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2024年5月18日

 

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 ■ 試合データ

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米国時間:2024年5月17日

日本時間:2024年5月18日(土曜日)

11時10分開始

ロサンゼルス・ドジャース

対シンシナティ・レッズ

@ドジャースタジアム

 

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【MLB.JP 戦評】

 日本時間5月18日、ドジャースは本拠地ドジャー・スタジアムで行われたレッズとの4連戦2戦目に勝利し、シーズン30勝に到達した。大谷翔平は3回裏に13号2ランを放ち、ナ・リーグ単独トップに浮上。ドジャース先発ジェームス・パクストンは7回途中3失点も勝ち負けは付かず。2番手のマイケル・グローブが2勝目(2敗)をマーク。レッズ先発フランキー・モンタスも5回3失点と試合はつくった。7回裏に勝ち越しを許したフェルナンド・クルーズが5敗目(1勝)を喫した。

 

 ドジャースは初回、ムーキー・ベッツが通算51本目となる先頭打者本塁打を放ち先制すると、3回裏に一死1塁から大谷が逆方向への13号2ランホームランを放つ。しかし、4回表にベッツのエラーで1点を失うと、5回表にスチュアート・フェアチャイルドの3号ソロ、6回表にタイラー・スティーブンソンに5号ソロを打たれ同点に追いつかれる。

 

 だが、7回裏に相手のエラーもあり二死1・2塁のチャンスをつくるとウィル・スミスがレフトへタイムリーを放ち勝ち越しに成功。その後、クルーズの暴投でさらに1点を追加する。続く8回裏は、ジェイソン・ヘイワードに1号2ランが飛び出し勝負あり。ドジャースは2番手以降に投げたグローブ、ブレイク・トライネン、ダニエル・ハドソンが各イニングを10球以内で抑えるピッチングで快勝し、早くも30勝に到達した。

 

 「2番・DH」でスタメン出場した大谷は、4打数1安打1本塁打2打点の活躍。ホームランランキングでナ・リーグトップに浮上し、メジャー全体でもトップタイとなった。今季ここまでの成績は打率.358、本塁打13本、打点32、出塁率.426、長打率.676、OPS1.102を記録しており、シーズン44発ペースと順調にその数を伸ばしている。

 

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 ■ 今日の大谷翔平(関連NEWS)

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【スタメン】

2番DH

 

【出場成績/打者】

4打数 1安打 2打点 2得点 1三振 1本塁打(13号)

通算打率・358

OPS1・102

 

◆第1打席:

(結果)ファーストゴロ

(状況)1回無死走者なし

(投手)フランキー・モンタス右

※ベッツの通算51本目の先頭打者弾の余韻が残る中、打席に入った。カウント2―2からの6球目、内角の96・2マイル(約154・8キロ)のフォーシームをフルスイング。打球速度107・3マイル(約172・7キロ)の痛烈なゴロは一塁手の正面へ。競走になるも間一髪間に合わなかった。

 

◆第2打席:

(結果)ホームラン

(状況)3回1死1塁

(投手)フランキー・モンタス右

※初球、外角高めの95・3マイル(約153・4キロ)のフォーシームを引きつけて逆方向へ。角度28度、打球速度104・5マイル(約168・2キロ)の弾丸ライナーは左翼席へ飛び込んだ。3試合ぶりの一発はナ・リーグ単独トップに立つ13号2ラン。飛距離368フィート(約112・2メートル)だった。

 

 

 

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◆第3打席:

(結果)空振り三振

(状況)4回2死1、2塁

(投手)フランキー・モンタス右

※空振り三振に倒れると、五回裏の攻撃が始まる前にはベンチでロバーツ監督と話し込む姿も映し出された。通訳を介さずに話し込み、最後は指揮官も笑顔。

 

◆第4打席:

(結果)ファーストゴロ

(状況)7回1死1塁

(投手)フェルナンド・クルス右

※痛烈な打球を放つも一塁手の正面を突き、二塁へ送球。ボールを受けたデラクルーズが併殺を狙って鬼のようなボールを一塁へ投じたが、大谷は全力疾走で回避。ボールがカメラマン席に飛び込んだことで得点圏へ進むと、2死一、二塁からスミスの中前適時打で決勝のホームを踏んだ。

 

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【コメント】

なし

 

【NEWS情報】

◯ 米ロサンゼルス市は、17日、大谷をたたえ、5月17日を「大谷翔平の日」と制定した。大谷はこの日、ドジャースの球団幹部やデーブ・ロバーツ監督らとロサンゼルス市庁舎を訪問し、認定証を贈呈された。大谷は「特別な瞬間です」と喜び、「ドジャースの関係者の皆さま、ファンの皆さまに心より感謝申し上げます」と述べた。市庁舎でのセレモニーでは、市議会議員らの多くがドジャーブルーのスーツに身を包んだ。

 

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◯ 大谷はレッズ戦前にキャッチボールを行った。左翼付近でトレーナーを相手に時折躍動感のあるフォームで力を込めて71球を投じた。15日には昨年9月の右肘手術後最多の72球を投げており、リハビリは順調のようだ。

 

◯ 両リーグ最多タイの今季13号2ランで、「ショウヘイ・オオタニデー」の初アーチの“お宝ボール”をゲットしたのは、20歳学生のダグ・パイルさんだった。自身も投手と外野の“二刀流”でプレーしている。パイルさんは「シーズンチケットを持っていて、昨日のボブルヘッドデーも来たんだ。僕のすぐそばにボールが来て、野球で使っているグラブで捕った。(キャッチできて)すごく良かった。なんて偶然なんだ」と目を丸くさせた。大谷ついては「彼はグレートだ。ドジャースに来てくれてうれしいよ。野球界でベストプレーヤー。素晴らしいね」と絶賛した。

 

 

◯ レッズ戦の試合前に地元紙「オレンジカウンティレジスター」のドジャース番、ビル・プランケット記者が大谷本人に当日の“祝い方”を聞いた。大谷はこの日の試合前、ロサンゼルス市庁舎を訪問。市議会から功績をたたえられ、記念の制定書を贈呈された。市議会が「ショウヘイ・オオタニ・デー」と宣言した。試合前のクラブハウスでプランケット記者は「大谷の日が制定されたけど、守るべき伝統はある?」と大谷に質問。ツリーを飾ることなども提案したというが、大谷は「ノー、ノー」と盛大な祝い方は否定したという。続けてプランケット記者は「何を食べればいい?」と聞くと「寿司」と答えた。そして、立ち去る間際に「もしくはピザ」と回答した。

 

◯ 大谷が試合後、自身のインスタグラムのストーリーズに新規投稿。元NFLプレーヤーのレジー・ブッシュ氏と記念撮影した一枚を投稿した。ユニホーム姿でブッシュ氏とにこやかに記念撮影した大谷。ブッシュ氏は大学時代にハイズマン賞を受賞するなど輝かしい成績を収め、2006年ドラフト1巡目(全体2位)でセインツに入団。複数球団を渡り歩き、2017年に現役を引退した。

 

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 ■ 試合情報(ドジャース関連NEWS)

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【コメント】

デーブ・ロバーツ監督:

「逆方向に運び、上手くスピンをかけていた。彼のやっていることに我々は驚いている。彼のボブルヘッドデーに本塁打を打たなかったから、重要な『大谷の日』に本塁打を打ったのだろう」

 

「(試合中のベンチでは指揮官と大谷が話し込む姿も見られたが)単に、状況に応じて打席で彼がどんな考え方をしているかについて、話していただけ」

 

フランキー・モンタス投手:

「彼の成果を認めないといけない。彼は素晴らしい打者だ。知ってると思うけど、何回か彼と対戦しているから、彼は私が持っているものを知っているんだ(笑)。だから、そう、彼の功績を認めないと。感服だ」

