2024年6月28日

 

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 ■ 今日の大谷翔平(関連NEWS)

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◯ セイコーウオッチ株式会社は、大谷翔平が出演する新CM「<セイコー プロスペックス>『挑戦への軌跡』篇」を28日から公開すると発表した。CMではセイコーがこれまで行ってきたインタビューをもとに、大谷がこれまで挑戦していた場所の風景と、そこでの言葉をつなぎながら、時計が人生に寄り添うアイテムであるという意図を込めた演出とともに「挑戦の軌跡」を表現する。

 

◯ オールスター戦の先発出場野手を対象にしたファンによる1次投票の結果が27日(日本時間28日)に発表され、大谷翔平はナ・リーグ指名打者部門で277万7173票を獲得して1位となり、2次投票進出が決まった。スタメン出場野手は2段階の投票で決まる。1次投票は米東部時間6月27日12時(同28日午前1時)まで行われており、各リーグの最多得票となった2選手の選手出場が決定する。ア・リーグはアーロン・ジャッジ外野手(ヤンキース)が342万5309票、ナ・リーグはブライス・ハーパー内野手(フィリーズ)が327万7920票で各リーグの最多得票となり、2次投票に進むことなく先発出場が決まった。

 

各ポジションの中から上位2人(外野手は最大6人)が2次投票に進出し、2次投票は同30日12時(同7月1日午前1時)にスタート。同7月3日12時(同4日午前1時)まで行われる。ナ・リーグ指名打者部門では2位がカイル・シュワーバー外野手(フィリーズ)で150万8216票を獲得。2位の大谷とは126万8957票差だった。先発出場野手は7月3日(同4日)に米スポーツ局「ESPN」で発表される。投手と控え野手は選手間投票などで選出され、7月7日(同8日)にオールスター戦の全選手が出揃う。大谷が先発出場となれば4年連続4度目となる。

 

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◯ ドジャースのバットボーイが、大谷翔平の「命を救った」と話題になっている。大リーグ公式サイトも27日(日本時間28日)、「大谷が打点の記録を樹立…。バットボーイが命を救う前に!?」と題した記事を掲載した。大谷は26日(日本時間27日)のホワイトソックス戦の初回、2試合連続の先頭打者本塁打を放ち、球団新記録の10試合連続打点を達成。大リーグ公式サイトは「大谷は新記録だが、しかしこの夜の最も印象的な偉業は、ドジャースのバットボーイ、ハビエル・ヘレーラのものかもしれない」と伝えた。

 

場面は3回。大谷は三塁ベンチ内におり、打席のキケ・ヘルナンデスが打った強烈なファウルボールがベンチに向かって飛んで来た。MLBの公式インスタグラムはその瞬間の動画をアップ。背番号94のユニホーム姿のヘレーラさんは、飛んで来たボールを素手で両手でキャッチ。すぐ背後にいた大谷は慌てて避けたが、ボールをキャッチしてうなずいているヘレーラさんに気付くと笑顔で感謝を伝えた。真横にいた大谷の通訳ウィル・アイアトンさんは、口をポカンと開けて仰天。MLBインスタグラムはその写真とともに「BALLBOY SAVES SHOHEI OHTANI(ボールボーイが大谷翔平を救った)」と投稿した。

 

 

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 ■ 球界情報

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ニューヨーク・ヤンキース:

◯ ヤンキースは27日、敵地でのブルージェイズ戦に大敗。4連敗を喫し、ついに2位に転落した。先発・ロドンが立ち上がり、スプリンガーに3ランを浴びるなど1死も奪えないまま5失点。2回にもスプリンガーに2打席連続3ランを浴び、大量リードを許した。5回を投げ10安打8失点と、4回途中8失点だった前回ブレーブス戦に続く背信投球となった。序盤に大量リードを許した打線もグリシャムの2ランのみに抑えられた。ジャッジは4打数無安打で3戦連発とはならなかった。

 

ヤンキースは今季、ロドンが昨季の不振から復活、ヒルも9勝を挙げ新人王の有力候補に挙がるなど先発陣の安定が、打線と上手くかみ合いア・リーグ東地区首位を走る原動力となっていた。ところが、12失点で大敗した前日26日のメッツ戦に続き、この日も一方的な展開で敗れ、4連敗に。直近10試合は2勝8敗で、総失点は79点と1試合平均、7失点以上と投手陣に疲労の色が見える。この日、同地区2位のオリオールズがレンジャーズに快勝。ゲーム差は0ながら、勝率で上回りヤンキースに代わって首位に立った。

 

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 ■ 注目記事&コラム

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◆ 担当記者が伝えるドジャース大谷翔平の取材現場 負け試合でも取材に応じる7年目の変化

柳原直之氏/スポニチ)

