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2024年5月20日

 

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 ■ 試合データ

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米国時間:2024年5月19日

日本時間:2024年5月20日(月曜日)

5時10分開始

ロサンゼルス・ドジャース

対シンシナティ・レッズ

@ドジャースタジアム

 

 

【MLB.JP 戦評】

 日本時間5月20日、ドジャースは本拠地ドジャー・スタジアムでのレッズ4連戦の最終戦を迎え、10回裏二死1・2塁の好機で大谷翔平がライトへのタイムリーを放ってサヨナラ勝ち。初戦を落としたあとの3連勝でレッズ4連戦に勝ち越し、貯金を今季最多の15とした。ドジャース5番手のアンソニー・バンダが10回表を無失点に抑えて今季初勝利(0敗)をマーク。レッズ5番手のアレクシス・ディアスは大谷にサヨナラ打を浴び、3敗目(1勝)を喫した。

 

 ドジャースは4回裏一死1塁からアンディ・パヘスの5号2ランで先制。しかし、その後はレッズ先発のハンター・グリーンを打ち崩せず、レッズ救援陣からも得点を奪えなかった。ドジャース先発のランドン・ナックは4回まで無失点に抑えていたが、5回表にサンティアゴ・エスピナルのタイムリー二塁打で1点を失って降板。7回表には一死満塁のピンチでマウンドに上がった3番手のアレックス・ベシアがスペンサー・スティアーに四球を与え、押し出しで2対2の同点に追いつかれた。試合はそのまま延長タイブレークに突入。10回裏、ドジャースは一死1・2塁からムーキー・ベッツがセンターライナーに倒れたものの、大谷が内角低めの速球をライトへ弾き返し、熱戦に終止符を打った。

 

 ドジャースの大谷は「2番・DH」でスタメン出場し、4打数2安打1打点。1回裏一死走者なしの第1打席は空振り三振、3回裏二死1塁の第2打席はレフトフライに倒れたが、5回裏二死2塁の第3打席は死球で出塁し、8回裏先頭の第4打席はファーストへの内野安打を放った。そして、10回裏二死1・2塁の第5打席でライトへのサヨナラタイムリー。ドジャース移籍後では初、メジャー通算でもエンゼルス時代の2020年以来4年ぶり2度目のサヨナラ打となった。4試合ぶりのマルチ安打で今季の打撃成績は打率.353、出塁率.423、OPS1.081となっている。

 

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 ■ 今日の大谷翔平(関連NEWS)

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【スタメン】

2番DH

 

【出場成績/打者】

4打数 2安打 1打点 1三振 1死球

通算打率・353

OPS1・080

 

◆第1打席:

(結果)空振り三振

(状況)1回1死走者なし

(投手)ハンター・グリーン右

※カウント1―2からの4球目、外角高めの98・8マイル(約159キロ)のフォーシームにバットは空を切った。

 

◆第2打席:

(結果)レフトフライ

(状況)3回2死1塁

(投手)ハンター・グリーン右

※カウント1―1からの3球目、外角高めの86・1マイル(約138・6キロ)のスプリットを逆方向へ打ち上げたが、平凡な左飛に倒れた。

 

◆第3打席:

(結果)死球

(状況)5回2死2塁

(投手)ハンター・グリーン右

※左足をかすめる死球で出塁。移籍後初死球。

 

◆第4打席:

(結果)ファースト内野安打

(状況)8回無死走者なし

(投手)サム・モール左

※カウント2―2からの5球目、外角低めの81・7マイル(約131・5キロ)のスイーパーを引っ張りボテボテのゴロが一塁手の前に。ベースカバーに入った投手と競走になったが、快足を飛ばして一瞬早く一塁を駆け抜け、内野安打とした。

 

◆第5打席:

(結果)ライト前ヒット(さよなら!)

