2024年7月12日

 

-------------------------------------------------------------

 ■ 試合データ

-------------------------------------------------------------

 

米国時間:2024年7月11日

日本時間:2024年7月12日(金曜日)

7時05分開始

ロサンゼルス・ドジャース

対フィラデルフィア・フィリーズ

@シチズンズ・バンク・パーク

 

image

 

【MLB.JP 戦評】

 日本時間7月12日、全米が注目するドジャース対フィリーズの強豪対決3連戦は最終戦を迎え、序盤に2本のアーチで主導権を握ったフィリーズが5対1で勝利。ポストシーズンでも対戦する可能性があるドジャースとの3連戦を見事にスイープした。フィリーズ先発のアーロン・ノラが6回4安打1失点の好投でリーグトップに並ぶ今季14度目のクオリティスタートを記録し、11勝目(4敗)をマーク。ドジャースのオープナーを務めたアンソニー・バンダは先制アーチを浴び、2敗目(1勝)を喫した。

 

 フィリーズは先発のノラが1回表二死1・2塁のピンチを切り抜けると、1回裏一死からトレイ・ターナーの9号ソロで先制。ノラは2回表にも一死満塁のピンチとなったが、大谷翔平を空振り三振に仕留めるなど、ここも無失点に抑えた。2回裏にブランドン・マーシュの9号ソロでリードを広げ、5回表にギャビン・ラックスの3号ソロで1点を返されたものの、6回裏一死3塁からマーシュのタイムリー三塁打とヨハン・ロハスのタイムリーで2点を追加。8回裏にはカイル・シュワーバーがダメ押しの19号ソロを放ち、ノラからマット・ストラーム、ジェフ・ホフマン、ホセ・アルバラードとつないでドジャースの反撃を封じた。

 

 ドジャースの大谷は「1番・DH」でスタメン出場。1回表先頭の第1打席はライトフライ、2回表一死満塁の第2打席は空振り三振、5回表無死走者なしの第3打席も空振り三振、7回表二死1塁の第4打席はセカンドゴロに倒れ、4打数ノーヒットに終わった。シチズンズバンク・パークでの初本塁打は出ず、メジャー通算200号アーチもお預け。連続試合安打は4でストップし、今季の打撃成績は打率.314、出塁率.398、OPS1.025となっている。

 

image

 

-------------------------------------------------------------

 ■ 今日の大谷翔平(関連NEWS)

-------------------------------------------------------------

 

【スタメン】

1番DH

 

【出場成績/打者】

4打数 0安打 2三振

通算打率・314

OPS1・026

 

◆第1打席:

(結果)ライトフライ

(状況)1回無死走者なし

(投手)アーロン・ノラ右

※相手先発は今季はリーグ2位の10勝をマークしているアーロン・ノラ(31)。第1打席から厳しい内角攻めと落差のあるナックルカーブにタイミングを外された。最後は高めのストレートにやや差し込まれて右飛に倒れた。

 

◆第2打席:

(結果)空振り三振

(状況)2回1死満塁

(投手)アーロン・ノラ右

※初球のインサイドのフォーシームはややゾーンから外れていたがストライクのコール。これには思わず首を振りながら笑みを浮かべた。現地実況は「ボールですね。これはひどい」とバッサリ切り捨てた。

 

 2球目のカーブを空振りしてあっさりと追い込まれた大谷。内角フォーシームを見極めたが、4球目のカーブにバットは空を切った。ワンバウンドするボールでのスイングアウトに敵地は大歓声に包まれた。

 

 

◆第3打席:

(結果)空振り三振

(状況)5回無死走者なし

(投手)アーロン・ノラ右

※チェンジアップ、ナックルカーブから95マイル(約152キロ)の高めのつり球に手を出し、連続三振を喫した。

 

 

◆第4打席:

(結果)セカンドゴロ

(状況)7回2死1塁

(投手)マット・ストラーム左

※2番手左腕のマット・ストラームのスライダーにバットを折られる二ゴロに倒れ、最後まで快音は響かなかった。

 

【コメント】

なし

 

【NEWS情報】

なし

 

-------------------------------------------------------------

 ■ 試合情報(ドジャース関連NEWS)

-------------------------------------------------------------

 

【コメント】

デーブ・ロバーツ監督:

「フィリーズはチャンスや我々のミスを逃さずに生かしていた。我々は逆にチャンスを生かせなかった。彼らは我々よりずっと良い野球をしていた。このシリーズは守備も、投手も良い野球ができなかった。状況に応じた打撃など細かい面でも負けていた。勝つために完璧な野球をしなくてはならないと言いたくはないが、そう思えた。ミスを許容する余地があまりなかった。クリス・テーラー、ミゲル・ロハスも競う合うように素晴らしい打撃をしていたことは良かった」

 

「(フィリーズの投手陣について)リリーフ陣は素晴らしかった。シリーズ全体を通して劣勢の戦いだった。彼らに立ち向かっていかなければならなかったが、(先発の)ノラに6回を投げきられた。我々はもっと上手くできたはずだができなかった。今後に影響を及ぼすとは思わない。明日から好調タイガースと戦う。もっと良いプレーをしなければならない」

 

ロブ・トムソン監督:

「(ドジャースは)ムーキーを欠いているが、それでも上位打線を抑えられたことが鍵になった。彼らはすごい数字を残してきているから。そこでいい仕事ができた」

 

「(大谷に対して本塁打を打たせなかったことに)彼に柵越えさせないことも鍵だった。うちの選手たちがやり遂げてくれた」

 

「(ノラの投球について)とてつもなかった。ミスター・コンシステンシー(安定)だ。彼はこれまでもそうだった。最初の2イニングは苦しんだ。粘り、戦い続け、2回(のピンチで)は大谷を三振、スミスを内野ゴロに抑えた。その後は落ち着き、尻上がりによくなった。彼は今季を通じてダイナマイト(絶好調)だ」

 

「(大谷を三振に打ち取った際のベンチの雰囲気は)みんな大喜びだった。ピンチを脱するチャンスがあると思ったわけだから」

 

アレク・ボーム内野手

――本塁打競争への参加は難しい決断だったか?

「いや、そんなことはなかった。予想していなかったから、出場を打診するテキストを受け取ったときは驚いた。決断は簡単だった。一生に一度のことかもしれないから、迷うこともなかった」

 

――本塁打競争への対策を誰かに聞いているのか?

「カイル(シュワーバー)が教えてくれている。ブライス(ハーパー)が出たときは時間制だったかどうかわからないけど、カイルはいつタイムアウトを使うかなどアドバイスをしてくれている。ただ、(成功の)シークレットなどが存在するわけではない。ただ、楽しんでやるだけだ」

 

――数年前の大谷のように後半戦に疲れを残してしまう選手もいるが、その懸念は?

「スイングを乱す心配はしていない。なぜなら普段と違うスイングだから。97マイル(約156.1キロ)のインサイドの球を右中間に飛ばそうとするゲーム用のスイングではなく、山なりの球を遠くに飛ばそうとする。私の長所であるバット&ボールのスキルを生かせると思う。450フィート(約137.1メートル)の大飛球は飛ばせないかもしれないけれど、レフトにラインドライブを打ち込みたい。試合で同じようなスイングをするわけではないから」

 

――アメリカ代表の一員として2019年のプレミア12で日本でもプレーした。

「メジャー以外ではお気に入りの思い出の1つだ。東京ドームでの日本戦はいい雰囲気だった。とてもクールな経験だった」

 

――ナ・リーグトップのブレーブス・オズナに5打点差の2位と打点王を狙える位置につけている。

「まだ7月で多くのゲームが残っているから早いよ。打点が挙げられているのはチームメイトたちのおかげだ」

 