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ドジャースの大谷翔平投手(29)の担当記者として、6月21日の本拠地ロサンゼルスでのエンゼルス戦から約2カ月ぶり、今季2度目の米国出張に来ている。

 

 メジャー取材は日本のプロ野球と違って、試合前後にクラブハウスで取材できるのが大きな特徴の一つ。26日にシカゴで行われたホワイトソックス戦では野手のミーティング終了後に捕手バーンズが大谷に向かって「ショウヘイ!ホームラン!」と茶化し、大谷は「ハハハ」と苦笑。その数時間後の初回に先頭打者アーチを描き、記者席で見ていた私も「本当に打った!」と驚くしかなかった。

 

 クラブハウスでは選手とのマンツーマン取材が可能だが、大谷は二刀流で調整が多忙のため禁止。昨年9月に受けた右肘手術の影響で今季は打者専念のシーズンだが、注目度の高さからそのルールは変わっていない。ルールを知らないシカゴの現地記者がロッカーで着替え中の大谷の後ろで待ち構えていたが、セキュリティー担当にしっかり止められていた。

 

 大谷はマスメディアと一線を引いている印象が強く、私のような担当11年目の記者だろうが、新人記者だろうが、球界OBだろうが、対応はほぼ同じ。報道内容の差は出づらいが、フェアな考え方でもある。新居購入の報道をめぐり一部メディアがドジャースの取材パスを凍結されたとする報道もあったせいか、私が渡米したタイミングは少しピリピリした雰囲気を感じた。

 

 一方、エンゼルス時代との大きな違いは取材対応の多さ。渡米後1週間で囲み取材は3度、ヒーローインタビューのみの日が1度。渡米前の19日にコロラドで行われたロッキーズ戦では負け試合にも関わらず囲み取材に応じていたが、エンゼルス時代ではあまり考えられなかった光景だ。

 

 大型契約での新天地1年目、自身の結婚、元通訳の水原一平被告の“事件”など様々な環境が変わったことによる考え方の変化や、そもそものドジャース広報部のポリシーなのかもしれないが、試合後の体のケアの合間を縫って真摯(しんし)にメディア対応する姿には頭が下がる思いだ。

 

 1883年創設の名門球団の歴史をわずか3カ月足らずで次々と塗り替えている。今回の出張は7月下旬までの1カ月強。もはや形容する言葉がないほどのパフォーマンスを見せ続ける大谷の言葉をしっかり伝え続けていきたい。(記者コラム・柳原 直之)

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◆ ドジャース・大谷に学ぶ“準備と本番での冷静さ”の重要性

柳原直之氏/スポニチ)

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【記者フリートーク】思い込みはいけない。ドジャース・大谷の25号先頭弾の打席。2球目のカットボールが高めのボールに見え、実際は2ボール1ストライクのところをスコアブックに3ボールと記した。試合後、大谷に「3ボールから四球も頭にちらつく中、どうアプローチしていたか?」とトンチンカンな質問をし「いつですか?最初ですか?」と困惑させた。

 

 24号先頭弾を放った25日、大谷は打球の行方が気になって一塁ベースを踏んだか確信がなく、二塁到達直前にUターンして一塁を踏み直した。実際は踏んでいたが、ベースを踏まずに相手からアピールされればアウト。その後、クレイトン・マッカロー一塁コーチから「本塁打を打つのは難しいな」とイジられたが、大谷に思い込みはなかった。大事なのは準備と本番での冷静さ。改めて大谷から学んだ。(MLB担当・柳原 直之)

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◆ 大谷翔平、3冠王を予感させる“理由” 数値が示す進化…軒並みキャリアハイの衝撃

小谷真弥氏/Full-Count)

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 ドジャース・大谷翔平投手は28日(日本時間29日)からジャイアンツとの敵地3連戦に臨む。最近10試合で打率.444、8本塁打、17打点。6月男の本領発揮となっているが、絶好調の理由はどこにあるのか。MLB公式サイト「ベースボール・サヴァント」で紐解いた。

 

 大谷の好調の要因について、デーブ・ロバーツ監督はストライク・ボールの見極めを挙げている。数値を見れば一目瞭然だ。着目したのはボールゾーンのスイング率を示す「O-Swing%」。27.6%は昨季の29.7%から2.1%低い数値となり、いかにボール球に手を出していないかが伝わってくる。

 

 凡退の内容も変わっている。打席のうちの三振の割合を示す「K%」は19.7%に。昨季の23.9%から4.2%も減らし、キャリア最高の数値となっている。ゴロ・ライナー・フライなど打球の割合はゴロ40.5%、ライナー28.5%、フライ27.3%。昨季はゴロ42.6%、ライナー22.7%、フライ30.3%だった。ゴロ・フライの割合が減り、ライナーの割合が増えていることからバットの芯で捉えていると言える。