(状況)10回2死1、2塁

(投手)アレクシス・ディアス右

※延長10回にドラマが待っていた。二死一、二塁でマウンドは5番手の守護神ディアス。2球で追い込まれるもファウル2球で粘ったカウント1―2からの6球目、内角ヒザ元の94マイル(約151・3キロ)のフォーシームをバットで捉えると最後は右手一本で振り抜いた。打球速度100・3マイル(約161・4キロ)のライナーは右前で弾む。客席は大歓声、ナインから水をかけられるなどもみくちゃにされたが笑顔だった。

 

 

 

 

【コメント】

試合後

――ドジャース初のサヨナラヒットでした。

「ああいう状況で打てたことが、次の打席、明日以降にもつながると思うので、素晴らしい瞬間だったと思います」

 

――今週末はスペシャルだった。

「はい。特別な週末だったかなと。ボブルヘッドデーでは打てなかったので。それ以降もしっかり打ちたいなと思っていたので。こういう形で打ててよかったと思います」

 

――最後の打席の考えは。

「本当に長打ではなくて、単打を打つスタイルというか、そういうバッティングだったので、良い結果になってよかったです」

 

――厳しいコースだった。

「初球も良いところでしたけど、そこは見送ってよかったのかなと。その前のスライダーだったりとか、そこらへんをしっかりファウルにできていたのが良い結果につながったのかなと思います」

 

――冷静だった。

「ゾーンの確認だけしないといけないので、毎打席どういう状況でもそれだけは徹底して。それができてれば良い結果でつながるんじゃないかなと思います」

 

――タイブレークで8番から始まった。

「僕の前で終わるなら、それはそれで良いことなので。それで良いかなと思いました。まわってきたので、自分の仕事、自分のバッティングをしっかりしたいなと思いました」

 

――率を残せている。

「基本的にはどの打席も、基本的なことは変わらない。ボール球を振らずにストライクを振っていくという作業自体は変わらない。その状況、状況に合ったバッティングはあると思うので、その状況に合ったバッティングをできれば必然的に率も残ってくるのではないかなと思います」

 

【NEWS情報】

◯ 飲料メーカー「伊藤園」(本社・東京都渋谷区)は20日、同社が展開する無糖緑茶飲料ブランド「お~いお茶」のグローバルアンバサダーに大谷が就任したことを発表。さらに就任を記念し、米国への観戦旅行をプレゼントするキャンペーンを実施することも合わせて発表した。活躍を近くで感じてもらおうと、日本から米ロサンゼルスへの往復航空券、ホテル宿泊券(3泊分)、観戦チケットが25組50人に当たる「#お~いLAの大谷さん」と題したキャンペーンを20日から実施。同社はロサンゼルスへの野球観戦旅行を個人で企画した場合、1人当たり約46万円の費用が発生するとし、キャンペーン総額は2300万円になると示した。

 

また、同日から日本全国の「お~いお茶」販売店で、大谷のビジュアルを使用したポスターや大谷の等身大パネルも掲出予定とし、店頭で「お~いお茶」を4本まとめ買いすると、景品として大谷の限定クリアファイル(全2種類)を先着順でプレゼントするという。大谷はキャンペーン実施が決まり、同社を通じてコメント。

 

「この度、『お~いお茶グローバルアンバサダー』に就任することになりました大谷翔平です。ただの『お~いお茶』ファンだった僕に、大きな役割をいただき光栄に思います。4月30日に『お~いお茶』とのグローバル契約を発表した際には、僕自身もLA Timesで新聞広告を見かけ、今回の契約のスケール感を感じています。

 

また、SNSや周囲の人からの反響の大きさにも驚きました。『お~いお茶グローバルアンバサダー』としての活動第1弾は、皆さんをLAの観戦に抽選でご招待するキャンペーンとなっております。ぜひLAのスタジアムで、『お~いお茶』を飲みながら観戦してもらえたら嬉しいです。

 

今後は『お~いお茶グローバルアンバサダー』として、日本のお茶文化を世界に広め、さらに世界中のみなさんと一緒にお茶で地球の未来に貢献するためのプロジェクトなど、新しい取組みを準備しています。皆さん楽しみにしていてくださいね」

 