 

【NEWS情報】

マックス・マンシー内野手:

◯ ドジャースは17日、マンシー内野手を負傷者リスト(IL)に登録した。マンシーは今季打率2割2分3厘、9本塁打、28打点。16日のレッズ戦での打撃練習で痛めたが、症状は軽いという。

 

ジェームズ・アウトマン外野手:

◯ 打率1割4分7厘と打撃不振だったアウトマンとN・ラミレス投手がマイナーに降格した。腰の張りでILに入っていたJ・ヘイワード外野手がアクティブロースターに復帰。3AからM・バルガス外野手、R・バナスコ投手が昇格した。

 

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 ■ 球界情報

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デービッド・フレッチャー内野手:

◯ 元エンゼルスで現在ブレーブス傘下マイナーでプレーしているフレッチャー内野手が、大谷の元通訳で銀行詐欺などの罪に問われている水原一平被告と同じ違法スポーツ賭博の胴元から賭けをしていたと、17日付のESPN電子版が伝えた。同メディアのティサ・トンプソン記者によると、フレッチャーは水原被告と同じ違法スポーツ賭博の胴元マシュー・ボーヤー氏の賭場でスポーツに賭けていたという。また同記者が取材した情報筋によると、フレッチャー自身は野球には賭けていないが、親しい友人で元ロイヤルズ傘下マイナーのコルビー・シュルツが、フレッチャーがエンゼルスでプレーしていた時期にエンゼルスの試合に賭けていたという。MLBでは野球以外のスポーツに賭けることは禁止していないが、違法賭博をすることは禁じている。

 

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 ■ 注目記事&コラム

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◆ ジャッジが12本目のホームランを打ち、ALトップと1本差に。大谷は13本目。NL単独トップに立つ

宇根夏樹氏/情報:スポナビ)

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 5月17日、ガナー・ヘンダーソン(ボルティモア・オリオールズ)は、シーズン13本目のホームランを打ち、ア・リーグ本塁打ランキングのトップにいたカイル・タッカー(ヒューストン・アストロズ)に並んだ。

 

 一方、アーロン・ジャッジ(ニューヨーク・ヤンキース)は、この日のホームランが12本目。ジョシュ・ネイラー(クリーブランド・ガーディアンズ)とともに、トップと1本差のア・リーグ3位タイに位置している。5月5日以降、ジャッジのホームランは、11試合で6本を数える。直近の3試合(5月15日~17日)は、8打数7安打。ホームラン2本と二塁打5本なので、どの安打も長打だ。

 

 ア・リーグでは、12本塁打以上の4人をはじめ、13人が二桁本塁打を記録している。5月17日は、シェイ・ランガリアーズ(オークランド・アスレティックス)、ホゼ・ラミレス(ガーディアンズ)、ジャンカルロ・スタントン(ヤンキース)の3人が、それぞれ、10本目のホームランを打った。

 

 

 ナ・リーグでは、大谷翔平(ロサンゼルス・ドジャース)が13本目のホームランを打ち、単独トップに立った。それまで、大谷と並んでいたマーセル・オズーナ(アトランタ・ブレーブス)は、4打数1安打。打点は両リーグ単独トップのままながら、こちらも、41から増えることはなかった。

 

 ナ・リーグの打点2位は、37打点のアレック・ボーム(フィラデルフィア・フィリーズ)。ア・リーグ1位のラミレスは、10本目のホームランにより、37打点から38打点とした。

 

 ナ・リーグで二桁本塁打は、大谷を筆頭に5人だ。ア・リーグの半数に満たない。

 

 

 前日までに7本塁打以上を記録していた、ナ・リーグの24人中、5月7日にホームランを打ったのは、ドジャースの2人、ムーキー・ベッツと大谷しかいなかった。ベッツは、通算51本目の先頭打者本塁打を記録した。