 

 バットの芯で捉えていることは「平均打球速度」にも表れ、今季の95.6マイルは7年目で自己最速。昨季94.4マイルから1.2マイルも上げている。打球速度95マイル以上の打球割合を示す「ハードヒット率」もキャリア最高の61.6%。平均打球速度とハードヒット率は、メジャー全体ではヤンキースのアーロン・ジャッジ外野手に次ぐ好数値となっている。

 

 レギュラーシーズン82試合を消化。大谷は打率.322、25本塁打でリーグトップ。61打点はトップと3点差のリーグ3位につけ、100安打、16盗塁をマークしている。シーズン換算すれば、49本塁打、120打点、197安打、31盗塁と軒並みキャリアハイの成績となる。球団新記録で日本人初のシーズン50発はもちろん、トリプルスリー、2012年ミゲル・カブレラ以来、史上15人目の3冠王も期待大だ。1週間後の7月5日に30歳の誕生日を迎える大谷は、どこまで数字を伸ばしていくのだろうか。

 

小谷真弥 / Masaya Kotani

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◆ 大谷翔平「48本塁打120打点32盗塁 打率.320 OPS1.033」ペースより“スゴい事実”ドジャース1年目と昨季エンゼルス各種記録を並べると…

広尾晃氏/NumberWEB)

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 ドジャースでの1年目を折り返した大谷翔平。エンゼルス最終年と比較してわかる、30歳直前での新次元への突入とは。

 

 6月24日、大谷翔平がナ・リーグの前週の週間MVPに選ばれた。大谷の週間MVPはこれが9回目である。

 

大谷の「9度目の週間MVP」スゴさがわかる比較

〈大谷の週間MVP〉

・アメリカンリーグ7回

 2018年:2回(4月2~8日、9月3~9日)

 2021年:2回(6月14~20日、6月28~7月4日)

 2023年:3回(6月12~18日、6月26~7月1日、7月24~30日)

・ナショナルリーグ2回

 2024年:2回(4月29~5月5日、6月17~23日)

 

 計9回のうち、6月が絡む週が5回。6月に強い大谷ならではだ。

 

〈日本人の週間MVP獲得回数〉

 大谷翔平:9回(2018年2回、20年2回、23年3回、24年2回)

 イチロー:5回(2004年、06年、10年、12年、16年各1回)

 野茂英雄:4回(1995年1回、96年2回、2001年1回)

 松井秀喜:4回(2003年、04年、05年、11年各1回)

 佐々木主浩:1回(2001年)

 松坂大輔:1回(2007年)

 岩隈久志:1回(2015年)

 鈴木誠也:1回(2022年)

 ダルビッシュ有:1回(2022年)

 吉田正尚:1回(2023年)

 

 イチロー、野茂、松井の複数回も十分偉業なのだが――大谷の活躍が、他の日本人選手とはかけ離れた次元になりつつあることがわかる。なお何かと比較されるヤンキースのアーロン・ジャッジは通算11回受賞している。

 

 そんな大谷について、様々な数字から検証してみよう。

 

オオタニ効果でドジャースの観客も増加

 大谷が今季から移籍したロサンゼルス・ドジャースは、MLBでは最も観客動員が多い球団である。大谷の入団で、平均観客数はどうなったか? ※数字は6月25日時点

 

 2023年:4万7371人(1位)→2024年:4万7523人(1位)

 

 若干減っていることになる。しかしこれはキャパが1万7000人弱の韓国、高尺スカイドームでのパドレスとの開幕シリーズ2試合が含まれているため。それを除くと、4万9142人となり、観客動員自体は伸びている。

 

 ちなみに、MLBでこれに次ぐのがニューヨーク・ヤンキースの4万873人だが、NPBの阪神タイガースは4万1719人。阪神は世界で2番目にお客を動員しているプロ野球チームということになる。

 

 ドジャースの本拠地、ドジャースタジアムのキャパは公称5万6000人、ヤンキースのヤンキースタジアムは座席数で5万287人だが、阪神甲子園球場はプロ野球興行時では4万2600人だ。甲子園は「世界で一番動員率が高いプロ野球スタジアム」と言ってよいかもしれない。とにかく今年は、チケットが全く取れない。

 

オオタニが去ったエンゼルスの観客動員はどうなった?

 話を戻して――大谷が去ったロサンゼルス・エンゼルスの観客動員はどうなのか? 