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◯ 大谷が総合的に評価して選手の貢献度を表す指標「WAR」でメジャートップに浮上した。米データサイト「ファングラフス」のWARを3.1まで伸ばした。MVP争いでも重要な要素になっているWAR。守備をしない分だけ減点となる指名打者は不利とされている。シーズンの65%以上をDHで出場した選手の歴代最高は、1995年にエドガー・マルティネスが記録した7.0。大谷は今季48試合で3.1をマークしており、162試合に換算すると10.4で歴代最高を更新するペースだ。

 

 

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 ■ 試合情報(ドジャース関連NEWS)

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【コメント】

デーブ・ロバーツ監督:

「素晴らしかった。(移籍後)初めてのサヨナラ打はエキサイティングだね」

 

「非常にいい打席だった。低めのボールをファウルにして、ディアスのシンカーを捉えた。ストライクゾーンの見極めも安定していて、相手の失投を見逃さず、打つべきボールを打てている」

 

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 ■ 球界情報

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ダルビッシュ有投手:

◯ パドレスのダルビッシュ19日、敵地ブレーブス戦に先発し、7回9奪三振、被安打2、無失点に抑えて9-0の勝利に貢献し、日本選手としては野茂英雄、黒田博樹に続き3人目となる日米通算200勝を達成した。内訳はメジャー107勝、日本93勝。試合後、NHKのインタビューに答えた。

 

「特に実感はない。アトランタでいいピッチングができて、明日ダブルヘッダーがある中で長いイニングを投げられてよかった」

 

「NHKさんが生中継、大谷君の中継をやめてまでやってくださっているので、決めたいなと思っていました」

 

「(延期で)1日ずれて体の力があまりなかったですけど、変化球が良かったですし、カーブが良かったので、いろいろミックスしながら相手をかわすことができてよかった」

 

「自分の200勝はみんな知らないと思うけど、前回カード3連敗しているので、2連勝できてよかった」

 

「プロ入った時にいろいろあって、ファイターズとか日本全体が自分を育ててくれた。それが自分のもとになっているので、その感謝を忘れずにずっとやっています。これでホッとできるので、201勝目できるように明日からしっかり調整したい。これからは、なるべくイニング稼いで中継ぎの方をしっかり休められるよう、監督、首脳陣の方からしっかり信頼されるいようなピッチャーになりたい」

 

 

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試合後メディア対応

 

――20年目で200勝。今思うことは。

「正直、実感というのが本当にないので、うーん、特にないですけど、とりあえず1回200には届いたので、ちょっとホッとしています」

 

――変幻自在の投球だった。

「1日(雨天中止で)ずれたことによって、2日間ワークロードがかなり低かった分、力とかあんまり出ていなかったですけど、その代わりスライダーだったり、スライダーもいろんなスライダーを投げられましたし、カーブも良かったですし、カットボールも良かったですし、いろんなボールを混ぜながら相手のバランスを崩せたので良かったです」

 

――ホームプレートを立体的に使った投球。

「結果的にそうはなりましたけど、相手もちょっと点差があったので、ちょっと集中力を欠いている部分もあったと思いますし、そこにうまくつけ込むことができたと思います」

 

――メジャー自己最長の25イニング連続無失点で自ら200勝に花をそえた。

「それの方が実感ないですね(笑い)。IL(負傷者リスト入り)から帰ってきて今のところですけど、まぁ、自分の球を見ていたり、感覚を見ていても、そんな25イニング無失点をやっているような感じではないので、ラッキーもたくさんあるので、ちゃんとそこは調子に乗らずに、また明日からしっかりやりたいと思います」

 

――これから目指すものは。

「201勝目ですね。次の試合、またホームで投げると思うので、その試合しっかり投げられるように、長いイニングを投げられるように調整していきたいと思います」

 

――200勝達成でこれから見える世界は。

「年齢もそうですし、だんだん戻るのも難しくなってきますし、野球のレベルも上がってきてるので、その中で取り残されないようにちゃんと勉強しながら練習していきたいと思います」

 

