2024年6月5日

 

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 ■ 試合データ

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米国時間:2024年6月4日

日本時間:2024年6月5日(水曜日)

7時40分開始

ロサンゼルス・ドジャース

対ピッツバーグ・パイレーツ

@PNCパーク

 

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【MLB.JP 戦評】

 日本時間6月5日、ドジャースは敵地PNCパークでのパイレーツ3連戦がスタート。その初戦は先発のタイラー・グラスノーが好投したものの、打線がジャレッド・ジョーンズをはじめとするパイレーツ投手陣を攻略できず、0対1で完封負けを喫した。パイレーツ先発のジョーンズは6回3安打無失点で4勝目(5敗)を挙げ、完封リレーを締めくくった4番手のデービッド・ベッドナーが12セーブ目を記録。グラスノーは6回3安打1失点の好投を見せたが、被弾に泣き、4敗目(6勝)を喫した。

 ドジャースは初回二死から連打で2・3塁のチャンスを作ったが、テオスカー・ヘルナンデスがサードゴロに倒れて無得点。2回表無死2塁、3回表二死1・2塁の好機も生かせず、3回裏一死からジャック・スウィンスキーの5号ソロで先制を許した。グラスノーは5回裏先頭のヘンリー・デービスから空振り三振を奪い、今季メジャー一番乗りで100奪三振に到達するなど、6回97球を投げて被安打3、奪三振9、与四球2、失点1の好投。しかし、打線は最後までパイレーツ投手陣を攻略できず、3連戦の初戦は0対1の完封負けとなった。

 ドジャースの大谷翔平は「2番・DH」でスタメン出場し、右腕ジョーンズの前に最初の3打席は空振り三振、ショートゴロ併殺打、空振り三振で凡退。8回表の第4打席は剛球左腕アロルディス・チャップマンとの対戦となり、センターへヒットを放ったが、チームの得点にはつながらなかった。4打数1安打で2試合ぶりのヒットを記録し、今季の打撃成績は打率.321、出塁率.390、OPS.980。あす以降の2試合でピッツバーグでの初アーチが飛び出すか注目される。

 

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 ■ 今日の大谷翔平(関連NEWS)

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【スタメン】

2番DH

 

【出場成績/打者】

4打数 1安打 2三振

通算打率・321

OPS・980

 

◆第1打席:

(結果)空振り三振

(状況)1回1死走者なし

(投手)ジャレッド・ジョーンズ右

※先発は新人右腕のジョーンズ。初回一死無走者はスライダーを3球続けられてカウント1―2からの4球目、外角高めの101マイル(約162・5キロ)のフォーシームにバットは空を切った。

 

 

◆第2打席:

(結果)ショートゴロ・併殺

(状況)3回無死1塁

(投手)ジャレッド・ジョーンズ右

※カウント2―1からの4球目、外角高めの90・4マイル(約145・5キロ)のチェンジアップを弾き返すも二塁ベースに寄っていた遊撃手の正面に飛び、併殺打となった。

 

◆第3打席:

(結果)空振り三振

(状況)5回1死走者なし

(投手)ジャレッド・ジョーンズ右

※フルカウントからの8球目、真ん中高めの88・7マイル(約142・7キロ)のチェンジアップに空振り三振に倒れた。

 

◆第4打席:

(結果)センター前ヒット

(状況)8回無死走者なし

(投手)アロルディス・チャプマン左

※マウンドは3番手のメジャー最速左腕チャプマン。カウント2―2からの5球目、真ん中低めの91・8マイルのスプリットを何とか捉えて振り抜くと100・1マイルの痛烈なゴロは中前に抜けた。一死後、スミスが四球で出塁するも後続が倒れ、同点のホームを踏むことはできなかった。

 

 

【コメント】

なし

 

【NEWS情報】

◯ 大谷は試合前に約23分間、右肘手術後としては最多となる80球のキャッチボールを行った。約18メートルの距離で、最後の10球は自ら球種を宣告しながら感触を確かめるように丁寧に投げた。

 

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◯ 大谷は4日(日本時間5日)、銀行詐欺罪などで訴追された元通訳の水原一平被告が同日に連邦地裁に出廷して有罪を認めたことを受け、声明を発表した。

米大リーグ機構は、

「大谷翔平選手を詐欺の被害者とみなし、この問題は終結した」

 