 

 2023年:3万2600人(12位)→2024年:3万341人(13位)

 

 エンゼルスも人気球団の1つだが、今季の観客動員は若干下がっている。

 

 観客動員でいえば、MLB球団の格差は驚くべきものになっている。「マネーボール」で一世を風靡したオークランド・アスレチックスは、エンゼルスと同じア・リーグ西地区だが、観客動員は以下のようになっている。

 

 2023年:1万276人(30位)→2024年:7279人(30位)

 

 NPBで最も観客動員が少ない西武ライオンズでも2万1100人だから、その3分の1強しか動員していない。

 

 アスレチックスで「マネーボール」の立役者となったビリー・ビーンGMは、今も副社長として在籍している一方で、観客動員が伸び悩んでいる本拠地のオークランド・アラメダ・カウンティ・コロシアム(キャパ3万5067人)からの移転を決定。2028年からラスベガスを本拠地にすると発表した。今は「つなぎ」の時期ということで球団は動員に力が入っていないし、ファンも興ざめ状態になっている。ドジャースタジアムではチケットが高騰しているが、オークランドでは1枚1000円程度のチケットもある。

 

 8月2日から4日は、オークランドでアスレチックス対ドジャースのカードが組まれている。さすがにチケットは高くなるだろうが、大谷の試合をよい席でゆったり見るには、オークランドが「穴場」なのかもしれない。

 

折り返し点での大谷とドジャース打線の成績は…

 さてドジャースは現地6月25日の試合で、81試合を消化した。162試合の折り返し点だ。

 

 この日のドジャースの打線は、成績を含めてこうなっていた。

 

 1指:大谷翔平78試309打99安24本60点16盗 率.320 OPS1.033

 2捕:スミス68試254打67安11本46点0盗 率.264 OPS.801

 3一:フリーマン81試297打89安12本48点3盗 率.300 OPS.907

 4中:パヘズ61試228打58安8本23点1盗 率.254 OPS.718

 5右:ヘイワード35試96打22安4本17点3盗 率.229 OPS.778

 6遊:ロハス50試137打38安3本15点3盗 率.277 OPS.753

 7二:ラックス62試209打47安2本19点3盗 率.225 OPS.580

 8左:バルガス13試32打11安1本6点1盗 率.344 OPS.968

 9三:ビジオ9試25打5安0本1点0盗 率.200 OPS.595

 

 さらにこの日はスタメンを外れたが、

 

 左:ヘルナンデス79試303打77安18本54点4盗 率.254 OPS.813

 

 というスラッガーがいる。またIL(負傷者リスト)には、遊撃手のムーキー・ベッツ、三塁手のマックス・マンシーもいる。

 

 遊:ベッツ72試283打86安10本40点9盗 率.304 OPS.892

 三:マンシー40試139打31安9本28点0盗 率.223 OPS.798

 

 ドジャースは50勝31敗で、ナ・リーグ西地区の首位を走っている。ベッツ、マンシーら主力選手を欠く中で、大谷が強豪ドジャースの絶対的な中心打者になっていることがわかる。

 

 折り返し点での成績なので――単純に倍にすれば、今季の成績が予想できる。

 

 156試618打198安48本120点32盗 率.320 OPS1.033

 

 もう少し頑張れば、イチロー以来の日本人打者の200本安打も可能だ。2年連続本塁打王、首位打者、さらに30-30、トリプルスリーも達成することになる。打者としてはキャリアハイになる可能性が高い。

 

23年のエンゼルス打線と大谷はどうだった?

 昨年はエンゼルスにいた大谷だが、ちょうど1年前の6月25日、79試合目のエンゼルスの成績は以下のようになっていた。

 

〈42勝37敗 ア・リーグ西地区3位 主要なラインナップ〉

 1左:ウォード72試273打68安9本30点3盗 率.249 OPS.704

 2指:大谷翔平77試300打89安25本61点10盗 率.297 OPS1.001

 3中:トラウト74試278打71安17本41点1盗 率.255 OPS.850

 4二:ドルーリー71試267打73安13本42点0盗 率.273 OPS.815

 5一:レンフロー71試276打71安12本37点0盗 率.257 OPS.758

 6三:エスコバー42試118打30安4本17点2盗 率.254 OPS.737

 7右:モニアック27試210打62安11本37点1盗 率.348 OPS.1099

 8捕:ウォーラック36試91打21安6本11点0盗 率.231 OPS.736

 9遊:フレッチャー10試24打6安1本0点0盗 率.250 OPS.655

 

 昨年のエンゼルスはまだこの時点では勝ち越していた。同地区1位のレンジャースとは6ゲーム差だったが、ワイルドカード争いでは圏内にいた。そして大谷+トラウトの「トラウタニ」は、何とか機能していた。

 

 さらに投手・大谷はこの日までに6勝3敗、防御率3.13でエースの働きをしていた。

 

 ここから調子を上げてポストシーズンに進出していれば、FA年限を迎えた大谷が残留する可能性もあったのだろうが――以後、エンゼルスは31勝52敗と大きく負け越した。

 