――2015年にはトミー・ジョン手術を経験した。

「トミー・ジョンは、僕は楽しかったんで。リハビリ過程とか、もちろん仕事ができないのはダメでしたけど、もう1回いろんなことが勉強できたりとか、トレーニングとか、自分で楽しみながらやってましたけど、(カブスに移籍し右肘を故障した)2018年が自分の中では一番苦しかったので、そこを乗り越えたのは、やっぱり家族がいたからだと思う」

 

――いろんなことに挑戦できるメンタリティーはどこから。

「分かんないですね。小さい頃からそうなので、そもそも成績を残すというところじゃなくて、どっちかと言うと、いろんな変化球、こんな球を投げたいというのが、自分がずっとやっている動機なので、そういうところなのかなと思いますけど」

 

――数字的なものでは野茂英雄氏の日米通算201勝、黒田博樹氏の同203勝がある。そこへの思いは。

「いや、そこはないですね。投げていた時代が違うと思うので、実力も違うと思いますし、ちゃんと200何勝とか数字で追いつくというよりも、実力で追いつきたいというのがありますので、そこが次の目標だと思いますね」

 

――首の張りで4月下旬に負傷者リスト(IL)に入った。

「ILに入った時に身体もちょっと、しぼんできているというか、年を取ってきたのかなと思ったので、もう1回、勉強をし直すというか、自分が過去に、2015年に何をやっていたのか、どんな食べ物をとっていたのか、とか(記録が)全部あるので、それを見直して、今の最新のものも見直して、サプリメントもそうですし、食事も1回全部ガラッと変えて。そうすると体脂肪が3%くらい落ちて、あの期間10日か2週間くらいか。そういう意味でちょっと若くなってきたので良かったと思います」

 

――ウイニングボールは。

「あ、ないですよ。そういえば。どこにいったのかな?もらってない。まぁ、大丈夫です(笑)」

 

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ニューヨーク・ヤンキース:

◯ 日本時間5月20日、ア・リーグ東地区の首位に立つヤンキースは本拠地ヤンキー・スタジアムでのホワイトソックス3連戦の最終戦を迎え、7対2で勝利。2カード連続のスイープで連勝を7に伸ばし、貯金を今季最多の18とした。ヤンキース先発のカルロス・ロドンは6回99球を投げて被安打4、奪三振6、与四球2、失点2の好投で5勝目(2敗)をマーク。ホワイトソックス先発のクリス・フレクセンは5回途中8安打7失点と精彩を欠き、4敗目(2勝)を喫した。

 

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 ■ 注目記事&コラム

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◆ 落合博満氏 大谷翔平の“進化”理由指摘「自ら一区切りつけた」 元通訳・水原一平被告の事件乗り越え

(情報:デイリースポーツ)

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 元中日監督で野球評論家の落合博満氏が20日放送のNHK「クローズアップ現代」に出演。銀行詐欺などの罪で訴追されている元通訳・水原一平被告の事件発覚後、大谷翔平選手の気持ちの変化について言及した。

 

 番組では「ドジャース大谷翔平・新たなる闘い“止まらぬ進化”とは」として大谷について特集。開幕直後の耳を疑うようなショッキングな事件が起きたにもかかわらず、現在三冠王を狙える数字を挙げるなどバッティング絶好調の大谷。その“進化”について尋ねられた落合氏は「自分で会見を開いて、自分の一連のことに関しては全て第三者に任せたでしょ。そこで一区切りつけたんだと思います。人がつけるんじゃなく。後は司法の場に任せると」と、3月25日(日本時間同26日)に元通訳の違法賭博について初めて言及した会見が契機になったと推測。「自分の仕事は何なのかとなったときに、10年契約で1000億の契約を結んでいるわけですから、野球をやるのが自分の仕事なんだと切り替えたんだろうと思います」と指摘した。

 

 自身が監督時代の選手への向き合い方を問われ、「選手は野球をやるのが仕事で、グラウンドでいかにして数字を残すかと言うことだけを追い求めていて。ほかのことに関しては自分達で処理しなさいっていう。だからグラウンドではそのような姿を一切見せるなということを無言のうちに言ってましたね」と話した。続けて「成績悪ければ2軍に落とすし、よければ使い続けるっていうようなことをしてましたね」と話した。