――日本であなたはビッグニュースになっている。

「本当?それはクールなことだね。日本は好きだよ。日本でプレーしたとき、みんなリスペクトしてくれたし、よくしてくれた。素晴らしい経験だった。機会があれば、またいつかプレーしたいよ」

 

――大谷が3冠王を争っているからこの質問をした。

「だからか!(3冠王争いを)荒らしたいわけじゃないけど、私が打点王に輝くことができればクールなことだ。でも、彼が毎晩成し遂げていることはアメージングだ。彼と競うことはクールなことだよ。なぜなら、彼は世代を代表する、最高の選手の1人なんだから。打球音が(他の選手とは)違うと言われているよね」

 

-------------------------------------------------------------

 ■ 球界情報

-------------------------------------------------------------

 

アーロン・ジャッジ外野手:

◯ 32HRでMLBトップを独走しているヤンキースのアーロン・ジャッジ選手ですが、7月に入ってから急激にバッティングの調子を落としている。現地時間11日に行われたレイズ戦では、4打数無安打に倒れたジャッジ選手。7月に入って5度目の無安打。7月は9試合に出場するも、35打数、7安打、1HR、1打点。打率も.200にとどまっている。特にHR数では、2ケタをマークしていた5月・6月からペースを大きく落とし、9試合で1本。シーズンではMLBトップ1.086を誇るOPSも、7月は0.568とその輝きが失われている。

 

-------------------------------------------------------------

 ■ 注目記事&コラム

-------------------------------------------------------------

 

◆ 「かめはめ波するって言ったろ、ガハハ」大谷翔平の番記者が見た“TVに映らない”古巣エンゼルス戦…HRボール取材→ド軍コーチ大喜びのワケ

柳原直之氏/NumberWEB)

###

 日本ハム時代から長年にわたって大谷翔平の番記者を務める柳原直之氏の「テレビに映らない番記者レポート」を現地からお届け。大谷29歳最後の日々と、ドジャースの動向を追った。(全3回の第1回/第2回、第3回も配信中)

 

テレビ出演料でキットカット、もっと買ってきてくれ

 

 6月21日の本拠地ロサンゼルスでのエンゼルス戦から約2カ月ぶり、今季2度目の米国出張に来ている。メジャー取材は日本のプロ野球と違って、試合前後にクラブハウスで取材できるのが大きな特徴の一つ。クラブハウスのちょうど真ん中のシャワールームの真横に大谷のロッカーがある。

 

「今日からまたよろしくお願いします」

 

 練習前、ロッカー前の椅子に座っていた大谷にあいさつすると、大谷は無言のまま、うなずいて手を上げた。自身の新居購入の報道をめぐり一部メディアがドジャースの取材パスを凍結されたとする報道もあったせいか、少しピリピリした雰囲気を感じたのは気のせいだろうか……。

 

《6月21日 VSエンゼルス(ドジャースタジアム)●2-3》

 

「ウェルカムバック(お帰り)」

 

 取材初日の21日は2カ月ぶりに会ったドジャース担当の米記者や球団広報が温かく出迎えてくれた。

 

 羽田空港で購入したキットカットの東京ばな奈味とイチゴ味を米記者や球団広報にお土産として配ると「これは米国にはない味だ。おいしい」と好反応を得られた。スポーツ紙の記者である私がテレビ、ラジオなど他メディアにも出演しているという噂をどこから聞いたのか、ある米記者から「日本で有名なのか?」、「出演料でこのキットカットをもっと買ってきてくれ」とイジられることもあった。

 

 キャンプから怒濤の数カ月をともに過ごし、ドジャース担当の日米メディアは同士のような関係になっている。

 

守護神エステベス「ショウヘイを三振に取ったら…」

 

 この日は大谷にとって、古巣エンゼルスとの公式戦初対戦。エンゼルスの番記者や球団広報とも久々に再会した。

 