 そして柱と恃むマイク・トラウトは、7月3日を最後に長期の戦線離脱。大谷も44本塁打で本塁打王のタイトルを獲得したものの右ひじ靱帯損傷が発覚し、さらには右脇腹を痛めて9月3日を最後にIL入りしている。

 

23年と24年の大谷の成績を並べると興味深い

 この時点での大谷について、ドジャース1年目と見比べると興味深いことがわかる。あらためて、それぞれの成績を並べてみよう。

 

 23年:77試300打89安25本61点10盗 率.297 OPS1.001

 24年:78試309打99安24本60点16盗 率.320 OPS1.032

 

 2023年も2024年も計ったように、同じような成績を残しているのだ。

 

 なお23年は盗塁こそやや少なく、打率は3割を割っている。ドジャース移籍でそれを伸ばした上で――大谷はリーグが変わっても、変わらずトップクラスの成績を上げているという証拠である。

 

 エンゼルス打線の現在を見ると、テイラー・ウォード、ブランドン・ドルーリー、ミッキー・モニアックは今季もエンゼルスでプレーしているが、トラウトは5月に左ひざの手術をして戦線離脱。ハンター・レンフローは昨シーズン中にレッズに移籍し、今季はロイヤルズでプレーしている。

 

 エドゥアルド・エスコバーは今はブルージェイズ傘下、8番のチャド・ウォーラックはエンゼルス傘下のマイナーでプレー。大谷と仲が良かったデービッド・フレッチャーはブレーブス傘下にいるものの、違法賭博に関与した嫌疑がかかっている。

 

シビアな競争環境で成績を残す大谷の凄まじさ

 MLBでは不振だったチームはすぐに「解体モード」になって、選手が離散する。エンゼルスの選手の異動を見ていると、そのシビアさが実感できる。

 

 6月25日時点でのエンゼルスは、32勝46敗でア・リーグ西地区4位。今季もそろそろ「解体モード」になりそうだ。このシビアなMLBの競争環境にあって、何の苦労もないように成績を残す大谷には、感嘆せざるを得ない。

 

 と、記事を書いている目の前で、大谷がまた先頭打者ホームラン――82試合目での25号を放った。毎度のように記す老婆心だが、とにかく怪我、故障なくシーズンを全うしてほしい。

 

 そうなれば様々な大記録はおのずとついてくるのだから。

 

(「酒の肴に野球の記録」広尾晃 = 文)

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◆ 時給9ドル&朝3時出勤 大谷を守ったのは…バットボーイ歴20年の“二刀流ベテラン”38歳

(Full-Count)

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 大谷翔平を守った38歳のバットボーイが大きな注目を浴びている。26日(日本時間27日)に敵地で行われたホワイトソックス戦で、ファウルを素手で見事にキャッチ。そのシーンはたちまちネットで話題となり、球団やMLB公式も取り上げる事態に発展した。そのバットボーイは18歳の時から働く“苦労人”だった。

 

 バットボーイのハビアー・ヘレラさんは、野球好きが高じて18歳の時からドジャースのバットボーイ兼クラブハウスのアシスタントとして働いている。2015年には本拠地レッズ戦で三塁ファウルグラウンドのボールボーイを務めていた際に打球を捕球しようとしてスタンドに落下してしまい、話題となったこともある。

 

 地元紙「ロサンゼルス・タイムズ」の当時の記事によると、2015年時点でバットボーイとしては最古参。時給9ドル(約1400円)で、日中は検眼士の職員として仕事をこなし、ナイターの日は試合が終わった後の雑務をこなして午前2時まで勤務。そして、チームが遠征から帰ってくるときは、トラックから荷物を運ぶ為に午前3時に向かう日々を送っていたと紹介されている。ヘレラさんは「私が(この仕事)をしているのは、私の心がドジャースにあるからです」と球団への愛を語っている。

 

 27日(同28日)には球団公式カメラマンのジョン・スーフー氏がヘレラさんの写真を公開。左腕にはMLBのロゴのタトゥーが見られた。同記事は「彼は野球が好きすぎて、18歳でドジャースのクラブハウスの職員になったあと、メジャーリーグのロゴのタトゥーを腕に入れた」と伝えている。

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◆ バー店主に転身した“大谷翔平のドラ4同期”「彼をウリにしたくない」ワケは…大谷の隣で「ただ精一杯だった」宇佐美塁大の“プロ5年間”

佐藤春佳氏/NumberWEB)

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新天地のロサンゼルス・ドジャースで活躍を続ける大谷翔平。2013年、北海道日本ハムファイターズに同じ高卒入団の同期としてプロの門を叩いたのが宇佐美塁大(るいた)さんだ。誰よりも近くで大谷と過ごした5年間、そして今年で30歳を迎える「大谷翔平世代」の“現在地”とは――。現在は広島市内でバー「BIG BASE」を経営する宇佐美さんに聞いた。《NumberWebインタビュー全2回の初回》◆◆◆