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◆ あの大谷翔平が、突然目の前に「10秒呼吸できなかった」 闘病少年と感動の舞台裏「衝撃だった」

(情報:THE ANSWER)

 

 

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 米大リーグ、ドジャースの大谷翔平投手は、16日(日本時間17日)に本拠地で行われたレッズ戦で、病と闘う13歳の少年アルベルト・リーくんに始球式とスイートルームでの観戦をプレゼント。始球式では捕手を務めるサプライズを贈り話題となった。17日(同18日)になって、ドジャース公式はその裏側を伝える動画を公開。リーくんは「人生で一度きりだと思う」と驚きを語っている。

 

 アルベルトくんは球場を訪れると「好きな選手はいますか」という問いに「ドジャースで?」と聞き返し「ショウヘイ・オオタニだよ」と即答している。「彼はほかのどの選手とも違う。走塁や打撃においても違うし、ほかの選手とは異なるポジションで活躍しているんだ」と話した直後、突然大谷が登場すると目を丸くして驚いた。口を開けて固まったまま、大谷と握手を交わし「ワオ」とだけ口にしている。

 

 さらに大谷がサインした背番号「17」入りのユニホームをまとって始球式のマウンドに上がると、右腕からの速球は少し左打席の方向へズレた。捕手を務めた大谷はミットを伸ばして捕球し、笑顔でアルベルトくんを抱きしめている。

 

 アルベルトくんは「衝撃だったよ。しゃべることすらできなかったし、10秒くらい呼吸もできなかった。なぜなら彼に会うのは初めてだったから」と本物の大谷に出会った感想を口にし「これは人生で一度きりの出来事だと思うし、お母さんやここにいるみんなに感謝したい」と続けた。

 

 中学までに3度の開胸手術を受けるなど、アルベルトくんは病気と闘う人生を送ってきた。母のデジャニー・ジョンソンさんは「信じられないわ。ひとりでご飯を食べることすらできずベッドで過ごしていた赤ちゃんだったのが、今世界最高の野球選手と握手しているのだから。素晴らしいことね」と重ねて感謝を口にした。

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◆ 大谷翔平は“眠れない夜”をどう乗り越えたのか? 水原一平騒動から2カ月、大活躍のウラで語った仲間への感謝「失った以上に支えてもらって…」

阿部太郎氏/情報:NumberWEB)

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 水原一平被告の違法賭博に端を発した巨額銀行詐欺事件。韓国での開幕第2戦前に米メディアの報道で問題が明るみになってから、2カ月が経とうとしている。

 

 大谷翔平の周辺で初めて起きた大スキャンダルだったが、その喧騒の中で、スーパースターは圧倒的な輝きを放っている。

 

術後初のキャッチボールに込めた“リハビリ以上の何か”

 安堵が滲んだ4月3日の「ドジャース第1号」から解き放たれたように、本来の打棒が戻った。記念の1号が出た試合後の会見で口にした言葉は、大谷の強い意思と、野球への熱い気持ちを含んでいた。

 

「メンタルを言い訳にしたくはない。やっぱり、そこも含めて技術。自分がここまで結果が出ていないのは実力」

 

 水原問題に屈しないという決意――それは、大谷がドジャースの会見室で、首脳陣や一部選手、メディアの前で約12分の声明を出した3月25日の動きからも分かった。

 

「彼が僕の口座からお金を盗んで、みんなに嘘をついた」

 

 そう口にした約30分後、大谷はグラウンドに出て、昨年に右肘を手術して以来、初めてキャッチボールを開始した。距離は15メートル。初めてなのに、球が強くて驚いた。それはチーム関係者も同じだったという。ケガの再発を恐れたチームは、大谷にもう少し緩やかなペースにするように促したと聞く。その後のキャッチボールから距離は修正され、10メートルになった。

 

 だが、あの日だけは、大谷にとって、リハビリ以上の何かがあったのだろう。

 