 日本のアニメ好きで知られる守護神エステベスは私を含めた日本メディアを見かけると「久しぶりだなあ」と流暢な日本語を披露した。人気漫画『ONE PIECE』のクロコダイルの声真似だという。大谷との対戦について問うと「9回の最後の打者で翔平を三振に取ったら(ドラゴンボールの)かめはめ波ポーズをするかも」と笑いながら予告していた。

 

 大谷は2試合連発となるリーグトップ22号2ランを放ち、全30球団との対戦での安打を達成。かつての仲間たちに代名詞の一発を見舞った。

 

「構えが大事。そこさえできていれば右も左も関係ない。感覚的に4月、5月より全然いいんじゃないかな。大きく違ってくるのは後半戦から。そこから先は経験がないので、楽しみにしたい」

 

 悲願の世界一へ向けた渇望が、大谷を突き動かしているようだった。

 

「言っただろ! ガハハ」ご機嫌で帰宅

 

 一方、ドジャースは延長10回の末にエンゼルスに競り負け、最後の打者を空振り三振で締めたエステベスがマウンド上でかめはめ波ポーズを繰り出した。相手は大谷ではなかったが――。

 

「まさか現実になるとは!」

 

 記者席も大いに盛り上がった。なおエステベスは試合後、こう話して帰宅した。

 

「(かめはめ波をするって)言っただろ!  ガハハ」

 

大谷の3戦連発をつかんだのは、なんと三塁コーチの…

《6月22日 VSエンゼルス(ドジャースタジアム)◯7-2》

 

 大谷の本塁打は、遥か彼方の銀河まで届くような輝きを放った。1-0の3回無死一塁。打球はロサンゼルスの夕焼け空を突き抜け、右中間席上段に着弾した。今季2度目の3試合連発に「打球速度的に素晴らしい打球。いい角度で、いい眺めだった」と余韻に浸った。

 

 この日は本拠地の歴史や伝統をモチーフとした「シティー・コネクト・ジャージー」第2弾の着用日。星のマークがちりばめられた銀河をイメージしたデザインで、夢を追う人が集うロサンゼルスの都市が表現されていた。

 

 熱心な「大谷ファン」ならお気づきの方もいるかもしれない。今季のスポニチMLB取材班は試合終盤などを除き大谷の本塁打球の行方の全取材を試みている。

 

 取材初日の21日はディノ・エベル三塁コーチと同郷の知人家族がキャッチ。翌日同コーチに写真を見せると「本当か!  よく知ってる人たちだ」と喜んでいた。

 

ラテン系グループに取材したら「日本メディアだ!」

 

 ただ、この日の本塁打球をキャッチしたファンの取材は難航した。

 

 スペイン語しか話せないラテン系のグループの1人がキャッチ。スタンドは大騒ぎで、私が到着すると「日本メディアが来たぞ!」とさらに過熱。どこからともなくスペイン語、英語の両方を話せるファンが通訳として登場。ただ、キャッチしたファンと知り合いではないらしく、コミュニケーションは上手く取れずもみくちゃに。危険を察知し、あえなく取材を断念した。

 

 チームは怒濤の12連戦を終え、移動日を挟んで24日から舞台は“風の街”シカゴへと移る。ロサンゼルスに到着したばかりの私にとっては時差ボケになる暇もないほど、ロケットスタートの2日間だった。

 

<つづく>

 

(「テレビに映らない大谷翔平:番記者日記」柳原直之(スポーツニッポン) = 文)

###

 

◆ 大谷翔平“ある新ルーティン”とホームラン量産「ショウは“状態が良い”と言ってた」「彼の発案だ」番記者が得た各打撃コーチの重要証言

柳原直之氏/NumberWEB)

###

 日本ハム時代から長年にわたって大谷翔平の番記者を務める柳原直之氏の「テレビに映らない番記者レポート」を現地からお届け。大谷29歳最後の日々と、ドジャースの動向を追った。(全3回の第2回/第1回、第3回も配信中)