ドジャースは、

「翔平とチームがこの問題を全て忘れて、ワールドシリーズ優勝を目指して前進できることをうれしく思う」

大谷の声明全文は次の通り。

「捜査が完了し、罪も全て認められた今、私及び家族にとっても重要な終結を迎えることができました。すべての証拠を完全に明らかにしながら、これほど徹底的かつ効果的な調査を迅速に遂行してくれた当局の方々に心から感謝したいと思います。

これは僕にとっても非常に複雑で困難な時期でした。この間にずっと絶え間ない支援を続けてくれた僕のサポートチームに感謝しております。家族、代理人、エージェンシー、弁護士、そしてドジャースの組織全体に感謝しております。

この事件に終止符を打ち、前に進む時期が来たと思ってます。これからもこのチームの一員として少しでも勝利に貢献できるよう集中して行きたいと思っております。

これからもよろしくお願い申し上げます」

 

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 ■ 試合情報(ドジャース関連NEWS)

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【コメント】

デーブ・ロバーツ監督:

ーー大谷について

「少し(ボール球を)追いかけていて、彼の好きなゾーン(Nitro Zone)に来ても打ち損じてしまっている。スイング時のバランスが少し崩れている。捉える時もあるが、最初の数週間ほどには安定していない」

「打撃は難しいものだ。打撃は難しい。フレディは不調を脱した。ムーキーはやや苦しんでいるし、翔平も同じだと思う」

「ムーキーは私たちにとって排水溝をかきまぜてくれるストローのような存在だ。翔平の調子がいいときは、打線に勢いが出る。ウィル(スミス)は安定しているが、トップの2人は私たちにとって重要な選手たちであり、今はそうであるべき状態ではない」

 

ジャレッド・ジョーンズ投手:
ーー大谷を併殺打に仕留めた場面について

「最初の球を前で振っていたから、彼は真っ直ぐを待っていると思った。だからチェンジアップを続けて投げた」

ーー普段より多く使うプランだったか

「いや。何をするかはゲームがどう進むか次第だった。彼は本当にすごい選手だ。7億ドルも支払われているのには理由がある。3度も打ち取ることができたのはクールなことだ」

デレク・シェルトン監督:

「(ジョーンズについて)チェンジアップは向上し続けている。今夜は彼とヘンリー(デービス捕手)が適切な使用機会を見極めていた。大谷はとても危険だから、ホームベースの中央に投げてはいけない。バレルで捉えさせず、離れたコースに投げて、いい仕事をしたと思う」

 

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 ■ 球界情報

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ルイス・ヒル投手:

◯ 日本時間6月5日、フィリーズと並んでメジャー最高勝率を誇るヤンキースは本拠地ヤンキー・スタジアムでのツインズ3連戦がスタート。その初戦は5月の月間最優秀投手&月間最優秀新人に輝いたルイス・ヒルがまたしても好投を披露し、5対1で勝利した。ヒルは6回88球を投げて被安打1、奪三振6、与四球3、無失点の快投で8勝目(1敗、防御率1.82)をマーク。ツインズ先発のベイリー・オーバーは5回3安打3失点と試合を作ったが、4敗目(5勝)を喫した。

 

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 ■ 注目記事&コラム

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◆ 大谷翔平「この薄情者が」…水原事件でエ軍番記者を一喝? イジリ炸裂「こういう時だけ」

小谷真弥氏/情報:フルカウント)

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 閑散とした敵地PNCパークのドジャース・クラブハウス。試合前ミーティングを終えた大谷翔平投手が、たまたま取材に来ていたエンゼルス番の米記者に歩み寄り、そのまま肩を抱いた。

「この薄情者が。こういう時だけ取材に来て」

 このエンゼルス番記者は、切れ味鋭い原稿でお馴染み。今回の大谷の元通訳、水原一平氏の違法賭博問題でも日米メディアの先頭に立って取材してきた。大谷も、それを知っていたのだろう。先の“薄情者発言”。字面だけを見ればピリピリ感を感じさせるが、イタズラっぽい笑みを浮かべての発言で、緊迫感など全くない。むしろ“友好モード”で、現場には笑い声も。それは、このエンゼルス番記者にも伝わっている。

「普段はエンゼルスを取材していますが、今週は穴埋めでドジャースに来たんです。ショウヘイは友好的な言い方でしたね。『旅行で来たんだ』と言い返してやりましたよ(笑)」。昨季まで大谷を追ってきた米記者の笑顔が弾けた。

 忌まわしい事件の発覚から2か月半。この日の水原被告の有罪答弁を受け、大谷は試合開始の約4時間前に「この事件に終止符を打ち、前に進む時期が来たと思っています」などと日本語、英語それぞれで声明を発表した。騒動収束が見え、きっちり切り替えているように映る。