 

 広島を代表する歓楽街・流川。飲食店のネオンが縦長に並ぶビルの一角にその店はある。カウンターとテーブルが少し。シンプルな作りの店内に、野球にまつわる装飾は何ひとつない。選手のサイン色紙はおろか、ボールやバットといった道具も。ふらりと店に入った客は、店主が数年前までプロ野球の世界で戦っていた選手とは気づかないだろう。ましてやあの大谷翔平の同期入団で、駆け出しの時期に誰より近くにいた存在だったなんて。

 

店内に大谷グッズは置かない

「野球関係の物は最初から置いてないです。そういう色を見せずにやりたいというか、自分から言うのも違うと思いますし……。あまり宣伝もしていないですし、知っている人がその友達を連れてきて、というような感じでやっていますね。(大谷を売りにはしない? )そういうことはしたくないです。単純に彼も嫌がるでしょう」

 

 店名は「BIG BASE」。言うまでもなく、宇佐美さんの名前である「塁大」からきている。野球熱が高い広島出身。名前の真ん中に「塁」を据えた彼の野球人生とは、そもそもどのようなものだったのだろうか。

 

 愛媛・西条市生まれだった宇佐美さんの父は、西条農業高から亜細亜大と野球を続け、社会人野球のNTT中国(2003年に解散)でプレーした外野手だった。宇佐美さんが生まれた頃には現役を引退していたが、その思いを名前の一字に受け継いだ少年は物心ついた時からボールを手にしていた。「広島南リトル」で硬式野球を始め、中学時代は「府中広島’2000ヤング」に所属。もちろん、カープ少年だった。

 

「野球をやる人生なんだな、とは勝手に思っていました。でも小中学校の頃は背も低くて小柄。セカンドを守って下位打線を打つような“守備キャラ”だったんです。レギュラーで試合に出られるか出られないか、くらいの選手。野球やめようかな、って感じでその頃はいい思い出なんて全然なかった」

 

勝ち取った甲子園、大谷のことは知らなかった

 それでも高校は地元の広島工業高を選んだ。ヤクルト・高津臣吾監督や広島・新井貴浩監督を輩出した古豪。その練習についていけるか不安を覚えていた入学直前の数カ月で“奇跡”が起きた。

 

「中学3年の冬から高校に入る春までの期間で、身長が急激に伸びたんです。160cm前半だったのが172、3cmまでどんどん伸びて、体も大きくなった。周りからは本当にびっくりされました。自分でも何か今までと違う感覚が出てきて、入学した最初の練習では周りと比べても行けるんじゃないか、という自信が漲ってきたんです」

 

 2学年上に和田凌太(元巨人育成)という憧れの存在がいたこともあり、必死に練習に取り組んだ結果、“守備キャラ”はいつしか“スラッガーキャラ”に変身していた。高校通算45本塁打。3番打者として挑んだ3年夏は県大会で打率.571、3本塁打の大活躍で同校20年ぶりとなる夏の甲子園出場を勝ち取った。

 

「高校時代はとにかく必死でした。とにかく地元で一番になりたい、という思いでやっていた。甲子園の入場行進の時なんかに藤浪(晋太郎)や田村(龍弘)とか有名な選手がいて、その時初めて同世代ですごい選手がいるんだな、と意識しました。そこまで情報がある時代ではなかったので大谷翔平のことは当時よく知らなかったです」

 

常に一緒に行動した“3人の高卒同期”

 2012年ドラフト4位で日本ハムから指名を受けた宇佐美さんは入団早々、その“怪物”の凄さを知ることになる。ドラフト1位の大谷はメジャー挑戦を表明していたため新入団会見は不在。急転直下で日本ハム入りを決断し、千葉・鎌ケ谷の選手寮に入寮した13年1月に初めて顔を合わせた。高卒入団は宇佐美さんと大谷、そしてドラフト2位指名の森本龍弥内野手。3人は常に一緒に行動していた。

 

「同学年ということで僕も初対面から気軽に喋りかけていたし、(大谷も)喋りかけてくれていました。一番衝撃を受けたのはバッティングです。飛距離もですけど、逆方向も含めてあんなに広角に打てる選手は初めて見ました。捉え方というか、どんな球に対しても強い打球を打てるのは凄いと思いました」

 

 夕食の後にはよく大谷と誘い合って夜間練習に励んだ。選手寮に隣接する室内練習場でかわるがわるトスを上げながらティーバッティングを繰り返した。

 