 

エ軍時代の打撃コーチを見つけて「あ、いた!」

 

《6月24日 VSホワイトソックス(シカゴ)◯3-0》

 

 昨今の円安、物価高の影響もあり航空券代も高騰しているため、レッドアイ(深夜便)で試合当日朝にシカゴ入りした。

 

 宿泊先のホテルでは事前にスマートフォンでチェックインできるサービスを利用していたが、手違いで1時間ほどチェックインできず、ロビーで仮眠。大リーグ担当記者の日常ではあるが、経費削減と体調管理はバランスが大事だ。

 

 ホワイトソックスの本拠地ギャランティード・レート・フィールドに到着すると、大谷がちょうどキャッチボールを行うタイミングだった。試合前のキャッチボールを終えた大谷は、昨季エンゼルスの打撃コーチだったホワイトソックスのマーカス・テームズ打撃コーチの姿を発見した。

 

「あ、いた!」

 

 と叫び、小走りで歩み寄った。通訳を交えず、2人だけで談笑。大谷の甲高い笑い声がグラウンドに何度も響き渡った。同コーチには昨季、ベンチでバットに気合を注入してもらったこともある恩人。親しげな様子は変わらなかった。

 

我々にダメージを与えてほしくないね(笑)

 

 実は昨季エンゼルスを取材したメディアは、日米問わずテームズ打撃コーチと挨拶程度しか話したことがなかった。メディアが殺到したためか、エンゼルスの方針で23年はコーチ取材が原則、禁止されていたからだ。ホワイトソックスにこのルールはもちろんない。テームズ打撃コーチは大谷と別れた後、日本メディアを見つけると、満面の笑みを浮かべて取材に応じた。

 

「ショウ(大谷)を見るのはいつも楽しいし、今日彼がキャッチボールをしているのを見るのも楽しかった。彼は“状態が良い”と言っていた。彼とこれまでの年月について話すことができて良かった」

 

 3試合連続本塁打中の大谷のことはもちろん警戒していた。

 

「彼は今、とても良い状態にある。今日の試合も見ることを楽しみにしている、我々にダメージを与えて欲しくないね」

 

 笑みを浮かべながら、「野球界で最高の選手の1人。昨季それを間近で見ることができて良かった」と敬意を表していた。

 

 大谷は自身初の4戦連発を逃し、8戦ぶりの無安打でも、できることに集中した。2-0の9回1死三塁。右腕コペックの初球カットボールに反応した。犠飛にはおあつらえ向きの高めをしっかり振り抜くと、追加点への確信歩き。飛距離十分、捕球した中堅手はすぐには返球さえしなかった。貴重な3点目に大谷は、手を叩いて喜んだ。8試合連続打点で、自身の日本選手歴代最長をさらに伸ばした。

 

“ベース踏み忘れ先頭打者弾”をコーチにいじられた

《6月25日 VSホワイトソックス(シカゴ)◯4―3》

 

 試合前のクラブハウス。野手のミーティング終了後に捕手バーンズが大谷に向かって「ショウヘイ!  ホームラン!」と茶化し、大谷は「ハハハ」と苦笑いを浮かべていた。

 

 その数時間後の初回にナ・リーグトップを独走する今季2度目、通算8本目の24号先頭打者アーチを描き、記者席で見ていた私も「本当に打った!」と驚くしかなかった。

 

 ぎりぎり柵越えする当たりの行方を気にするあまり、一塁ベースを踏んだのかも不安になり、二塁到達直前にUターンして踏み直す珍場面もあった。

 

「打感としては(バットの)先っぽの方。越えてくれないかなと見ていてバットを持ちすぎていた」

 