 試合前にはリハビリの一環であるキャッチボールを行い、球団スタッフと談笑。「エンゼルスの時からショウヘイはチームメートといい関係を築いてきた」と振り返るエ軍番記者も、通訳がいなくなったことによる“変化”を感じているようだ。

「ここでは心地良さを感じているように見えますね。(エンゼルスでは)イッペイに大きく頼っていたと思いますが、彼も大人。自分で対処できると思います。それがよく表れています」

 大谷は声明で「僕にとっても非常に複雑で困難な時期」としつつも、「ずっと絶え間ない支援を続けてくれた僕のサポートチームに感謝しております。家族、代理人、エージェンシー、弁護士、そしてドジャースの組織全体に感謝しております」と感謝の言葉を並べたのが印象的だった。周囲のサポートが、手負いのユニコーンを支えたのは間違いない。

 試合開始2時間前、米メディアがロッカールームで再び17番を囲もうと試みたが、大谷は「あのコメントが全てです」と話し、米メディアの輪を解いた。水原事件はもう過去のこと。前だけを見て世界一へ奮闘する姿を見たい。

小谷真弥 / Masaya Kotani

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◆ 【爽やか新ヘアの裏側】大谷翔平をカットしたのは“美容師界の東大”有名サロンの海外1号店だった 真美子夫人と一緒に“ヘアカットデート”

(情報:NEWSポストセブン)

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その日、彼はいつにも増して、熱い視線を浴びていた。5月31日、大谷翔平(29才)が目にかかりそうなほど長かった前髪をバッサリとカットし、襟足やサイドをスッキリと刈り上げた新ヘアスタイルで球場に登場した。

 

「大谷選手が出てきた瞬間、番記者たちは彼が髪を切っていることに気づき、大盛り上がり。その日、ドジャースは敗北を喫しましたが、験担ぎのため髪を伸ばしているとまでいわれていた彼の大胆イメチェンは現地でも大々的に報じられました」(現地ジャーナリスト)

 

 日本人選手で3人目となるメジャー通算100盗塁を達成するなど、次々と偉業を成し遂げる大谷。もはや彼の一挙手一投足は全米の注目の的であり、髪を切っただけでもニュースになるのは必然ともいえる。となると気になるのが、彼が足を運んだ美容室だ。

 

「これまで大谷さんは、ハリウッド俳優御用達のベテラン美容師や、野球選手を多く担当する日本人美容師に髪を切ってもらっていましたが、今回彼が行ったのは、5月にロサンゼルスにオープンしたばかりのヘアサロンです」(前出・現地ジャーナリスト)

 

 店の名は、「SHIMA LA」。現在東京で10店舗を展開する「SHIMA」の海外1号店だ。

 

「『SHIMA』は日本でもっとも有名なサロンといっても過言ではありません。1971年のオープン以来、的確な腕とセンスが話題となり、かつてのカリスマ美容師ブームを牽引。スタッフは少数精鋭で、芸能人からの信頼も厚く、就職は狭き門。“美容師界の東大”と呼ばれるほどです」(美容誌関係者)

 

 2022年に新社長が就任し、さらに勢いを増す「SHIMA」。ロスにオープンした新店舗の立ち上げにも、日本から同店のカリスマ美容師が多数参加した。

 

「大谷さんを切ったのも超がつく有名美容師。この日はなんと真美子夫人も一緒にヘアカットしたそうです。なんでも、この美容室を希望したのは彼女だったんですよ。細かいニュアンスなどが伝わるかどうかといった不安もあり、真美子夫人はかねて『日本人の美容師がいい』と話していたのだとか」(球団関係者)

 

 そこにタイミングよくオープンしたのが、「SHIMA」だったというわけだ。

 

「大谷さんは髪形にも美容室にもこだわりはなかったのですが、愛妻の希望となれば叶えてあげずにはいられなかったのでしょう。大谷さん自身も実際にカリスマ美容師にカットしてもらうと、“やっぱりすごい!”と大満足だったのだとか」(前出・球団関係者)

 

 実はその日、夫妻のヘアカットデートはキャンセルの危機にさらされていた。

 

「遠征先からロスに帰ってくる飛行機が8時間以上遅れてしまったんです。疲れもたまっていたと思いますが、それでも真美子夫人の願いを叶えるため、デートを決行したそうです。

 