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◆ “大谷フィーバー”の裏で日本人記者が失態…「岩によじ登って撮影し、排除された」大谷翔平ばかり追いかける日本メディアのリアル

内野宗治氏/情報:文春オンライン)

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〈「ジャップにタイトルを獲らせるな!」大谷翔平のホームラン王争いにも影響? アメリカに存在した日本人選手への“差別意識”〉  から続く

 

 MLBのスター選手として、世界的な人気を誇る大谷翔平。日本では、大谷の一挙手一投足が連日報道されている。しかしアメリカでは、日本の報道姿勢に疑問を持たれているという。それはなぜか?

 

 ここでは、大谷翔平がアメリカでどのように受容されてきたのかを記した『 大谷翔平の社会学 』(扶桑社新書)より一部を抜粋して紹介する。(全2回の2回目/ 1回目 から続く)

 

◆◆◆

 

日本人記者が特定の「日本人選手」だけを取材する理由

 日本人選手と日本メディアの関係は、おそらくアメリカ人から見るとちょっと奇妙だ。エンゼルス取材歴10年以上のフレッチャー記者が、日本人選手だけを取材する日本人記者を「追っかけ」と表現しているように、日本メディアのスタンスは「ファン」に近いものがある。

 

 あるいは、ロバート・ホワイティングの言葉を借りると「日本のマスコミ、とくにスポーツ紙は、責任あるジャーナリズムというよりも、チアリーダーの様相を呈してくる」。

 

 ホワイティングは1980年代の後半、読売ジャイアンツのスター選手だったウォーレン・クロマティから「(ジャイアンツの)コーチがいかに残酷に若手をしごいているか」といった話を聞き出して記事にし、その結果「ジャイアンツの球場から締め出しを食らった」という。

 

 MLBでは通常、各チームに帯同する記者は「チーム」全体の取材をするものだが、ほとんどの日本人記者は特定の「日本人選手」だけを取材する。おそらく彼ら彼女らは「日本のファンが興味を持っているのは日本人選手なのだから、日本人選手を中心に取材するのは当然だ」と言うだろう。

 

 実際に僕自身も、ライターとしてMLBに関する記事を複数の媒体に寄稿していたころ、書いていた記事の多くは日本人選手に関するものだった。それがビジネスとして求められていたからだ。

 

日本のメディア各社によって「大谷フィーバー」が巻き起こる

 でも、いざMLBの取材現場に身を置くと、自分が「日本人選手を追いかける」記者として現場にいることに居心地の悪さを覚えた。何というか、その場にいるアメリカ人の記者たちや他の選手たちに失礼なことをしているような気がしたのだ。

 

 目の前にアメリカ人やヒスパニックのスター選手がいても、彼らをスルーして日本人選手の動きを追いかけなければならない。「どうせお前ら、日本人にしか興味ないんだろ」と思われているように感じた。そんな視線を感じながらも日本人選手を追いかける立場に身を置くことが、僕にとってはあまり気持ちのいいものではなかった。

 

 もし自分がスポーツ紙や通信社から派遣された記者だったら、これが仕事だと割り切って、たとえ居心地の悪さを覚えても、毎日お目当ての日本人選手を取材したかもしれない。でも当時の僕は一介のフリーランスのライターにすぎず、毎日、特定の媒体に原稿を送るノルマもなかったので、無理に日本人選手を追いかける必要はなかった。

 

 もし仮にMLBのクラブハウスで継続的に取材をするならば、アメリカ人記者たちと同じように彼らと同じ土俵の上で仕事がしたいと思った。狭苦しい「日本人村」の外側で、もっと自由に仕事をしたいと思った。

 

 近年の大谷フィーバーも、日本のメディア各社がこぞって「チアリーダー」に徹しているがゆえに巻き起こったものだ。大谷と日本メディアの関係を見続けてきたフレッチャー記者が、いくつか具体的なエピソードを紹介している。