 実際は踏んでいたが、ベースを踏まずに相手からアピールされればアウト。その後、クレイトン・マッカロー一塁コーチから「ヘイ、翔平!  本塁打を打つのは難しいな」とイジられたというが、大谷らしく慎重だった。同一シーズンの9試合連続打点は、球団では殿堂入り捕手ロイ・キャンパネラが1955年に記録して以来、69年ぶりの快挙。全4得点に絡み、3連勝に導いた。

 

捕手バーンズの称賛と、大谷の気になる発言

 

 大谷の本塁打を予告したバーンズは、目を輝かせていた。

 

「彼は野球界最高の選手の1人。同じチームで彼のプレーを見るのが楽しい」と称賛し「彼の英語もなかなかいいよ。ほとんど何でも理解している。彼の考えていることをもっと知りたい」とも話していた。

 

 バーンズは春季キャンプ中から大谷の近くに寄り添う時間が長く、コミュニケーションを密に図っている印象が強い。大谷が右肘手術から投手復帰を目指す2025年シーズンは、正捕手スミスではなくバーンズの可能性があるのかもしれない――と記者間で話題にもなっている。引き続き2人のやり取りから目が離せない。

 

 大谷の気になる発言もあった。

 

 7月16日の球宴前日恒例の本塁打競争に関する質問で、ナ・リーグ本塁打王争いを独走する大谷は「まだ分からない。まずオファーがないのでそれから」とした上で、「リハビリをやっているので、ドクターやトレーナー、チームの許可が必要」と現状を説明した。

 

 一方で「もちろんやりたい気持ちは、どの選手もそうだと思うけどあると思うので。そういう他の部分との兼ね合い次第」とも語った。

 

 打者専念の今季は、投打同時出場よりも肉体的負担は軽く、リハビリ中であることを除けば、例年より出場へのハードルが低いことは事実だが、手術明けの右肘への負担は否定できない。持ち時間内での本数で競う現行のルールは、やはり選手への負担が大きすぎる。スター選手たちみんなが栄誉に感じて出場できるように、先を見据えてもルールの再考が求められるだろう。

 

2戦連続先頭打者弾と打席前の“新ルーティン”

《6月26日 VSホワイトソックス(シカゴ)◯4―0》

 

 思い込みはいけない。大谷が2試合連続の先頭打者ホームラン。1打席目の2球目のカットボールが高めのボールに見え、実際は2ボール1ストライクのところをスコアブックに3ボールと記していた。

 

 試合後、大谷に「3ボールから四球も頭にちらつく中、どうアプローチしていたか?」とトンチンカンな質問をし「いつですか?  最初ですか?」と困惑させてしまうハメに。25日の大谷は一塁ベースを念のため踏み直したように、思い込みがなかった。大事なのは準備と本番での冷静さ。改めて大谷から学んだ。

 

 6月14日のロイヤルズ戦からバットを地面に置き左足の位置を決めるルーティンを導入し、スイングを崩されやすい内角球の見極めが向上している。

 

大谷自身が発案「ショウヘイは一貫性を…」

 

 ロバート・バンスコヨック打撃コーチによれば、大谷自身の発案で「翔平は打席で一貫性を保つことを大事にしている」と言う。この時点で今月11本目で21、23年に月間MVPを獲得した“6月男”は「シーズンに慣れてくるので、ちょうどそういう波が来やすいのかな」と言った。

 

 ボール球を振らず、ストライクを打つ。単純明快だが、超一流選手がしのぎを削る舞台で実践し続けるのは難しい。泰然自若で好球必打を続ければ、三冠王が現実味を増す。

 

 そんな大谷とドジャースは好調をキープしたまま、同地区のライバルであるジャイアンツ戦を戦うため、サンフランシスコのオラクル・パークへと向かった――。

 

<つづく>

 

(「テレビに映らない大谷翔平:番記者日記」柳原直之(スポーツニッポン) = 文)

###

 

◆ 「え、大谷翔平のHRボールに無関心?」番記者が見た“ショウヘイとドジャース宿敵ファン”のリアルな距離感「試合前、生オオタニには人だかり」

柳原直之氏/NumberWEB)