 大谷さんの真美子夫人へのケアは本当に細やか。たとえば、昨年末の入団交渉の過程では『デコピンが球場で観戦できる環境を用意してほしい』と条件を出していました。真美子夫人とデコピンが観戦しやすくするための配慮だったのでしょう。

 

 実際、スタジアムのスイートルームでは、デコピンを抱えて観戦する真美子夫人の姿が目撃されています。新生活で何もかもが不安な真美子夫人に対して自分ができることはしてあげたいという思いのようです」(前出・球団関係者)

 

 ヘアスタイル同様、爽やかさが溢れる大谷。新ヘアで心機一転、さらなる活躍を見せてくれることだろう。

 

※女性セブン2024年6月20日号

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◆ 大谷翔平もイチローも「英語ペラペラなのにナゼ通訳が必要?」NY在住の日本人記者が心を痛めた“外国人の失言”「息子の誕生日に無情クビ通告」

杉浦大介氏/情報:NumberWEB)

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 米スポーツの取材現場では様々な経験ができるものだが、メジャーリーグのクラブハウスがあれほど異様な雰囲気になったのは久々だった。今回は“言葉”が焦点になった一件だけに、アメリカで暮らす1人の外国人として筆者も他人事に感じられなかった。

 ニューヨークでも大きな話題を呼ぶ“事件”が起こったのは5月29日。シティフィールドで行われたニューヨーク・メッツ対ロサンゼルス・ドジャース戦でのことだった。

 このゲームの8回表、大谷翔平に左越え2ランを許したメッツの右腕ホルヘ・ロペスは続くフレディ・フリーマンの打席中、ハーフスイングをボールと判定されたことで激昂。判定に抗議して退場処分を受けたロペスは完全に逆上し、ユニフォームの裾を外に出し、ダグアウトに戻る際にグローブをスタンドに投げ入れた。

現場が凍りついたロペスの発言
 この日の試合にも敗れたメッツは直近の9戦中8敗と低迷中。ただでさえ消沈しがちなチームの空気をさらに悪くする行為に、ゲーム後の記者会見でカルロス・メンドーサ監督は「彼がやったことは受け入れられない」と自軍投手を公に批判した。当のロペスは少し落ち着いて反省しているかと思いきや、結果的にメッツの一員として最後になるメディア対応での言葉は後々まで論議を呼ぶものとなった。

「後悔はしていない。私はMLBで最悪のチームでプレーしている。なるようになる。彼らに好きにさせればいい。彼らが望むのであれば私は明日もここにいるよ」

 乱調&退場直後の興奮からか目を赤く染めたロペスはそう述べたように聞こえ、周囲を取り囲んだメディアはほとんど凍りついた。

 そこであるレポーターに「(メッツは)最悪のチームと言ったのか」と確認されても、ロペスは「たぶんね。そう見えるよ」と傍若無人な態度を取り続けた。こういったコメントを額面通りに受け取るのであれば、完全なチーム批判。この後、ロペスには早々と戦力外通告が成されたが、それも仕方なかったのだろう。

 しかし、実は問題が1つある。英語が母国語ではない31歳のプエルトリコ人はアクセントが強い。筆者もメッツのクラブハウスでロペスを取り囲むメディアの輪の中にいたが、実際に何を言ったのかははっきりしなかったのだ。

「私はMLBで最悪のチームでプレーしている。(I’ve been on the worst team in the whole f―ing MLB) 」ではなく、「(あんな騒ぎを起こした後で)私はたぶん最悪のチームメイトであるように見えるのだろう(I’ve “been looking [like] the worst teammate in probably the whole f―ing MLB)」と自嘲気味に言ったのではないか。

 改めて映像を見直すと、後者の方が近いように聞こえる。ロペスも翌日に発表したSNSのメッセージ内で騒動を謝罪した上で、チーム批判の意図はなかったと記していた。それが事実だとすれば、ロペスの“舌禍事件”の印象はかなり変わってくる。

 もちろんMLBでもベテランの域に差し掛かった投手が適切な行動をしなかったのはいずれにしても事実ではある。どんな理由があろうと、自軍のベンチ前でスタンドにグローブを投入したのは恥ずべき行為。取材対応時にはFワードを連発しており、チーム批判と捉えられたコメントにしても上記通り、記者側から確認、訂正の機会も与えられながら態度は変えなかった。

 さらに付け加えると、一部の米メディアは後にチームに再確認しており、そこでも“worst”という言葉は自身、チームの両方に向けられたものだったとロペスから改めて告げられたのだという。これらの背景を考えれば、メジャー10年目のロペスに同情の余地はないと考えるファンもいるかもしれない。