 

メディア非公開となった練習をホテル駐車場から覗き見

「2018年に大谷が初めてエンゼル・スタジアムのブルペンで投げていたとき、何人かの記者がセンターになる岩によじ登って写真と動画を撮影しようとした。すると、エンゼルスはこの連中を排除した。

 

 同じシーズンの後半に、大谷が肘の故障によるリハビリをしていた際に、テンピ・ディアブロ・スタジアムで8月のアリゾナ・ダイヤモンドバックスとの連戦の前、実戦形式の練習で登板したことがあった。当初は日本人記者が招待されていたが、その後、メディア非公開となった。そこで、記者一同は球場隣のホテル駐車場から覗き見をしなければならなかった」

 

 こうした日本人記者たちの行動は何とも見苦しいが、一方でエンゼルスは、大谷の一挙手一投足が日本で報じられることの重要性も理解していた。フレッチャー記者は続けてこう書いている。

 

広報担当者はエンゼルス選手たちの話を書くよう勧めたが…

「日本のメディアとエンゼルスの関係性は、ときに緊迫することもあったが、全体的にはお互いのために協力できるところは協力し合っているように見える。

 

『日本全体が、彼のすべての動きを追っていることは理解しなければならない』

 

 元エンゼルスの通信部門副社長だったティム・ミードが2018年に語った言葉だ。『その需要に対して応える義務があり、その点は十分に承知していた――そして、ショウヘイも理解していた』

 

 そして、大谷を追いかけ回す日本人記者の対応を担っていた広報担当者のマクナミーは、彼らに『ほかのエンゼルス選手たちの話を書くように勧め』ていたという。

 

『記者たちは1人の選手のためにここまで来ているわけだけど、私は少しでもほかのチーム一同や選手たちを日本の観衆に紹介しようとしていました』

 

 日本人記者たちは、ほかの選手やコーチたちにも大谷のことを聞いてまわっていた。マクナミーは、エンゼルスの打撃コーチや投手コーチはもちろん、ブルペンキャッチャーさえも取材を手配したという。

 

 スプリングトレーニングでは、無名のマイナーリーガーが日本人記者に囲まれて、練習場で大谷の投球を打ったかと質問攻めにされている始末だった」

 

日本のメディアが日常的に異国の地でやっていた“無礼”

 プロスポーツの世界では、一部のスター選手に注目が集まるのは仕方のないことである。とはいえ「日本人記者に囲まれて、練習場で大谷の投球を打ったかと質問攻めにされている始末」だった無名のマイナーリーガーはいったい、どのように感じたのだろうか?

 

 もしかすると「どんな理由であれ注目されてラッキー」と思ったかもしれないが、マイナーリーガーといえどもプロ野球選手、プライドもあるだろう。取材を受けたにもかかわらず記者たちが自分に全く興味を持っていない、という状況は、あまり気持ちいいものではあるまい。

 

 僕が記者だったら、プロ野球選手に「ほかの選手」のことばかり質問するのは気が引ける。それは取材相手に対して失礼な行為だとすら感じてしまう。

 

 でも、これこそ日本のメディアが日常的に、異国の地でやっていることなのだ。そして、それは個々の記者の問題ではなく、そういうことを当然としてきた日本のマスコミ界全体の問題だろう。自分たちが欲する情報やコメントを得るためには何をしてもかまわない、というメディアの傲慢さ、特権意識が垣間見える。

 

メディア関係者の行動が「日本人」の国際的な評価を貶めているかも

 異国の地でも「日本人村」を運営し、現地のルールではなくムラのルールに従って行動する。あまりにも自国中心的であり、身勝手だと感じざるを得ない。

 

 僕らが今日、大谷の活躍に一喜一憂できるのは、日本のメディア関係者が時に「岩によじ登って」でも大谷の一挙手一投足を追いかけ、その詳細を日々伝えてくれるからだ。メディアが伝える大谷の姿を見ていると、彼の存在が「日本人」の国際的な価値を高めてくれているようにさえ感じる。

 

 しかし、その舞台裏ではもしかすると、大谷を取り巻く日本のマスコミ関係者が白い目で見られているのかもしれない。最悪の場合、彼らの身勝手な行動が「日本人」の国際的な評価を貶めてさえいるかもしれない。

 

 国際社会に生きる僕らは、その可能性に対してもう少し意識的になってもいいのではないだろうか?