###

 日本ハム時代から長年にわたって大谷翔平の番記者を務める柳原直之氏の「テレビに映らない番記者レポート」を現地からお届け。大谷29歳最後の日々と、ドジャースの動向を追った。(全3回の第3回/第1回、第2回も配信中)

 

“大谷を守った”バットボーイが一躍大人気に

《6月28日 VSジャイアンツ(サンフランシスコ)●3―5》

 

 スポニチMLB担当7年目にして、初めてのオラクル・パーク。これで訪れたことがあるメジャー球場は全30球場中、これで25球場目だ。

 

 これまでタイミングが合わず縁がなかったが、記者仲間から噂に聞いていた通り、突き抜けるような青空と右翼後方にマッコビー湾を望む雰囲気の良さはメジャー屈指。記者席はバックネット裏1階席の一番後ろで目線も低く、これもメジャー屈指の“VIP席”。一気にその魅力の虜になった。

 

 試合前から話題をさらったのは、「大谷を守った男」として話題のバットボーイ、ハビエル・ヘレラさんの取材対応だった。26日のホワイトソックス戦で、ベンチの大谷の目前で強烈なファウルを素手で捕球した映像がSNSで拡散され話題になっていた。

 

「自分の仕事をしただけだよ。打球はしっかり見えていたがかなり揺れていた。痛かったかどうかは覚えていない。その夜、知り合いから映像が送られてきて100回くらいは見た。うれしかった。翔平からは“サンキュー”と言われ、僕は“あなたを守る”と伝えた」

 

 ヘレラさんは一躍人気者になり、多くの報道陣に取材で囲まれたことに「緊張している。恥ずかしい」と照れ、取材対応を見守った大勢のドジャーススタッフも大盛り上がりだった。

 

「ドジャースをやっつけろ!」完全敵地の中で…

 

 大谷からのお礼については「ポルシェはもらってないよ。おもちゃのポルシェももらってない。噂だね(笑)」と否定していた。大谷も自身のインスタグラムでヘレラさんが取材を受ける動画をアップし「MY HERO!!」とつづって感謝の気持ちを示した。

 

 動画を撮っていたのは大谷ではなく球団スタッフだったが、取材の場にいた私もカメラ目線で写り、知人から「見たよ!」と連絡が殺到。大谷のフォロワー数は約800万人。そのすさまじい影響力を身をもって体感した。

 

 この日、大谷は史上4人目の3試合連続先頭打者本塁打を逃し、球団記録更新中だった連続試合打点は10、連勝も4で止まった。

 

 初回は3球三振、3回は遊ゴロ。2打席のうち4球が、大リーグ公式サイトがボールとした球をストライクと判定された。デーブ・ロバーツ監督は「ボールがよく動き、攻略は難しかった」としたが、2年目のエドウィン・ヒメネス審判員のコールを現地中継も「際どくすらない」と酷評した。スタンドには「Beat LA! (ドジャースをやっつけろ)」のコールが何度も響き渡った。同地区のライバル対決。サンフランシスコは野球熱もメジャー屈指だった。

 

大谷のHRボールに…敵地SFは関心なし?

《6月29日 VSジャイアンツ(サンフランシスコ)◯14―7》

 

 大谷は同点の3回にバックスクリーンに26号ソロを叩き込んだ。いつもファンがゲットするために殺到する大谷の本塁打球はバックスクリーンのネット上で弾み、ジャイアンツ側の無人のブルペンへ落下。ブルペンの真裏は一般客が利用できるダイニングバーだ。記者席を飛び出して現場へ向かうと、大谷の本塁打球は誰の手にも渡ることなくガラス越しに無造作に転がっていた。

 