「(大谷は)紐のように打つんですよ。硬いバットではなく、パシンと紐で打っているような柔らかさがある。それでいてネットに当たる打球の音は凄かった。持って生まれたものもあるし、努力してきたこともあるだろうし、それを表現できるセンスもある。僕も打った後に『どう? 』って聞いたりするんですけど、『いいんじゃない』とかいつも適当に答えられて(笑)。バッティングは全く教えてくれなかったです」

 

市民プールでおじいちゃん、おばあちゃんに囲まれて

 感心したのは大谷が練習に関して自分の軸をしっかりと持っていたことだ。特に若い選手は大抵マシン打撃で球数を多く打ち込みたがるものだが、大谷はそれをしない。屋外でのフリー打撃でも飛距離や柵越えの数を気にすることは一切なく、球数自体が少なかった。

 

「僕らは外で気持ちよく打ちたいし、感覚を逃したくないのである程度数を打って無意識にできるようにするんですが、彼はそれをしない。遅い球を打ってみたり、色々な構えを試しながら打ってみたり……。鏡の前でフォームをチェックするだけ、とか、マシンの前に立って球を見るだけ、ということもありました。打つ感覚よりも、最初の構えや体のポジションとかでその後の動作が全て決まる、というような理論なのだと思います。今も外で打つことは多くないみたいですが、プロ1年目からそんな感じでしたね」

 

 5年間、寮生活だった二人はプライベートの時間もよく共にした。部屋で携帯ゲームをしたり、一緒に映画を見ることも多かった。時には電車に乗って連れ立って外出することもあったという。

 

「1年目のオフには市民プールに行ってみたりしました。おじいちゃん、おばあちゃんばっかりで『大谷くんじゃない? 』みたいな雰囲気の中で(笑)。トレーニングというわけではなく、泳ぎに。僕はあまり泳げなかったけれど、彼は小さい頃水泳をやっていたみたいで泳ぎが得意なんです。映画館に行った時は道中でバッグから小分けにしたサプリメントの袋を取り出して『ちょっと飲んでいい? 』と。休みなのに凄いなと驚いたことを思い出します」

 

「彼と比べることも、見て学ぶこともなかった」

 当時の宇佐美さんにとって、大谷翔平は“怪物”というよりは同期入団の友人という存在だった。一方で大谷も、朗らかで距離感の取り方が上手い宇佐美さんに心を許していたのだろう。一軍で投打二刀流の活躍を見せ2年目、3年目とステップアップしていく中でも、二軍施設で調整する際には宇佐美さんによく、「ホームラン競争」を仕掛けてきたという。

 

「特に何か賭けるわけでもないんですけど『ホームラン競争しよう! 』と。僕が勝てるわけはないのに、向こうから言ってきて、当然僕が負ける。勝負にもなってないですけど彼は嬉しそうでした(笑)。僕自身は彼と比べることも、見て学ぶこともなかった。彼がやっていることを自分ができるものだとは思っていなかったです。僕はただ、自分のことで精一杯でした」

 

 実はこの頃、宇佐美さんは大谷にも相談できない深刻な悩みを抱えていた。《インタビュー後編に続く》

 

(「プロ野球PRESS」佐藤春佳 = 文)

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◆ ブルペンからの脱却。常識化されたものを疑う。ブルージェイズ・菊池雄星の試み。

一村順子氏/スポナビ)

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 ベテラン左腕が、新しい試みを始めている。「脱・ブルペン」。今季限りで3年総額3600万ドルの契約が満了する菊池雄星投手。通算150試合登板の節目となった23日(日本時間24日)、敵地でのガーディアンズ戦は、3回無死満塁で悪天候による中断。そのまま降板し、救援投手が打たれる不運もあって7敗目を喫したが、パワーピッチャーとしての実力は誰もが認めるところ。ブルージェイズがア・リーグ東地区最下位と低迷していることもあり、7月末のトレード期限の”目玉”としても名前が上がっている。

 

 次回登板は28日(同29日)のヤンキース戦に決まった。24日(同25日)から敵地でのレッドソックス3連戦中のどこかで、ブルペンに入るだろうと予想していたが、「いいえ。入んないですよ。今年は1回も入ってない」と、意外な答えが返ってきた。今季16試合に登板し、1度も登板間にブルペンに入っていないと言う。先発投手の常識を覆す「脱ブルペン理論」を、本人に深堀りしてもらった。

 

 そもそも論に立ち戻ると、「僕のブルペンはアテにならない」(菊池)と認識したのだという。どんな投手も、試合本番で投げる球とブルペンでは出力が違うのは当たり前。だが、菊池の場合は、その差が顕著過ぎたという。

 