 ただ……それでも今回、メッツのクラブハウスで起こったことはロペスには少々気の毒にも思えた。興奮状態の中で、しかも母国語ではない言葉でのやり取りから生まれた不躾なコメントであることは考慮されてもいいように思えたのだ。

 事件後も盛んに報道されたが、ロペスはミネソタ・ツインズに所属していた昨季中、メンタルヘルスの問題で負傷者リスト入りした経験がある。また、11歳の息子が“家族性地中海熱”という生まれつきの難病を患っており、息子の誕生日でもあった5月29日は精神的に辛い状態でマウンドに立っていたとも伝えられている。

 それらの背景から冷静に話せる状況でなかったのであれば、そもそも試合後も無理にメディア対応をする必要はなかった。質疑応答が避けられないのだとすれば、通訳か、あるいは英語&スペイン語に堪能なチーム関係者の助けを借りてもよかった。“ロペス自身が通訳なしの対応を望んでいた”というチーム側の言い分は理解できるが、今回に限っては例外として介入してもよかったのではないか。

 少なからずのヘルプがあれば、戦力外通告に至るまでの破局は避けられたのではないかとも思えてくるからだ。

 

一平事件で問題視された“通訳依存”
 おそらくメジャーで最も著名な通訳でもあった水原一平が違法賭博事件で球界を震撼させたことで、米スポーツにおける通訳と選手の関係にはこれまで以上の脚光が当たる結果となった。その過程で、メジャー7年目を迎えた大谷の通訳への依存が一部から批判的に語られることにもなった。

 これは大谷に限らずだが、米キャリアがベテランの域に差し掛かった選手でも、日本人のメジャーリーガーはメディア対応時に通訳の助けを借りるのが通例になっている。それに関し、少々ネガティブな声を聞いたのは一度や二度ではない。

 実際にそれぞれの選手が徐々にでも英語を学習し、自身の言葉で話すようになれば、多くの人に様々な形での恩恵があるのだろう。その選手と周囲の人間の関係はより身近なものとなり、メディアの側から見ても関係構築、取材時間短縮、質疑応答の内容向上といった面で意味は大きい。それらを考慮すれば、日本人選手の通訳への依存に疑問が呈されるのもある程度は理解できるところではある。

 しかし、今回のロペスの一件で、少なくとも公の場でのやりとりでプロの通訳の力を借りることのアドバンテージが分かり易い形で示されたともいえる。

 スムーズに日常会話はできるくらいの英語力がある人でも、取材される側になり、複数の記者から浴びせられる質問をその場で考え、的確に答え続けるのは簡単なことではない。特に試合後の興奮状態であれば、それはなおさら。結果が良くなかった直後など、不用意なことを言ってしまう選手がいても驚かない。発言への注目度が大きかったイチローが、すでに十分な英語力がありながら、選手生活の最後まで通訳を付け続けた理由の一端をそこに見出すこともできる。

 母国からだけではなく、今ではメジャー全体で最大の注目度を得るようになった大谷もそれは同じだろう。一平事件の後、同僚たちとは自らの言葉で接する機会が増えたと伝えられているが、公の場では今後も通訳を使い続けるのではないか。ロペスの事件があった後で、誤解されるリスクとストレスを回避するという意味でも、その姿勢、方向性はより理解されていくのだろうと推測できる。

 

ニューヨーカーは気の毒に感じている
「彼があのように反応したのは残念だった。自身が言ったことが誤解され、注目を集めてしまったことを気の毒にも感じる」

 ロペスが戦力外通告を受けた翌日、いつも思慮深い2019年の本塁打王、メッツのピート・アロンゾ内野手が残したそんな言葉は胸に響いてくる。

 前述通り、退場後のグローブ投げは恥ずかしい行為だが、それだけで職を失うほどの悪行だったとは思わない。あの日の運命的なメディア対応が行われなければ、ロペスはまだメッツのユニフォームを着ていただろう。

 メッツが本拠地を置くニューヨークは、世界中から集まった様々な人種がそれぞれのコミュニティを作り、助け合いながら生きている“人種の坩堝”でもある。そこでは自身が声を挙げさえすれば、大抵の場合、様々な助けが得られる。責任の所在が本人か、チームかはともかく、本来なら得られていたはずのヘルプを得られず、チームを追われることになったロペスを気の毒に感じているニューヨーカーは多いのではないだろうか。

(「メジャーリーグPRESS」杉浦大介 = 文)

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 ■ NOTE