 担当警備員は「複数のバーの客がボールを欲しがったが私には権限がないのでどうすることもできない」と困り顔。7、8人の男女のグループでダイニングバーを利用中のジャイアンツファンも「本塁打球をもらったら売らずに家に飾りたかったけど仕方ないね」と嘆いていたが、多くのジャイアンツファンがガラス越しに転がる大谷のボールに関心を示さない様子は、大谷がスーパースターへの階段を上り始めてからはなかなか見ない光景だ。

 

 日本であれば十重二十重の人だかりができ、スマートフォンのシャッター音が響き渡っていたに違いない。

 

現地紙記者に日本語でイジられた大谷の返しは…

 

 試合後の大谷もまた、“らしさ”全開だった。

 

 チーム今季最長の3時間45分を戦い終えたクラブハウス。セキュリティー担当から「あと2分でバスが出発する」と告げられると、大谷は急いでロッカーで着替え始めた。

 

 すると、その様子を見ていた地元紙オレンジカウンティー・レジスターのドジャース担当ビル・プランケット記者が日本語で「ハヤク!  モットハヤク!」と急かした。

 

 これに対して大谷は「あ!?」と声を発して笑ったが、野球記者歴22年の同記者は冗談交じりに日本語で「ナメンナヨ!」と畳みかけた。

 

 これに対して大谷は……いたずらっぽく笑いながら「It's Japanese bad word.(それは日本の悪い言葉だ)」と一蹴。着替え終わった大谷は最後に報道陣に「See you guys! (みんなまたね)」と英語であいさつし、帰路に就いた。

 

キャッチボールが当たりそうになった子供にサインを

《6月30日 ジャイアンツ戦(サンフランシスコ) ●4―10》

 

 3連戦最終日はデーゲーム。サンフランシスコの夏は全米屈指の涼しさと言われるが、照りつける太陽はさすが夏を感じさせた。「中1日」でキャッチボールを行う大谷がグラウンドに現れると、敵地にも関わらずスタンドから大歓声。ガラス越しの本塁打球には関心はないが、キャッチボールを行う“生大谷”を一目見ようと、右翼席や一塁側のポール際周辺には人だかりができていた。

 

 途中、空に〈JESS-Will you marry me? -BOB(ジェス、結婚してくれませんか?  ボブより)〉と記した横断幕を引っ張って飛んでいる飛行機を見上げ、笑みを浮かべる場面もあった。

 

 高めに抜けてキャッチボール相手が捕れなかった球がジャイアンツファンの子供に当たりそうになったこともあったが、キャッチボール後にその子の元へ向かいボールにサインをしてプレゼント。粋なファンサービスだった。

 

 試合は5試合ぶりの無安打。3、5、9回と2死二塁で3度回ってきながら全て空振り三振に倒れ、今季4度目の3三振。出塁なしも15試合ぶりだった。6月最終戦は不発だったが、12本塁打、24打点はともにリーグトップで、打率.293。21、23年に月間MVPを獲得していただけに「好相性の6月に期待」とメディアは盛んに報じていたが、信じていた方はどれほどいただろうか。

 

ホームラン競争のルール変更のスピードに驚くばかり

 

 この日は大リーグ機構(MLB)がオールスター戦前日の15日(日本時間16日)に開催する本塁打競争のルール変更を発表した。

 

 出場選手の負担軽減を目的に球数制限を設け、1回戦は延長戦を行わないという。昨年までのルールは選手の負担が大きく、スター選手が出場を辞退するケースも続いていた。(この時点では)態度を保留している大谷と球団の判断に変化は出るだろうか。

 

 ジャッジだけでなく大谷も辞退されるのは避けたい。そんな思惑があったかどうかは定かではないが、内容の是非はさておき、こういう時のメジャーリーグ、米国のプロスポーツ組織の動きの早さには驚くしかない。

<つづく>

 

(「テレビに映らない大谷翔平:番記者日記」柳原直之(スポーツニッポン) = 文)

###

 

-------------------------------------------------------------

 ■ NOTE