ラン1本 満塁1本

・打順 1番1本 2番26本 3番17本(先頭打者0本)

 

シーズンを経るごとに“最強打順”での一発が増加

 

 ここまでがエンゼルス時代。今季から在籍している名門ドジャースでは、オールスターブレークまでの本塁打の傾向はどのようなものだったか。

 

〈ロサンゼルス・ドジャース時代〉

☆2024年 29本40打点(1.38点)、Exit.V 119.2(3位)

・左投手7本 右投手22本

・フライ28本 ライナー1本

・左翼3本 左中間2本 中堅7本 右中間10本 右翼7本

(左5本 中7本 右17本)

・ソロ18本 2ラン11本 3ラン0本 満塁0本

・打順 1番10本 2番19本(先頭打者3本)

 

 大谷は、入団時は投手としての起用にウエイトがかかっていて、打者としては下位を打つことも多かった。しかし打撃の実力が認められて、次第にMLBの最強打者の打順である2番や3番を打つことが多くなった。

 

打者・大谷がはっきり進化した「2021年の打球速度」

 

 当初は、打球速度を示すExit.VはMLB打者で上位ではあったが、トップクラスではなかった。打者・大谷がはっきり進化したのは、1回目のトミー・ジョン手術から完全復活した2021年のこと。この年、Exit.Vは一気に3位にまで上昇する。この数値は近年、ヤンキースのジャンカルロ・スタントンとアーロン・ジャッジがトップを争っているが、ここに割って入った。

 

 この時期、大谷はオフに「ドライブライン」などのバイオメカニクスの専門施設で自分のスイングを徹底的に分析したとされるが、その分析の上に立って「打球速度を上げる」ための打撃改造に取り組んだのだろう。この年44本塁打、MVPを獲得。打者・大谷にとって、2021年が決定的な分岐点になっている。

 

 2021年は右方向(右翼、右中間)の本塁打が33本(72%)と、引っ張る打撃が目立った。しかし翌22年以降は右方向は50%台となり、中堅よりも左を意識した本塁打も増えている。そしてExit.Vは、ずっとトップクラスを維持するとともに、平均速度は2024年が最速となっている。

 

ライナーの本塁打が1本しかない衝撃

 

 今季の特色を見てみると、ライナー性の本塁打がタイガース戦で放った29号の1本しか出ていないこと。ライナー性の本塁打は「ヒットの延長線」と言われるが、弾道を踏まえると、今年の大谷の意識は〈最初からスタンドインを狙って打球を打ち上げている〉のだろう。

 

 まさに「フライボール革命」を体現するような打撃。今、投手・大谷は、二度目の右ひじ靱帯再建手術を受けてリハビリ中のはずだが、その期間も打者・大谷は進化している。その事実は、あらためて大谷という選手の特異性を示している。

 

 死球でIL(負傷者リスト)入りしたベッツの復帰までの間、大谷は1番を打つことになる。それもあって1本塁打当たりの打点はキャリア最低ではあるが、チームでの役割を考えれば、これには目をつむるべきなのだろう。その代わり先頭打者本塁打を3本も打っている。

 

 当然ながら、200本はまだ「通過点」だ。過去、MLBで200本塁打を記録した打者は375人もいる。30歳の大谷翔平は、ここからどれだけのアーチを我々に見せてくれるのか、楽しみは尽きない。

 

(「酒の肴に野球の記録」広尾晃 = 文)

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◆ ヤンキース・ジャッジ ドジャース・大谷の打撃解説 ストライクゾーン支配する「コンプリートヒッター」

杉浦大介氏/スポニチ)

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 ヤンキースのアーロン・ジャッジ外野手(32)がスポニチ本紙の取材に応じ、通算200本塁打に達したドジャース・大谷の今季の打撃などを解説した。米2大都市を本拠にともに大型契約を結び、「東のジャッジ」「西の大谷」時代が到来。大谷より2学年上で、2年早くメジャーデビューしたジャッジは、13日(日本時間14日)で通算291本塁打とした。ア、ナ両リーグを代表するメジャーの顔が、もう一人の顔について語った。(取材・杉浦大介通信員)

 

 「今の彼はコンプリートヒッター(完成された打者)だ。18年のメジャー移籍後、毎年のように成長し続け、パワー面で優れた数字を残すだけではなく、3割を超える打率を残すようになった」