記者の予感「大谷翔平はこういう時こそ、活躍する」

 4月12日、水原被告が司法当局に訴追され、初めて裁判所に出廷した日。

 

 大谷はパドレス戦に臨み、第1打席で松井秀喜さんに並ぶ日本勢最多のメジャー通算175号アーチを放っただけでなく、その後、二塁打も2本と固め打ちした。

 

 5月14日、水原被告が罪状認否のために出廷した日も大活躍した。

 

 ジャイアンツのオラクルパークで、右中間へ特大の136メートル豪快弾。バリー・ボンズがたびたび見せた、右翼後方にあるサンフランシスコ湾への「スプラッシュヒット」にはわずかに届かなかったが、デーブ・ロバーツ監督が「バリーの領域だ」と惚れ惚れしたアーチをかけた。この日も3安打の固め打ちだった。

 

 偶然かもしれない。ただ、大谷はこういう時こそ、活躍する。なんとなく試合前からあった予感は的中した。

 

 14日の試合後、大谷はこう語った。

 

「最初の方は色々あったので、睡眠が足りない日が続いていたが、最近は時間にもだいぶ余裕が出ている。いい睡眠を取って、1日1日大事にプレーができている」

 

 司法当局やリーグへの事情聴取で、野球になかなか集中できない日々が続いた。だが、一段落した今だからこそ、胸の内を明かしたのだろう。

 

「みんな、翔平にウェルカムな雰囲気を作りたい」

 水原被告がいなくなって、大谷が変わったという声は多く耳にする。

 

 ロバーツ監督も「緩衝材がなくなって、コミュニケーションが取りやすくなった。翔平も積極的に話すようになった」と語る。ある選手も「連絡を取るのは常に一平だった。やりにくかったが、今は話しやすい」と明かす。

 

 クラブハウスでの大谷の行動を見ても、トレーナーやスタッフと会話をしながら練習の予定を立て、選手とは試合のことを話し合っている様子だ。2人の閉鎖的な空間がなくなり、大谷を取り巻く環境はオープンになった。

 

 サンディエゴ遠征の5月12日、大谷は腰の張りを訴えて休養を取った。ロッカーで座ってソックスを履いていると、チームリーダーの一人、ミゲル・ロハスが近づいてきた。「翔平、大丈夫か?」と聞き、大谷も頷いてグータッチをした。

 

 ロハスは「翔平がクラブハウスで心地よくなってほしい。みんな、翔平にウェルカムな雰囲気を作りたい」と語る。

 

 こういったサポートに、大谷は助けられたと語る。長年、信頼してきた相棒に裏切られた喪失感より、感謝の気持ちが強いという。

 

「(親友を)失った以上に、チームメート、チームもそうだが、支えてもらっている人たちがたくさんいる。むしろそっちの方がありがたいと感じる面が多い」

 

 フィクションでも思いつかないような激動の2カ月だった。

 

 だが、稀代のスターにはそれを乗り越える力があった。そして、彼を支える仲間たちがいた。

 

(「メジャーリーグPRESS」阿部太郎 = 文)

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◆ 来月で33歳、これからが全盛期。ブルージェイズ菊池雄星に好調の理由を聞く。

谷口輝世子氏/情報:スポナビ)

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ブルージェイズの菊池は今季ここまで9試合に登板し、防御率は2.60でクオリティスタート(6回以上を投げ、自責点3点以内)も5度記録している。

 

 昨季、菊池はメジャーリーグに来て初めて2桁勝利をマークし、防御率もメジャー移籍後ベストの3.86だったが、今季はこれを上回る数字を残せる可能性もある。また、昨季の速球の平均は95.1だったが、今季ここまで95.6であり、初球ストライク率も上がり、与四球は減少傾向にある。

 

 6月で33歳になる菊池の球速の平均値が上がり、制球力も増している。開幕からここまでの好調の理由は何なのか。

 