 「僕、ブルペンで(球速が)90マイル(145キロ)を越えることが、あんまりないんです。でも、試合では96マイル(156キロ)とか投げる訳じゃないですか。6マイルと言えば、10キロくらい違う訳ですから、もう別モノ。それで、良かったり、悪かったりしても、あんまりアテになんないな、と。他のピッチャーだと、大体2マイル差なんです。試合とほぼ同じパフォーマンスを出せる投手もいます。そういう人はアテにしていいと思いますよ。でも、僕みたいなピッチャーはアテになんない。バッターがいないと興奮しないというか、アドレナリンが出ない(苦笑)。思いっきり投げて『今の何マイル?』と聞くと、『88マイルです』みたいな。こりゃ、いくら投げてもダメだと」

 

 もう一つの理由は、疲労を考慮したコンディショニング面だ。一般的にどんな投手も、中4日より、中5日の方が球速がアップする傾向にある。菊池も、昨年のデータを検証すると、中5日の方が中4日より球速が約1マイル速かった。「じゃあ、その差は何かというと1日分の疲労回復。今年は、いかに疲労を取るかというところをテーマにしています。ブルペンを辞めたのが、直接の理由かどうか分からないですけど、体は楽なんじゃないかなと思うし、一応、平均球速も全体的に上がっている。今のところ、いい方にいっていると思う」

 

 先発投手の登板間ブルペンは常識化しているが、実は、結構な負担が掛かる。まず、それなりの準備が必要だ。「怪我は怖いし、色んな筋肉に刺激を入れないといけない。試合に近い形で1時間くらいかけてやる」。ダッシュも含めたブルペン用のアップは念入りで、単純に球数を10球程減らしたところで、労力を大幅軽減する訳ではない。そこで、大胆にもそっくりブルペンを辞める、という判断に至った。

 

 162試合を中5日で投げると想定した場合、先発投手は、健康なら年間で約30試合に登板する。1試合球数100球前後で降板すれば、年間3000球投げることになる。登板間にも35球前後、ブルペンで投げるとすれば、シーズン中のブルペンだけで約1000球。試合で投げる約3分の1に相当する。今月17日に33歳を迎えた左腕は、最近、キャッチボールも5分以内で終了することを心掛け、試合前のブルペンでも20球程度だという。

 

 「健康で1年間ローテーションを守って、その先(のキャリア)を考えると、いかに怪我をしないか、というところに行き着く。スタッツ(成績)も大事だけど、僕が一番フォーカスしたいのは、『雄星は中4、中5日で廻ってくれる』というところ。そう考えた時に、やっぱり、登板間の疲労回復ということで、ブルペンの負担を減らすことに行き着いた。正直、そこまで先は見ていないし、そのためにブルペンを辞めた訳じゃないけど、少なくとも今季に関しては、試合は試合。練習は練習でしかない、と。そこを求めすぎないように割り切っている感じですかね」

 

 チームから信頼され、1年間を通じてローテを任される投手ー。目指す方向がクリアだから、優先事項も明瞭になる。メリットとデメリットを天秤に掛けた結果の「脱・ブルペン」だった。先発投手には珍しいが、前例がない訳ではない。ブルージェイズOBでホワイトソックスなどでも活躍し、14年連続200イニング登板という、今となっては、信じ難い偉業を達成したマーク・バーリー投手が、そうだった。打たせて取る典型的な省エネ投球で投球テンポも早かった。ブルペンに入らず、故障知らずのキャリアを築き、15年連続で30試合以上に登板した。

 

 「チームでは僕の他は皆、ブルペン入ります。僕も数年前まではそうだった。中5だったりすると登板間に2回入ることもありましたが、去年から、中4日の時はブルペンに入らなくなりました。キャンプでは、球数を投げて肩をつくるという意味もあって、ブルペンに入りましたけど、それでも球数は20球とか少なめです」

 

 ウォーカー投手コーチは「登板間の調整は、キャッチボールでもできる。ブルペンの最大のメリットは、傾斜で投げて確認ができること。何か特別に修正したいことがあれば、傾斜で投げるのが、一番いいんだけれど、今の雄星は、すごくいいボールを投げている。今のところ、特に傾斜で取り組まなければならないことはないし、球自体はとてもいい」と、新しい調整法を見守っている。

 

 現実に「脱・ブルペン」は極めて少数派だし、万人に効果があるとは言い難いだろうが、メジャーの求める先発像が、かつての先発完投型から、年間通じたクオリティ・スタートにシフトして久しい今、伝統的な調整法の見直しは、一考の価値がある。もちろん、豊富な経験を元に、ルーチンが確立され、コンディションを把握できるベテランだからこそ出来る調整法でもあるだろう。常識化したものを疑う。習慣化していることを見直す。長年、必要と思い込んでいるものを手放す。もしかしたら、ビジネスや人間関係でも、大事な発想なのかもしれない。

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 ■ NOTE