 

 ジャッジはこの日のオリオールズ戦で前半戦球団新記録となる34号を放ち、ア・リーグの本塁打王争いを独走。通算300号にあと9本に迫る。85打点も断トツで、打率.308と初の3冠王のチャンスもあるジャッジは、今季の大谷が好調な理由が見えている。

 

 「球の見極めが良くなっている。最大の特徴はストライクゾーンをコントロールしていること。ストライクゾーンの中でボールを捉え、甘い球が来たら逃さない。捉えれば、とてつもない飛距離を飛ばす。右肘手術のリハビリと並行し、それらをやり遂げている」

 

 実際に大谷がボール球に手を出す割合を示すチェイス率は22年28.4%、23年29.7%に対し、今季は27.3%で、メジャー平均の28.4%を下回る。

 

 「引っ張ることも、逆方向にも打てるから、どの位置で守ったらいいか分からない。スピードもあり、内野が下がって守ればバントまで決めてしまう。守備でミスしたらもう間に合わなくなる」

 

 6月9日のドジャースとヤンキースの直接対決。大谷は浅い右飛で三塁からタッチアップを狙い、右翼手ジャッジが93.4マイル(約150キロ)の好返球を見せるも、秒速29.4フィート(約8.96メートル)の俊足で本塁生還を果たした。万能ぶりを改めて思い知らせたシーンだった。そして、“10月の再会”への期待も膨らむ。

 

 大谷とワールドシリーズで対戦できれば凄いことだと水を向けると「本当にその通りだね」と笑顔でグータッチを求めてきた。2人はこの先、どこまでアーチを積み上げていくのか。「予測するのは難しい。まだまだ僕たちの行く手には長い道が広がっているけど、野球が素晴らしいのはこの先何が起こるのか分からないことだ。彼はこのゲームのアンバサダー(大使、代表者)。その旅を目撃することが楽しみであり、野球の美しさなんだ」。自らにも言い聞かせるように笑った。

 

 ▽大谷とジャッジ 21年は9勝&46本塁打の大谷がMVPを受賞。22年も15勝&34本塁打の成績を残したが、ア・リーグ新記録の62本塁打を放ったジャッジにMVPを譲った。23年は10勝&44本塁打の大谷が再びMVPに輝いた。両者は過去22度の直接対決で、14度もどちらかが本塁打を記録。21年6月29日、22年8月29日はともに本塁打で“競演”した。22年5月31日は大谷が初回に中堅フェンス際に放った本塁打性の飛球を、ジャッジがジャンピングキャッチした。「投手・大谷」はジャッジに対して2打数2安打1本塁打と打ち込まれている。

 

 ≪700号も夢じゃない 350戦で100発≫大谷は21年以降、本塁打のペースを上げた。同年以降の本数はジャッジ172本に次ぐ153本で、3位以下を引き離す。22年5月の通算100号まで打者出場444試合で、そこから200号までの100本は350試合で達した。現在のペースで打ち続ければ、600号到達まであと1400試合(8・6シーズン)、700号には1750試合(10・8シーズン)で達する計算にはなる。

 

 2学年上で、2年早くデビューしたジャッジは、約2年前の22年7月30日に200号に到達。出場671試合目は歴代2位の速さとなり、年齢は30歳3カ月で、30歳0カ月の大谷よりも上だった。

 

 歴代最速200号はライアン・ハワードで658試合だったが、その後失速し通算382本に終わった。ベーブ・ルースは大谷より遅い817試合で達したが、現役序盤は飛ばない「デッドボール時代」で、現役の中盤から終盤にかけて本塁打数を伸ばした。歴代最多762本のバリー・ボンズ、同5位696本のアレックス・ロドリゲスも200号到達は大谷より遅い。若手時代は走力も武器としたオールラウンダーで、後の「ステロイド時代」に現在では禁止される薬物などでパワーをつけ、やはり中盤から終盤に量産した。

 

 波が少なくアーチを重ねたのが元同僚のアルバート・プホルスで200号は出場788試合、25歳8カ月だった。通算では歴代4位の703本塁打。終盤にかけて本数を減らしながら42歳だった22年までプレーした。大谷がどこまでその数字に迫れるか、一つの指標になるかもしれない。

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 ■ NOTE

 

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