 その理由のひとつは、2022年から23年を迎えるオフシーズンに大幅に投球フォームを見直したことにある。ブルージェイズ1年目だった22年は、不調に陥り、先発から中継ぎへ回った。その年のオフ、メジャー生き残りをかけて、ありとあらゆる修正を図ったのだ。

 

 メジャーで優れた成績を残している投手、今季はILに入っているがレイズの左腕マクラナハンら、多くの左腕のメカニクスをじっくり分析した結果、投げ終わるときにサード側に流れるようにした。

 

 「こっち(サード側)に流れようとするってことは、体が正面になり(ボールを)一個分長く持つことができる」という。投げ終わるときにはサード側に流れるが、ボールを持つ左腕は正面に残る。これまでのように指先で入れ込む操作をせずにすむようになった。これが制球力と球速向上につながっている。

 

 メジャーリーグで初めて2桁勝利を挙げた昨季からはカーブを投げるようになったことも大きい。カーブと、カーブより球速のあるスライダーをストライクゾーンからボールになるようにすることで、緩急をつけた投球術へとつなげた。「カーブとスライダーは、僕の場合は、大きな差がない。幅を大きくしようとしたら、もっとできるが、なるべく同じ曲がり幅で球速を変える。バッターは差がわからないので」。

 

 昨年からのこういったフォームの修正と新しい球種が、本当に自分のものになったのが今シーズンだといえるだろう。

 

 「2022年のオフにいろいろ取り組んできて、去年、いい試合は本当に良かったし、でもまだばらつきがあった。Aゲーム(よい試合を意味する)はすごく今までにない手応えがあったので、じゃあAゲームをもっとクオリティを高くし、Aゲームの試合が去年5試合だったとすれば、10試合にすれば全然違った数字になる。そういう考え方でやっている。長年、同じフォームでやってきたので、去年は(体が)元に戻りたいんだろうなというのがあったが、今年は、それはもうない」

 

 今年はキャンプ中から右打者対策として外へのチェンジアップを習得し、これで三振を奪えるようにもなっている。制球よく、力のある速球、カーブ、スライダー、右打者への外へ逃げていくチェンジアップで打者に球種を絞らせにくくしている。

 

 これらを支えるバックボーンは、昨シーズンで得た自信と投手としての成熟だ。

 

 情報の取捨選択ができるようになった。どうやったら球速が上がるか、その情報は出尽くしているが、どのように取り入れるかは単純な話ではない。「人それぞれ、筋肉も違う、骨も違う中で、全員が同じことやったら同じアウトプットが出るかといったら、またそれも違う。自分に合ったものを探しながら、やっていく必要がある。だから球速が出る要素を全部、追い求めても出ない。ある程度、諦めなきゃいけないところがある。ただ、これだけは絶対、僕にとって必要だよねというものがあるので、そこを守っている感じ」だという。

 

 もうひとつは、うまく力を抜くことができるようになったことだ。それが球速アップにつながっている。「脱力ってどういうことか体験したいと思って、日本に帰ったときに古武術(の稽古)とかも受けた。力を入れるのは誰でもできるが、力はあるんだけど、頼らないで抜くということがすごく難しい。それが試合にとなるとさらに難しい。リラックスしたほうが球速が出るなというのは感じている」という。

 

 4月27日にドジャースの大谷翔平と対戦したときには、今季ここまで最速だった98.2マイル(約158キロ)を投げた。これをライト前にはじき返されたが、このときも集中しているが、力み過ぎていない状態にあった。

 

 「脱力というのは、どのスポーツにおいても鍵なんじゃないかと思う。それはフォームの脱力だけじゃなくて、生き方とか、考え方とかをも柔軟な人。一番強いんだろうなと。強い人で柔らかいんだろうなと」

 

トレーニングによる強靭な体と、心身ともに力まないしなやかさを手に入れつつある。菊池雄星の全盛期は、今、始まったばかりなのかもしれない。

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 ■ NOTE