 

内野 宗治/Webオリジナル(外部転載)

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◆ 「ジャップにタイトルを獲らせるな!」大谷翔平のホームラン王争いにも影響? アメリカに存在した日本人選手への“差別意識”

内野宗治氏/情報:文春オンライン)

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 MLBのスター選手として、世界的な人気を誇る大谷翔平。しかし、かつてのアメリカでは、日本人選手が差別を受けることもあったという。もしその時代に日本人選手がホームラン王のタイトルを争っていたら、いったいどうなっていただろう?

 

 ここでは、大谷翔平がアメリカでどのように受容されてきたのかを記した『 大谷翔平の社会学 』(扶桑社新書)より一部を抜粋して紹介する。(全2回の1回目/ 2回目 に続く)

 

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アメリカ人作家が日本野球を紹介

 バースの5打席連続敬遠からさかのぼること8年前、1977年に日米野球文化の違いについて記した一冊の書籍が刊行された。タイトルは『菊とバット』だ。

 

 この本の著者は、アメリカ人作家のロバート・ホワイティング。彼は1962年、19歳のときにアメリカ空軍諜報部員として東京にやってきた。オリンピックを控えた東京の熱気に魅了されたホワイティングは、除隊後も日本に住み続け、上智大学で政治学を学んだ。在学中、アメリカへ赴任予定だった読売新聞社勤務の渡邉恒雄、つまり「ナベツネ」に英語を教える家庭教師のアルバイトもしていたという。

 

 大学卒業後は『ブリタニカ百科事典』日本版の編集者として働いていたが、やがて「ガイジンであることにうんざり」してアメリカに帰国。母国で日本の話をしても誰も興味を持たなかったが、野球の話をするとアメリカ人も興味を示すことに気づき、日本野球を紹介する本を書こうと思い立つ。まず英語で書き、やがて日本語版も出版された。それが『菊とバット』というわけである。

 

『菊とバット』というタイトルに込められた“意味”

『菊とバット』というタイトルは、第二次世界大戦中の日本人の思考や行動様式を人類学的視点から分析した1946年に刊行されたルース・ベネディクトの名著『菊と刀』をもじったものだ。『菊と刀』は、アメリカ人からすると理解に苦しむ日本人の国民性について分析したものだが、『菊とバット』もやはり同様のスタンスで書かれている。アメリカの野球は「楽しむ」ものだが、日本の野球は「苦しむ」ものであり、ホワイティングはそこに「武士道」を見いだした。

 

 本書には、当時まだ現役選手だった王が日本刀をバットに見立てて、正しい打撃フォームを身体に覚えさせるために刀を振り下ろそうとしているモノクロ写真が載っている。日本野球において「バット」は「刀」である、という着想から生まれた『菊とバット』というタイトルは、ユーモラスながら的を射た表現だ。

 

もし日本人がメジャー・リーグの記録を破りそうになったら…

『菊とバット』を発表後、ホワイティングは再び日本を拠点に、ジャーナリストとして日本野球の取材を続けていた。そして1985年、自身と同じアメリカ人であるバースが露骨な敬遠策によって本塁打記録を阻止される光景を見ていた。見ながら、こんなことを考えた。もし逆に、日本人選手がメジャーリーグ(MLB)でホームラン王のタイトルを獲りそうになったりしたら、何が起きるのだろう、と。

 

「いちど、クリート・ボイヤーに次のような質問をしたことがある。もしも日本人の選手がメジャー・リーグに入り、ホームラン王のタイトルを獲りそうになったり、メジャー・リーグの記録を破りそうになったら、アメリカではどんなことが起こるだろう?

 

『ピッチャーは、そのバッターとまともに勝負するだろうか?』と、わたしは訊いた。『いや、答えはノーだな』と、ボイヤーはいった。『何人かのピッチャーは勝負しないだろう。そのうえ、“ジャップにタイトルを獲らせるな!”という連中もいるよ……』」(ロバート・ホワイティング『和をもって日本となす』、1990年)

 

日本人選手がメジャーで活躍するなんてありえないと思っていた

 クリート・ボイヤーは1955年からMLBで17年間プレーした後、日本の大洋ホエールズ(現・横浜DeNAベイスターズ)で4年間プレーし、引退後はホエールズのコーチを務めた人物だ。同時代に日本球界でプレーした多くの外国人選手と同じく、日本で「ガイジン」選手として差別的な扱いを受けたと感じていたボイヤーは、もし日本人選手がアメリカでプレーしたら、やはり差別的な扱いを受けるだろうと考えていた。

 

 当時はまだ、MLBでプレー経験のある日本人選手が、1960年代にサンフランシスコ・ジャイアンツで2シーズンだけプレーした村上雅則しかいなかった時代だ。上記の会話が交わされた1980年代後半、日本の野球選手が海を渡ってメジャーで活躍するなんてあり得ない話だと、多くの人が考えていた。

 

 さて、それから30年以上の時を経て、本当に日本人選手がメジャーリーグでホームラン王のタイトルを争う日が訪れるとは、ホワイティングもボイヤーも想像していなかったに違いない。

 

大谷がホームラン王のタイトルを逃した原因

 2023年、日本人として史上初めてMLBのホームラン王に輝いた大谷翔平が、メジャーで最初にホームラン王を争ったのは2021年だった。この年、大谷はシーズン前半戦だけで33本のホームランを放ち、リーグ単独トップに立っていた。投打二刀流で選出されたオールスターでは、日本人選手としてはじめてホームランダービーに出場し、推定飛距離150mを越える特大ホームランを連発した。

 

 そのシーズン、大谷は日本人選手として初のホームラン王どころか、アメリカンリーグ新記録の本塁打さえも射程圏内に捉えていたが、後半戦は13本塁打と失速。結局、ホームラン王のタイトルはトップと2本差で逃す。

 

 後半戦で失速した原因は、大谷と対戦する投手たちがほとんどストライクを投げてこなくなったことだ。オールスター後は敬遠を含む四球が激増し、9月には3試合で11四球というMLBタイ記録も樹立。日本のメディアも米国のメディアも、大谷があまりにも危険な打者であることを多くの投手たちが理解して、勝負を避けるようになったのだと論じた。

 

 あるいは、大谷の前後を打つはずのマイク・トラウト、アンソニー・レンドンといった強打者たちが相次いで故障離脱し、相手投手は大谷と無理に勝負する必要がなくなったという影響があったかもしれない。おそらくはその両方が理由だろう。

 

アメリカでは今も人種差別的な考えを抱く人が少なくない

 もしかするとボイヤーが30年以上も前に言った通り「『ジャップにタイトルを獲らせるな!』という連中」がいたのだろうか?

 

 人種差別への風当たりが強い今日のアメリカで、そんなことを公言する選手や監督はいないので(まれに失言する選手はいるが、厳しいペナルティを受ける)、実際のところはわからない。

 

 しかし、黒人差別に抗議する「ブラック・ライブズ・マター」運動の盛り上がりや、その反動とも言える白人至上主義団体やネオナチの台頭、ヘイトスピーチの蔓延などを見ていると、アメリカでは今も人種差別的な考えを抱く人が少なくないことは確かだ。

 

 少なくとも2000年代前半、まだ野茂英雄のデビューから10年と経っていないころは、MLBの現場では日本人の選手やスタッフが差別を受けることは珍しくなかった。

 

 “大谷フィーバー”の裏で日本人記者が失態…「岩によじ登って撮影し、排除された」大谷翔平ばかり追いかける日本メディアのリアル  へ続く

 

内野 宗治/Webオリジナル(外部転載)

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